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新しい生活

 心が痛い。 何故? わからない。 お婆ちゃんの声。 優しい声。 会いたい。 お婆ちゃんとキャロ。 二人に会いたい。




 オレの体が揺すられる。


「起きて、アリス起きて!」


 女の子の声。 キャロ……?

 オレの意識は覚醒する。

 たしか、馬車に乗って……。オレはずっと眠っていたのか。いかん、疲れてるとはいえキャロに起こされるなんて。

 とても野生で暮らしてたとは思えないな。


「おはようございますアリスさん。ココがあなたの新しいお家ですよ〜」


 どうやらハートの孤児院に着いたらしい。

 うん、普通に教会だ。屋根に十字架がちょこんと乗った建物。強いて言うなら若干ボロい。

 天気の悪い日に見たらオバケ屋敷と言われても信じるかも知れん。


「さぁさぁ〜。中へどうぞ。御案内いたしますよ〜」


 ハートは検問所で出会った時と変わらず、大振りな芝居掛かった動きをする。

 その様子を見てキャロが小さく笑う。

 良かった。新しい生活への不安は無いみたいだ。むしろハートが現れてからキャロは少し元気になった様だ。

 さすが孤児院で働くシスターさんだな。


『アリス。彼女には気をつけてくださいね』


 ハピアは心配しすぎだ。オレも最初はシスターにしちゃセクシー過ぎるし香水?付けすぎかなーとか思ったが優しい美人さんではないか。

 何も疑う事なんて無いさ。


 キャロがハートに手を引かれ中へと入っていく。オレはその後ろをトコトコと追いかける。


 突如鳴る発砲音。


 え!何!?敵襲、敵襲なのか!


「「「おかえりなさい! キャロちゃん!アリスちゃん!」」」


 ぬっ?何だこのキッズ達は?

 十人前後、くらいか。年、背格好はバラバラだ。見ると皆が手に手にクラッカー、の様な物を持っている。歓迎の印か。嬉しいじゃないか。

 それにしても「おかえり」とは、彼らは初対面のオレたちを既に家族として迎えてくれてるのか。

 オレとキャロは笑顔で見つめ合い、彼らに向き直り挨拶をする。

 オレは抜群の可愛さを発揮する。


 お、キッズたちがオレとキャロに駆け寄ってくる。


「ワンちゃん可愛い〜」

「このペンダント二人のお揃い?キレイだねー!」

「よろしくね二人とも!」


 そんな事を口々に言ってくる。

 お揃いか。お婆ちゃんの形見だったがそんな風に言われると少し嬉しくなってしまう。

 それにしても、この子達が友好的で本当に良かった。これならキャロも近いうちに以前の、太陽の様な笑顔を取り戻すだろう。


 おや?キャロの顔が少し赤い。なんだ、急な環境の変化に熱でも出してしまったのか?

 オレはじっくりとキャロを見る。理由はすぐにわかった。


 キャロに対してやたら近い距離感で接する少年。キャロも満更でもない様子。


 ほっほっほー、マジかぁ。 いやぁー、何だね?あの少年は。


 え、恋!? 嘘だろ? キャロはまだ九歳の筈だ! こんな年齢でも人は恋をするものなのか!? オレがそのくらいの頃はバカ丸出しで愛犬と共に一輪車で爆走してた年だぞ!!


 ハピアがオレの回想を覗いて笑っているが今そんな事はどうでも良い。

 くそ、とんだハプニングだ。まさかキャロに悪い虫がくっ付いてしまうなんて。


「きゃん!きゃん!(うおおおお!!キャロに近付きすぎじゃ小僧!ペットさん許さんぞおおお!!)」


 オレは立ち上がり少年へと攻撃を開始する。

 オラァ猫パンチならぬ犬パンチを喰らいやがれぇ!オレは激しくペシペシと肉球を叩きつける。


「お前かわいいなあ!キャロと仲良しなんだな!俺とも仲良くしてくれよ!」


 うお!急に持ち上げるんじゃない小僧!抱く時はもっと優しくするんだ!

 オレが頭突きをするも全く効果が無い。


 慌ててキャロが抱き直してくれる。

 助かった……。


 なんて波乱の幕開けになっちまったんだ。これからはコイツに目を光らせなければ……。


 ふと見るとハートが騒ぐオレたちを見て笑っていた。それはとても素敵な笑顔だった。

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