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子ブタ聖女と呼ばれていますが、いつか役者になってみせます!! 作者:羽田遼亮
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まずはダイエット! ぶひ

 こうしてアリスのダイエットが始まった。

 朝、ニワトリさんの声で目覚めたアリスはまず水を飲むと、朝ご飯の準備を始める。

 神官長の出した条件はダイエットと感動できる演技であるが、だからといって聖女の務めをおろそかにしていいわけではなかった。

 アリスはこの神殿で働く他の神官や巫女たちのように働かなければならない。
 働かざるもの食うべからず。それは俗世だけでなく、この神殿でも同じこと。

「もっともダイエット中だからそんなに食べられないけど」

 ぺろりと舌を出すが、それでも朝の仕事はさぼらない。

 この神殿で働く同僚たちが真面目に働いているのに、自分だけサボることなどできない。

 それはアリスの矜持(きょうじ)でもあったし、意地でもあった。

「仕事を怠けていたからダイエットと演技を成功させたなんていわれたくないし」

 その言葉を聞き、カーバンクルのカーくんはこう評す。

「その心意気はあっぱれ。昨日、神官長様のいいつけを破った聖女の言葉とは思えない」

「なんとでもいいなさい。わたしは一ヶ月後、必ずダイエットを成功させるの。そして最高の演技をして神官長さまに快く送り出してもらうの」

「それはいい心がけだけど、ダイエットのプランはあるの? ボクの見たところ、君の体重は一ヶ月やそこらで落ちるとは思えないけど」

「まずはご飯の量を五分の一にするわ」

「いいね。いきなりゼロにすると倒れてしまうし、身体に悪い」

 こくりとうなずくアリス。

「次に時間が空いたら、とにかく運動する」

「それもいいね」

 アリスは取りあえず、朝の掃除を全力でやる。

 通常、この神殿の門前の掃除は数人の手で小一時間ほど掛かるが、アリスはそれをひとりでこなす。それをさらに時間は短縮させる。

 つまりアリスは通常の三倍早く動く。

「うぉぉー! とりゃー! ぶひー!」

 と、高速で門前を掃き終えると、そのまま神殿内の雑巾掛けも行なう。

「す、すごい、昨日までお菓子を食べながら掃除をしていた子とはとても思えない」

 それが昨日までのアリスを知る神官の言葉であるが、やる気マックスモードになったアリスの本気はこんなものではなかった。

 午前のお勤めが終わると、半分だけパンを口にし、残りをカーくんにあげる。
 そして午後のお祈りを終えるとあとはひたすらエクササイズ。

 腕立て50回、腹筋50回、スクワット100回、それが1セット。足腰立たなくなるまで続ける。

「ぶ、ぶひー!」

 肉の塊であるアリスには自重だけで十分負荷になる。

 夜も時間ができればひたすら敷地内をランニングする。有酸素運動は効率的に脂肪を燃やしてくれた。

 このような生活を一週間続けると成果が見えてくる。
 100キロ近かった体重がみるみる減り、アリスの聖衣はぶかぶかとなる。
 はだけて胸が見えそうになるが、そこは親友のニーナがファロー。

 彼女はにこにこと裁縫道具を取り出すと、あっという間にアリスの聖衣をぴったりと縫い直してくれた。

 彼女は穏やかな笑顔とともに言う。

「アリスちゃん、私、アリスちゃんのことを応援してるよ。演技の練習には協力できないかもしれないけど、影からサポートするから」

 その言葉、思いやりはとても嬉しかった。
 そしてくじけそうになるアリスに声援を送ってくれるのも有り難かった。

 ある日、アリスはあまりの辛さから、意識を失い、ふらふらと食料庫に向かったことがあった。脳では食べ物を拒否しても魂レベルで欲してしまっていたようだ。

 アリスは夢遊病患者のようにパンに手を伸ばしたそうだが、それを見つけたニーナがとめてくれた。

「だめー! アリスちゃん、今、それを食べたら今までの成果が無駄になるよ。アリスちゃん、女優になれなくなるよ」

 彼女はそう言ってアリスの頬を叩いてくれた。

 その一撃で目を覚ましたアリスは、
「わ、わたし、走ってくる」
 と神殿を飛び出し、村はずれにある墓地まで走った。

 アリスはそこで眠っている母に大声で叫んだ。

「わたし、ぜったい、女優になるから。天国のお母さん、見守っていて!」

 その言葉が天国の母に届いたのだろうか、その日を境にアリスの体重はさらに激減していった。


 そんな光景を端から見つめる人物がいた。
 この神殿の神官である。
 彼女は古株の神官で、その生真面目さと厳格さが有名であった。

 彼女は自分に厳しいが、他人にも厳しいタイプで有りていにいえば神殿の巫女たちに嫌われていた。

 もっとも彼女のその厳しさはある意味優しさなのだが、年若いものにはその優しさがなかなか伝わらなかった。

 それはアリスも一緒で、アリスはこの神官が苦手であった。

 一方、神官の方は出来の悪い聖女であるアリスに早く一人前になって欲しいと思っていた。今回の女優騒動も早く収束させ、本道に戻り、アリスに立派な聖女になってもらいたいと思っていた。

 だからアリスのダイエットなど失敗してしまえと思っていたが、日に日にやせ細るアリスを見て心配になっていた。

 心配になった神官は神官長に相談する。

「神官長様、このままではアリスはダイエットに成功してしまいます。……いえ、それはいいのです。このままではアリスはやせ細ってしまいますし、倒れてしまうかもしれない」

 神官長はその可能性はある、と認めた上でこう言った。

「このままダイエットをとめることも可能でしょう。しかし、わたしは見たいのです。アリスが頑張っている姿を」

「アリスが頑張る姿ですか?」

 こくんとうなずく神官長。

「あの子は天性の頑張り屋です。自分では聖女に相応しくないと言っていますが、彼女が聖女に選ばれたのはその努力する姿勢です」

 神官長は真剣な表情で続ける。

「わたくしは才能とは生まれ持ったものではなく、努力をし続けることだと思っています。あの子にはそれがある。それを見届けたいのです」

「ならば神官長様はアリスの努力が実れば、彼女を女優にするのですか?」

「それとこれとは話は別です。ダイエットはアリスの健康のため、やる気を刺激させるためです。わたくしはいいましたよね? わたくしを感動させる演技ができなければ弟子にはやれないと」

「つまり、神官長様は絶対に感動されない、と?」

「わたくしはそこまで酷薄な人間ではありません。素晴らしいものを見れば心動かされるでしょう。しかし、それよりもなにもわたくしはアリスの未来を心配しています。アリスのように人が良く、人を疑うことを知らないような娘が都会に行けばどうなるか。火を見るよりも明らかです」

「神官長様はアリスがこの村に留まる方がいいと思っている、ということでよろしいですね」

「はい」

 神官はその言葉を聞き安堵すると同時にこう思った。

 なんだかんだ言ってこの神殿でアリスのことを一番心配しているのは彼女なのだと。

 神官は一生懸命にダイエットに励むアリスを見る。
 可哀想であるが、アリスはこのまま、この神殿に留まるのが正しいのだ。

 神殿や村人たちから慕われ、可愛がられながら聖女としての務めを果たし、この小さな村で一生を終えるのが正しい選択なのだ。

 年老いた神官はそう思った。 

『宝くじが当たったのでレベル1から聖剣を買ってみる』

宝くじで一等を当てた少年が聖剣を買いダンジョンの最深部を目指すお話です。

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