たとえ、それでも
第六戒
あなたが私にどんなふうにしてくれたか、それを私は絶対に忘れません。
ペンダントの事件の後。
キャロの家へと帰ったオレはお婆ちゃんに手当てをされ、キャロと共に眠った。
お婆ちゃんに聞いた話だが、おじさんのペンダントは見つかったらしい。
どこかに落ちていたのを村の子供が見つけたそうだ。
しかしオレと村人との関係は、元には戻らなかった。
この村にとってペンダントは大切な物なのだろう。
しかしキャロを襲い続けた村人たちを、オレは許す事は出来ない。
そして村人たちもまた、魔を操る者であるオレを憎んでいる。
化け物。
キャロは、笑顔でいることが無くなった。
以前の様に村を二人で歩くことは出来ない。
オレは村を歩けば石を投げられ、その飼い主であるキャロも謂れのない非難を受ける。
今やオレたちは村から追い出されたも同然の待遇だった。
不吉の象徴。
オレは今そんな不名誉な名前で呼ばれている。
オレのせいで、この家に、キャロの家に不吉を届けてしまった。
魔物は人と一緒にいちゃいけないんだ。
バロウたちがオレと共に逃げない理由がようやく理解できた。
こんな苦しみは、彼らも味わいたくは無いだろう。
村人から嫌われたこの家では、食べる物も満足に売って貰えない。
お婆ちゃんはオレたちよりマシだが、不幸が感染ると言われたり。普通よりも高く物を売られ、以前よりも貧しい生活を送っている。
オレのせいで。
ハピアは、オレが悪いわけじゃないと言ってくれているが……。
違うさ。
あの時、大人しくペンダントを渡していれば良かったんだ。
キャロは泣くだろうが、そうしておけば。
きっと今も、キャロと笑って過ごせていた筈なんだ。
オレはキャロの側を離れない。
体を擦り付けると、時々弱々しい笑みでオレを撫でてくれる。
オレは何度も村を出ようかと考えた。
だが今にも心が崩れ落ちそうなキャロを見ると、離れることなど出来なかった。
キャロ。ごめんね。
こんな事になってしまって本当にごめん。
けど。
オレはキャロと一緒にいれて。
幸せだよ。