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子ブタ聖女と呼ばれていますが、いつか役者になってみせます!! 作者:羽田遼亮
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女優になるために痩せてみせます!

 結局、アリスの家出計画は露見、食料泥棒もばれたが、そこまで怒られなかった。
 翌朝の朝食抜きを宣言されると、そのまま神官長の執務室へ連れて行かれる。
 そこにはザムドも一緒だった。
 彼と一緒に案内されると、アリスは神官長の横に座らされた。

 ――といっても子ブタなアリス、細身の神官長の分までソファーを占有してしまうが。それでも神官長は気にせず、客人であるザムドに言った。

「神官から話はうかがいました。なんでもベアトリクス様がアリスを弟子にしたいとか」

「はい、その通りです」

「大変結構な申し出ですが、そのお誘いお断りします」

「なんと! それは本気ですか」

「本気です」

 きっぱりと宣言する神官長は凜々しかった。

「しかし、我が主ベアトリクス様が直弟子を取るなど、滅多にないことですよ」

「それはそうなのかもしれませんが、この子――、アリス・フローネには神聖な義務がありますから」

「神聖な義務?」

「この子はこう見えてこの村で唯一の聖女なのです」

「なんと、この娘は聖女だったのか」

 ザムドはいぶかしげに、じろじろとこちらを見つめてくる。
 本当に驚いている。
 ある意味、失礼な人だが、アリスは気にせずこう言った。

「聖女なのは今宵まで。アリス・フローネは今から女優になります」

「駄目です」

 と言下に拒絶する神官長。

「アリス、あなたは聖女なのですよ」

「聖女よりも女優になりたいんです」

「それは幼き頃の夢でしょ。女優では食べられないわ」

「そんなことないわ。大女優になればお金持ちになれるもの」

「いったい、何人の子が女優を目指すと思っているの。あなたは何百人、いえ、何千にもの子をかき分けて頂点を目指せるの」

「目指せます!」

 元気よく断言する。

「いいえ、無理よ。あなたには無理」

 そうよね、ザムドさん、と視線をやる神官長。
 ザムドは返答に窮している。

「……アリス、こんなことは言いたくないけど、あなた、鏡は見たことがあるの? その体重、その顔のむくみ、そんなに太った女優がこの世界にいますか?」

 歌劇(オペラ)歌手ですらもっとスリムですよ、と神官長は言う。

 ねえ、ザムドさん、と続けるが、今度はザムドも「たしかに……」と首を縦に振った。

 正直な人である。

 あなたはどっちの味方なの? と突っ込みを入れたくなったが、そうするよりも言うべきことがあった。

「……ぶ、ぶひ、たしかに今はただのデブかもしれないけど、わたし、絶対に痩せます。痩せて綺麗になって必ず大女優になって見せます」

「食いしん坊のあなたが無理よ」

 神官長はそう言うと、アリスから没収したリュックサックから、ビスケットを取り出す。

 それをさりげなくアリスの前に置く。
 アリスが食べないか、テストしているようだが、酷い扱いだ。

「あのですね……(むしゃむしゃ)いくら、わたしでも(はむはむ)、ダイエット宣言した直後に(むしゃむしゃ)ビスケットを食べませんよ。(ごっくん)しかも話ながら」

 そう言うが、数秒後にはアリスの前に置かれたビスケットは消えていた。
 しかもアリスの口の周りには食べかすがびっしり。
 おかしいな、腕を組み、首をかしげる。
 それに突っ込みを入れたのはカーバンクルのカーくんだった。

「君は物語に出てくる道化かい! いや、いまどき、こんな間抜けな道化もいないよ」

「ぶ、ぶひ~」

 と声を上げるアリス。
 そのショート喜劇を見て、神官長はため息を漏らしながら言った。

「ではこうしましょう。一ヶ月……、一ヶ月だけ時間を上げます。その一ヶ月で見事ダイエットに成功し、わたくしや神官たちを感動させる演技をすることができたら、あなたの旅立ちを祝福しましょう」

「ほんとですか?」

 アリスはその大きな瞳を輝かせる。
 神官長は断言する。

「神に仕えるものが嘘をつくことはありません」

 本日、いくつもの嘘をついたアリスには耳が痛い言葉であるが、それよりも嬉しさの方が先行した。

 女優になれる、そう思っただけで、食欲がこみ上げてくる。

(……おっと、だめだめ、女優になるにはダイエットしないと)

 それに演技の勉強もしなければならない。

 女優的な容姿だけでなく、演技者としての才能もアリスには求められているようだ。

 それらをきっちりと神官長に見せることができれば、アリスは女優になることができる。

 劇団「銀色航路」に入団し、大女優ベアトリクスさまの弟子になれるのだ。
 それは願ったり叶ったりというやつで、アリスが女優になる最短距離でもあった。

 このようなチャンスを逃せば、今後、アリスが女優になれる日などこないかもしれない。

 このままこの片田舎の村でしがない聖女として一生を終えなければいけないかもしれない。

 それは幼き頃より女優に憧れていたアリスには辛いことだった。
 アリスは拳を握りしめると神殿の屋根の上で光っているはずの宿星に祈りを捧げた。

 演劇の女神の星に誓ってダイエットを成功させる。
 そして神官長を演技によって感動させてみせる。
 それがアリスの使命となった。 

『宝くじが当たったのでレベル1から聖剣を買ってみる』

宝くじで一等を当てた少年が聖剣を買いダンジョンの最深部を目指すお話です。

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