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冒険者と魔物

 行く当ても無いまま歩みを進める。


 時折立ち止まり、走り、感情のままに進む。


 何度も振り返りそうになり、振り返らず進む。


 どれほどの時が経ち、どれほど歩いただろうか。




 オレはお婆ちゃんの所へと来ていた。

 周囲には未だ建物の焼け跡が残っている。夕暮れ時なせいで、まるで今も燃えているかの様に感じる。

 そんな建造物の中心に大きな十字架が一つだけ立っている。

 オレはそこにいる。

 キャロの側にいれなかった悲しさと申し訳なさで、足が向かってしまった。


 疲れは感じず、空腹も感じない。


 お婆ちゃん、ごめん。オレ、魔物なんだ。

 今まで嘘吐いてたんだ。二人に嫌われたくなくて、嘘吐いてたんだ。


 返事はない。


 しかしオレは問いかけを止めない。


 何度も何度も話しかけ、やがて暗くなり、夜となり、闇となり、意識を失った。




 声が聞こえる。

 人の話し声。オレは目を覚ます。誰だ?こんなところに来る人間なんていない筈。


「こんなところ来て大丈夫なんですかー?」


「ゾンビとかスケルトンが出そうな気配ムンムンじゃねぇすか」


「野盗に狙われてる村があるってギルドの連中が言ってたんだが、こいつはもう手遅れだな」


「せっかくピンチを助けてお礼金たんまり貰おうと思ったのにねぇ」


 そんな声が口々に聞こえる。

 数は、4人か。

 オレは警戒する。身を隠さなければ。逃げなければならない。

 話を聞くにどうやら冒険者風だ。

 まずい。冒険者ならオレとキャロを引き裂いた悪魔のアイテムを持っている可能性がある。絶対に見つかる訳には行かない。


 魔物だとバレたら、必ずや奴らは攻撃を仕掛けてくるだろう。


 そうなってしまえばオレでは奴らに勝てないだろう。一般人があれほど恐れる魔物を狩る者たち。その強さは並大抵ではないだろう。

 数の不利もある。


 隠れなければ。だがそんな事を考え動揺してしまったオレは、物音を立ててしまう。


 見つかったか……?


 奴らが次々と言葉を口にする。物音がした、何かいる、と。


 ダメだ。思うや否やオレは急いで駆け出す。


 逃げられるか?奴らは追ってくる気配は無い。だが後ろの方で魔力のざわめきを感じる。


 そう思った時には遅かった。


 オレの手足を、身体を、大地が動き、あたかも獲物を捕らえる蛇のように動きオレを拘束する。


 くそ!外れろ!外れやがれ!


 オレはもがく。それと同時に魔法を使いオレを縛る大地へと干渉し、拘束を解こうとする。


 だがその思いは虚しく土の蛇は使い手の意思から逆らおうとはしない。


 ダメだ。オレの魔力じゃ制御を奪えない。


 オレは冒険者たちの声がした方を見やる。


 四人の男女がもがき暴れるオレを見つめている。


 戦士風の男、軽装の男女、魔法使い風の女。てっきり剣士、盗賊、魔法使い、神官などのよくあるイメージを想像していたが微妙に違うらしい。


 四人は動かない。


 オレは考える。どうにか逃げ出す方法は無いか。まだ死にたくない。オレはまだ愛犬を見つけてないんだ。

 ハピアと会う約束もしたのにまだ顔も合わせていない。

 キャロと再び会うまで……、そこまで考えて思考が止まり思い出す。


 キャロは……、もうオレの事は必要無いんだったな。

 もう彼女には新しい家族がいる。今まではずっとお婆ちゃんと二人だけの生活だった。

 だが今の彼女には母がいて、沢山の兄妹たちがいる。

 彼女は今の生活が気に入っているのだろう。

 今の幸せを壊されたくないから、オレを追い出したのだ。

 不吉の象徴である、このオレを。


 オレは思案し脱力する。


 やがて、女二人が声を揃え叫ぶ。


「「可愛いぃぃーー!!」」


 黄色い声。

 オレは予想外の言葉に思考が空っぽになる。理解が追い付かない。

 女たちは駆け寄ってしゃがみ込み、魔法使いが拘束を解くと軽装の女がオレを抱きしめる。


 なんだ!?何が起こっている!

 女の胸がオレの体へと押し付けられる。


 あ!お姉さん!当たってます!恥ずかしいです!ぼぼ僕はただの犬じゃなくて人の思考があるんです!

 そんな事を考えもがくが新たな拘束は先ほどの大地よりも強くオレを離さない。


「きゃん!きゃん!(痛い痛い痛い!折れちゃう!力強すぎだってば!)」


「ちょっとアンタ、力入れすぎ!もっと優しくしなよ!」


 そう言って魔法使いがシーフ女からオレを奪い取り立ち上がる。

 助かった……。って魔法使いのお姉さま背が高い! 持ち上げられると凄い視界が高い! うおっ! 怖い!! 今まで子供くらいにしか抱えられた事が無いから凄い怖い!!


 オレは再び暴れるが全く逃げ出す事が出来ない。シーフ女よりマシだがとにかく怖い。あっ、お姉さま良い匂いがする!

 女性特有の甘い香りがオレの鼻をつく。


 オレは脱力し身体を預ける。

 女二人が何かを言い合っている。だがオレの耳には届かない。


 オレは突然訪れた幸福を味わうのだった。

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