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子ブタ聖女と呼ばれていますが、いつか役者になってみせます!! 作者:羽田遼亮
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カーバンクル、隣村の領主の家に忍び込む

 みるみる痩せる身体。
 どんどん小さくなる衣服。

 やがて衣装ケースにある服がすべて合わなくなり、鎧のような贅肉が消え去ると、アリスは見目麗しい少女に変身していた。

 世にも珍しい銀色の髪に、均一の取れた肢体、手足はしなやかで長く、まるでどこぞの令嬢のようであった。

 鏡を見て言葉を失うアリス。

「わたしって、こんなに可愛かったっけ?」

 そこにいるのは明らかに自分ではなかった。

 カーバンクルのカーくんは、ひょこひょことアリスの肩にのぼってくると、こう言った。

「これが元々の君だよ。君がまだ巫女だった頃、それはそれは美しくて、隣村の領主の次男から求婚されたことを忘れたの?」

「ああ、あのロリコン男爵ね」

「結局、神官長様が仲裁に入って事なきを得たけど、君を肥え太らせたのは神官長様の深慮遠謀かもね。子ぶたちゃんになってから、求婚がぴったりやんだもの」

「ぶひ、じゃあ、求婚が再開されちゃうかも」

「それはないかも。男爵は結婚したらしいし、さすがに聖女様に手を出すほど不信心じゃない」

「聖女はもうすぐ廃業だよ。わたし、女優になるの」

 と鏡の前でセクシーポーズ。

 出るところは出て、くびれているところはくびれている身体はなかなかにセクシーであった。

 カーバンクルは呆れながら言う。

「君はやっぱり聖女をやめる気なんだね」

「もちろん! わたしは女優になるために生まれてきた女だから」

「聖女も案外、合っていると思うよ。少なくとも君は村人に慕われているし、神殿の人たちに愛されている」

「女は愛だけでは生きていけない。夢を食べる生き物なの」

「それは誰の言葉」

「A・フローネ」

「フローネって君の名字だろう。Aは君のイニシャルだ」

「ご名答、名探偵カーくん」

「まあ、夢でもわたがしでも好きなだけ食べていいけどね。どうせ、近いうちに現実を見る」

「どういう意味?」

「たしかに君はダイエットに成功した。とても綺麗な女性になったよ。女優の卵を主張できるくらいに」

「ありがとう」

「でもね、神官長様が示した条件はダイエットだけじゃない。君は演技によって神官たちを感動させないといけないんだ」

「そういえばそんな条件もあったような」

「あるの。そしてたぶんだけど、君は演技で神官長様を感動させられない」

「そんなことないもん。わたしの演技力はすでに銀等級だよ。控えめにいって」

「問題はそこじゃないんだ。君の演技力が金等級でも、真銀等級でもそんなことは関係ない。君のことをここにとどめたいと願い、手元に置いて幸せにしてあげたいと思っている人物の前でどんなに素晴らしい演技をしても感動するわけがないんだ。それがボクが言いたいこと」

「それって神官長さまがずるをするってこと……?」

「ずるじゃないさ。ただ、君のことを思って辛口の評価をするだけだと思う」

「そ、そんな……」

「そういうことだからさ、さっさと諦めて立派な聖女になる訓練をしようよ。今から修業すれば真の聖女になれるよ」

 アリスは唇を噛みしめながら首を横に振る。

「……ううん、わたしやるよ」

「でも、神官長様は」

「神官長さまの性格はわたしが一番よく知っている。厳しい人だけど、それでも不正をなによりも嫌うの。たしかに辛口の採点をされるかもしれない。でも、それでも素晴らしい演技をすればこの思いはきっと届くと思うの」

 アリスは握り拳を突き上げる。
 目に炎の魔法が宿っているようだった。
 それを見たカーバンクルは神妙な面持ちになるとうなずいた。

「分かった。君がそこまで言うのならボクも協力するよ」

「協力?」

「演技をするには脚本が必要だろう。それを持ってきてあげる」

「持ってくるってどこから? この神殿には娯楽本はほとんどないけど」

 この神殿のさして広くもない書庫の棚には主に神学や医療書、実用書などで埋め尽くされており、演劇の元ネタとなる小説や戯曲はほとんどなかった。

「昔、奇特にも君のことを口説いていた領主がいただろう。彼の家に潜り込んで読んでくる。ボクの記憶力は賢者並だからね。その場で暗記できるはず」

「でも、その領主さんのおうちは大の動物嫌いで有名らしいよ。もしもカーくんが見つかったら大変なことに」

「大丈夫、ボクはこう見えても幻獣だよ。そうそう簡単に捕まらない」

 カーバンクルは断言すると、くるりときびすを返し、窓のふちに立った。
 窓をこんこんと叩き、空けてくれとアリスに迫る。
 小柄なカーバンクルは窓を開けることもできないのだ。
 アリスは窓の鍵を開けると注意をうながした。

「カーくん、捕まりそうになったら逃げてね」

「分かってるよ」

「落ちてるものを拾って食べたら駄目だよ」

「ボクは君じゃないよ」

「ねずみ取りに気をつけてね」

「だからボクはねずみじゃないって」

 カーバンクルは少し怒り気味に言う。
 たしかに彼はネズミではなかった。

 ネズミのような大きさの小動物であるが、体毛は緑色、顔はどちらかといえば猫に近い。

 また額に大きな宝石があるのが特徴で、神秘的かつ魅惑的に輝き、個性を主張していた。

 カーバンクルとは世にも珍しい生物で、この山深い村でも滅多に見かけることのない幻の獣なのだ。

 それを知らないものは彼をいつもネズミ扱いするが、本人は大いに不満のようだ。  

これからはネズミ扱いはしないようにしなければ。
 アリスは改めて注意すると、緑色の友達の背中を見送った。
 彼が無事、演劇の題材となるような小説か戯曲を記憶してくることを願いながら。

『宝くじが当たったのでレベル1から聖剣を買ってみる』

宝くじで一等を当てた少年が聖剣を買いダンジョンの最深部を目指すお話です。

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