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白の少女と黒き犬

 小さな少女が舞う。


 二つに結んだ黒髪が揺れる。


 剣を振るう度に旋風が巻き起こる。


 時折、その身に纏う純白のコートを翻し踊る。


 彼女が剣を振るい、炎が湧き上がる。


 少女は笑う。


 オレを見て微笑む。


 それはとても優しい笑顔。


 少女は戦場の中で舞う。


 美しい。


 彼女の服が光を反射し、星屑の様に煌めく。


 大地が揺れ、水が踊り、雷が閃く。


 綺麗だ。オレは夢を見ているのだろうか。


 強い。オレなんかとは比べ物にならない圧倒的な強さ。


「思っていたよりも可愛らしいですわね」


 少女が緩やかに告げる。


 まるで戦場にいないかの様に穏やかな声。


「ですが、真っ黒ですわね。瞳も毛皮も真っ黒ですわ」


 少女が落胆した様に言う。


 何のことだか理解出来ない。


「けどその姿も、素敵ですわよ」


 少女が照れた様に笑う。


「わん(ハピアなのか?)」


 オレは尋ねる。


「あら?他に誰がいるとお思いで?」


 言葉が通じている。オレは信じる事が出来ない。


 嬉しすぎて、現実を信じられない。


「言ったでしょう?ずっと側にいると」


 ずっと……、側に……。


「例え貴方がどうなろうとも。私は貴方にしてもらった事を忘れませんわ」


 何を、言って……。


「わからなくても、よろしいんですのよ?」


 ハピア、助けてくれるのか?


「今助けているでは無いですか」


 オレを救ってくれるのか?


「えぇ救いましょう」


 その言葉にオレは息を飲む。


 喜びが心の内に広がっていく。


 頬に熱い何かが流れる。


 こんなにも醜くなったオレを、救ってくれる少女。


 その存在に感謝する。


「貴方は醜くなんてありませんわ」


 オレは、変わってしまった。力に溺れ、驕り、身勝手に振る舞い、自滅した。


「反省してるなら良いではありませんか、悪い癖ですわよ?」


 オレは嬉しさのあまり声を洩らす。ありがとう。ありがとうハピア。オレを救ってくれてありがとう。


「もうわかりましたから。ところで……。もう充分休んだでしょう?そろそろ手伝って欲しいのですが」


 その言葉を聞きオレは立ち上がる。


「わん!(お前一人で良いんじゃないか?)」


「まさか?買い被りですわ。次から次へと魔物が押し寄せて来ますもの」


 それもそうだな。


 オレは魔力を込める。


 壁に、床に、大気に、自身に。


 先ほど尽きかけた筈の魔力が溢れてくる。


 気力が満たされている。


 オレの心に暖かい光が差し込む。


 オレは喜びを露わにする。


 石の人形に命を吹き込む。


 バロウ、オッチャン、おばさん、おじさん。リスの婆ちゃんも鳥さんも。


 オレと一緒に戦ってくれ。


 オレはそう願い、力強く咆哮した。

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