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虹の刃

 オレは道行く町娘の跡をコッソリと追う。


 語弊があるな。これではオレが女の子なら誰彼構わず懐く優柔不断男のストーカーの様ではないか。犬なのだが。


 オレが追っているのは町娘に変装したハピアだ。


 お姉さんの話を聞いたオレたちは即座に、黒づくめの連中やトムさんを調査する事にした。


 だがオレたちは目立つ。


 ハピアは領主の娘として恥ずかしくない様、如何にも貴族令嬢ですと言った格好をしている。

 その上オレがハピアの屋敷に来てからは毎日一緒に散歩していたのだ。

 犬と女の子が歩いてたら領主様のご息女かな?と領民に思われる程度には覚えられているだろう。


 故にハピアは町娘に変装し、オレは物陰に隠れながらハピアの後をつける。


 そしてオレの先を行くハピアの更に先。


 黒づくめ達がショッピングを楽しんでいる。十人ほどの黒い集団が普通にお買い物をしているのだ。


 奴らはてっきり顔を隠していると思ったのだが、そんな事も無く。黒の上下にローブ、黒の三角帽子を被っている。怪しい……。

 帽子が魔法使いっぽいが本当に魔法使いなんだろうか?だからってあんなに黒で統一しなくても……。


 やがて彼らは買い物が終わった様で街の外に出る。


 しかし、聞き込みをしたが様子が変だったな。


 お姉さんが知りたがっている男性。トムさんの件について誰も詳しくは話してくれない。

 話してくれる人も黒づくめの連中と歩いてた以上の事を教えてくれないのだ。

 聞こうとすると皆挙動不審になり、黙ったり目線や話を逸らしてしまう。


 こんなの、誰が考えても怪しすぎる。


 ぶっちゃけ黒づくめに関してだけ言えばちょっと変わった人たちなんだな、くらいで済むかもしれない。

 だがトムさんの件が絡まると途端に怪しくなる。


 お姉さんの為にも真相を突き止めなくては……!そしてお姉さんの感謝のキスの為にも!


『下心満載ですこと』


 ち、違うぞハピア!これは純粋な優しさ、親切心だ!決してお礼目当てじゃないからな!


『どうでしょうね』


 ぐっ……。あっ!ほら!黒づくめ達が止まったぞ!


 止まってコッチを見て、る?


「我々の跡をつけて何者だ!怪しい奴め!」


 バレてたのかよ!てゆーか怪しいとか言うな!自分から怪しさアピールしてる様なお前らに言われたくないわ!

 どうせバレてるならと思いオレはハピアに駆け寄る。


「これは失礼致しましたわ。私はこの領地を治める伯爵の娘、ハピア・イリシウスと申します」


 あ、名乗っちゃったよ。潔いな。

 潔いのは良いけど名乗っちゃって良かったのか?せっかく途中まで隠れてたのに。


『バレてしまったんですもの。構いませんわ。最悪お父様に追い出して頂きますから』


 独裁者かよ!こっわ!ハピアさん発想が乱暴すぎるよ!

 彼らの様子を見ると、追跡者が伯爵令嬢と知って焦っているのがわかる。

 そりゃこんな堂々と答えると思わないよな。


「バカめ!そんな嘘に我々の様な賢人が騙されると思うか!令嬢自らがこんな真似をする筈があるまい!」


そうなるの!?確かにそんな話信じがたいけど!でもそんな嘘みたいな話が真実なんです!!


「大方、我々の研究を盗もうと思った奴らの回し者だろう!捨て駒として小娘を寄越したと言う訳だな」


 全然違う!!てゆーかあんまり言いすぎるとマズイのでは。知らないとはいえハピアは本物のお嬢様だと言うのに……。


 チラリとハピアの顔を見る。

 あ、メッチャ切れてる。何だろう。小娘がダメだったんだろうか。


「いえいえ。私は領民に頼まれ、とても怪しげな貴方達に注意をしに来たのですわ」


 嘘だ。じゃあコソコソしていた事の説明がつかない。ハピアもまだまだ子供だなぁ。


 うお!ハピアさん、オレを睨まないで!向こう見て向こう!


 オレとハピアが彼らの方を見ると彼らは次々と何処からか杖を取り出している。

 やっぱ魔法使いだったんだ。それにしても魔法の杖って色んな形があるんだなぁ。


「研究を盗まれる訳にはいかぬ!貴様らにはココで灰になってもらうぞ!」


 うっそ!?メチャメチャ好戦的だ!賢人じゃないのかよ!荒っぽすぎるだろ!


 彼らが杖を構える。

 そして彼らの目の前。空中に魔法陣が描かれーー。描かれ……、でかくね?


 え、ちょっと待って。魔法陣がでかい!


 うわうわ!あんなの無理だ!防げないよ!?


「見たか!これが我らの研究成果!」


 教えちゃうの!?え!どーゆーこと!?


「冥土の土産に見せてやろう!この巨大な魔法陣から放たれる魔術を!」


 あ、冥土の土産っすか。そっすか。

 何て奴らだ。街から離れてるから良いもののこんな巨大な魔法陣、ハピアでも無理だろう。

 しかも出来上がるのが早い!


「驚いている様だな!そうだ!我らは一人一人で魔術を使うのではない!」


 何だ?この人たちとっとと撃てば良いだろうにベラベラ勝手に説明してくれるな。

 このままだと全部勝手に喋っちゃうんじゃないか?それとも普段身内以外に話し相手がいないから、ハピアみたいな美少女に会ってテンション上がっちゃってるのか?


『照れますわね』


 そんな事言ってる場合じゃないよ!どーすんのコレ!!


『とりあえず話し終わるまで待ちましょう。それにせっかくの大技を避けるのは無礼ですわよ』


 いいよ!そんなプロレスラーみたいな考え方いらないよ!!


「我らは全員で一つの魔術を使っているのだ!その為の専用の魔法陣を開発し、それぞれが分担して魔法陣を描く!!

それにより一人で使うよりも、十人がバラバラに使うよりも遥かに!! 遥かに高い威力の魔術が放てる!!

これこそ我らが研究成果の一つ!合体魔術の完成形!マギアだ!!」


 あ、わかりやすい説明ありがとうございます。

 さすが賢人を名乗るだけある。犬でもわかるって感じだった。オレは人だが。


「では、そろそろ消えるが良い!」


 そう黒づくめが叫ぶと魔法陣を介して巨大な火の玉が出来上がる。


 それはまるで太陽の様でオレたちとは距離がある筈なのにココまで熱気が伝わってくる。

 ジリジリと焼く炎。見ると側にある草や木が焦げ付いていくのがわかる。

 燃え上がる豪炎が音を立て恐怖を煽る。


 ハピア、どうするつもりなんだ。そう頭の中で問いかけると返事はすぐに来た。


「せっかくですから防いでみては?貴方も修行の成果を実践してみたいでしょう。それと闇の魔法は禁止ですわよ」


 なんで!?いいよいいよ!何にもせっかくじゃない!別に修行の成果なんてコレっぽっちも披露しなくていい!そしてこんなピンチでも縛りプレイ課せてくるの!?


「せっかく良い進化を出来るよう色々としてるというのに、闇魔法の使いすぎで邪悪な感じに進化したらどうするのですか。ケルベロスとかにはなりたくないでしょう?」


 ぐっ……!それを言われると……。オレだって三つ首になんてなりたくない。見る分にはカッコいいが自分がなるのはキモすぎる!


 くそっ!やるよ!やれば良いんだろ!?


 何故オレがこんなにも諦めムードなのか。それはオレが魔物だからだ。

 一度進化を経験してからわかったが、ある程度強い魔物と言うのは自分が出来ること、使える魔法などが手に取るようにわかる。


 そうで無ければオレは最初の進化の時既に死んでいただろう。

 次に自分がどうすれば良いか直感でわかるのだ。野生の勘という奴なのだろうか。


 そして目の前に見える炎の球体。

 本物の太陽を思わせる程の熱気。もっとも実際の太陽とは比べ物にならないだろうが、こんなにも距離が近いとそう思ってしまうのも無理はないだろう。

 表面はさながら溶岩の様に脈動し、触れてしまえば一瞬で蒸発してしまうだろう。


 アレは無理だと直感している。逃げるしか手は無いと。オレの力では手に余ると。


 だがオレは引かない。


 イメージする。


 太陽の消滅を。光消えるこの世界を。暗き闇の帳にて消滅……。いかんいかんいかん!!闇っぽいのはダメだ!


 イメージは……水だ!消火活動。……これじゃ貧弱だな。


 考えろ。


 降り注ぐ海。母なる大海。沈みゆく太陽。


 いける。いけるぞ。オレならやれる。

 思い込む事によってイメージを強固なものにしていく。


 降り注ぐ土砂。降り止まぬ豪雨。鎮火する炎。


「風で彼らの方へ吹き飛ばすのはどうでしょう」


 ぶほっ!


 火の玉を風でピューと飛ばすコミカルな絵面を想像し吹き出してしまう。


 ハピア!!バカバカおバカ!!なんでそんな事言うんだよ!今行けそうだったじゃん!!せっかく集中してたのにやり直しになっちゃったじゃんか!!


「名案だと思ったのですが……」


「わんわん!!わんわん!!(どぉーすんだよ!!もうやり直してる時間ないよ!!)」


 思わず叫んでしまう。本当にまずい。


 ハピア!!何とかしてよ!逃げよう?まだ間に合うから!早く逃げよう!?


 オレはハピアに吠える。

 だが彼女は汗一つ書いておらず、こんな状況でも彼女の黒い瞳は凛として目の前を見つめている。


「仕方ありませんわね。貴方に自信を持って頂きたかったのですが……」


 うんうん!逃げよう!

 街は離れてるし避けたって何にも被害は無いさ。あんな大魔術、マギアとか言ってたか。そんな大層なもの使っちゃったら奴らも疲れちゃうだろう。大丈夫、負ける訳じゃないさ。


 だがオレの考えている事とは裏腹にハピアは魔力を高めている。


 何で!?何してんの!?もう奴らコッチに火の玉飛ばして来てるよ!!いくらハピアでもあんなの無理だって!!


 力の限り吠える。ハピアの服をグイグイと引っ張る。


 オレの意を無視してハピアが叫ぶ。


「来なさい!我が身を守り炎を滅する刃!!

虹の光剣!アルカンシエル!!」


 瞬間。目も眩む様な虹色の煌めき。


 巨大な光の柱がそびえ立った。

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