幸せな時間
犬の十戒、第三。
私にとって一番大事なことは、あなたから信頼してもらえることです。
それは勿論オレにも適用される!うおおおお!キャロちゃん大好きーー!!
ペロペロはしないよ!お行儀が良いからね!
今のオレはご飯も食べ、キャロちゃんにお風呂に入れてもらった!それにより。
何という事でしょう。
痩せ細った体はハリツヤを取り戻し、薄汚れた毛皮は純白と純黒の模様がハッキリと識別できるフワフワヘアー。それはあたかも宝石の様。
美しい……。
「おや、まあ!ずいぶんと見違えたねぇ!」
お婆ちゃんが驚きオレを撫で回す。
そうだろう、そうだろう!モデルさんのごとく美人さんだろう!オレの生まれ変わった姿にキャロちゃんも大絶賛だ。
「わんわん!(キャロちゃんありがとう!お婆ちゃんありがとう!)」
「キャロや、この美人さんに名前を付けてやったらどうだい?」
名前!そーいやずっと皆お嬢さんお嬢さん言うからそれで定着してたけど欲しいわ!名前!
前世の名前は人用だし、そもそも日本人だしこの体には似合わないだろう。
愛犬の名前使っちゃうとオレが混乱しそうだ。てゆーかオレの元の名前って何だったっけ?まあいいや!
いずれにせよ。
「わんわん!(名前欲しい!名前!可愛いやつ!)」
オレの言葉を聞いたキャロちゃんが腕を組み思案する。悩む姿も可愛いぜ。
キャロちゃんはひとしきり思案すると何か思いついた様に本棚へと駆け出す。
どしたのん?本からアイデアを得るんだな?メッチャ考えてくれてる!うれしい!
キャロちゃんはパラパラと本を捲るとページを大きく開きオレへと見せる。
「アリス!あなたの名前はアリス!絵本の主人公であなたみたいに可愛いの!」
キャロちゃんとアリスか。似た様な話がコッチの世界にもあるんだな!
主人公で可愛いってのが気に入った!!
「おん!(わーいありがとー!すっごく気に入った!!)」
『名前が決まったんですのね。良かったではありませんか』
おん!これからはハピアもオレの事をアリスって呼んでくれ!
『えぇ、会うことがあるかわかりませんが。よろしくお願いしますアリスさん』
いつか会いに行く!ハピアもオレの事一生懸命助けてくれた恩人だからな!
「じゃあキャロや。名前も決まったことだし、お昼ご飯までアリスと遊んできたらどうだい?」
お、良い提案だお婆ちゃん。
何やろー?フリスビーか。 キャッチボールか? 枝を拾ってきても良いぞ!散歩でもしようか!そうだ!
「わんわん!(オレの可愛さを村中に広めに行こう!)」
そう胸を張るオレ。
どうどう?キャロちゃん何したい?
『成長しませんこと。らしいと言えば、らしいですが』
自分らしさって大切だよね!やばいなー、キャロちゃんに会えてから幸せすぎてやばいなー!
オレがこんだけ幸せなんだからバロウたちも全然無事なんじゃないかと思えてきた。
「じゃあアリス!村をお散歩しよっか!案内してあげる!」
オレは幸せの絶頂にいた。やはりコレは運命の出会いだったのだ。