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強き魔物

 石壁の道を進む。


 木偶の獣を引き連れ進む。


 オレはダンジョンへと入り奥を目指していた。


 素早くパワーのある虎型2体を前衛に、耐久力のある大型の熊人形を後衛に据える。

 そしてもっとも安全な中衛からオレが魔法で獣たちを補助する。

 とは言っても木偶の獣たち自体、オレの魔法なのだが。


 陣形を崩さず、等間隔で進んでいく。


 ダンジョンだから罠もあるかと思ったが無用の心配だった。

 前衛の虎が罠にかかり壊れてしまっても平気だ。壊れたらまた作れば良い。


 後ろに控える木彫りの熊を魔力で成長させ、分裂させる。


 残機はオレの魔力分という訳だ。


 木偶人形に命など無い。使い捨ての駒でしかない。


 なら何故、オレは愛する彼らの姿を模したんだろうか。

 何故バロウの偽物を森へ置いてきたのだろう。


 その疑問の答えが出ることは無い。


 オレたち。いや、オレは進む。


 キャロを魔族から、あのいけ好かない女から取り戻す為に。


 オレは強くなる。


 その為にも余計な考えは捨てる。


 オレに過去は必要無い。


 現れる魔物も雑魚ばかりだ。


 グール、インプ、オーク、ゴブリン、グレムリン、ゾンビ、スケルトン、ミイラ。


 そのどれもが悍ましい姿をしていて吐き気を催したがオレはその全てを殺した。

 時には獣に喰らわせ、時には魔法で。奴らを次々と蹴散らしていった。倒すたびに奴らの生命力や魔力を吸収していくのを感じる。


 楽しい。


 こんな経験初めてだった。


 今まではただ護られるのみ、救いを求めるばかりで何も出来なかった。


 だが今は違う。


 オレは狩る者。 敵を蹂躙する征服者。 心が躍る。 血液が躍動する。 この上ない全能感。


 心を快感が満たしていく。


 やがてオレは地下階層へと降りる階段を見つける。

 恐れることなど無い。オレは陣形を保ったままその階段を下る。

 予想はしていたが下へ降ると魔物達は強力になっていった。


 トロル、オーガ、サイクロプス、ミノタウルス、ナーガ、ギガース。


 だがオレはその全てに勝利した。


 オレは強い。


 大柄なだけのノロマなどオレの敵では無い。

 木偶で歯が立たない事には少し驚かされたが、風の刃で微塵にしてやった。


 そいつらよりも苦戦したのは意外だがスライムやゴースト達だった。

 実態を持たないゴースト、不定形なスライム。

 あいつらには風の刃も、水の拘束も大地の槍も木偶の牙も全てが通用しなかった。


 だが通用しないなら今オレが奥へ向け進み続けてる訳が無い。


 オレは奴らに勝利している。


 木偶人形に魔力を込める。オレが纏う障壁を獣達に与える。獣はあたかも黒い炎を纏ったかの様に揺らめく。


 これは闇の魔法。


 そう呼んでいる。 オレの怒りが。 憎しみが形となって現れた魔法。


 闇の獣は邪悪な牙を振るい敵を喰い貪る。


 オレは嗤う。楽しくて仕方がない。


 嗚呼、今のオレの姿をキャロにも見せてやりたい。


 強くなったオレを見て、きっと彼女は喜んでくれるだろう。


 オレは嗤いながら進む。


 更なる力を求めて。


 奥へと進んでいく。


 地下深くへと沈んでいく。


 キャロ、もうすぐ会えるから。待っててくれよ。

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