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子ブタ聖女と呼ばれていますが、いつか役者になってみせます!! 作者:羽田遼亮
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ザムドの訪問

 稀代の名女優からその才能を認められているとはつゆ知らず、とぼとぼと帰宅するアリス。その足取りは重い。

 アリスの家は神殿の脇にあるが、そこには多くの神官や巫女たちが住んでいた。
 そして神官長さまも。

 カーバンクのカーくんいわく、

「ボクが告げ口するまでもなく、君のサボリはばれているから覚悟するように」

 ということであった。

 アリスはその身を清めるために(みそ)ぎをすると神殿を出てきたわけであるが、他の巫女たちが泉に行ってみると、そこにアリスはいなかった、というわけだ。

 それでアリスがサボっていることがばれた、ということか。

 カーくんはそれを知らせるためにやってきてくれたそうだが、今さら知らせられても困る。どうせならカーくんが自分に化けて誤魔化してくれればいいのに、と愚痴る。

「君は質量保存の法則って知ってる?」

「知らない。美味しいの? それ」

「ボクのような小柄な生き物が君みたいな巨体にばけられるわけないだろう。さあ、早く神殿に戻って一緒に神官長様に謝るんだ」

「そうだね、神官長さまはお優しいから、謝れば許してくれるよね」

 アリスはそう結ぶと、いそいそと神殿に帰った。


 神殿に帰ると、アリスはメチャクチャ怒られた。
 温厚な神官長さまが顔を真っ赤にしてアリスを叱りつける。

「アリス・フローネ! あなたは聖女としての務めを放棄して芝居を見ていたというのは本当ですか」

「本当です」

「このわたくしに嘘をつき、禊ぎをしなかったというのは本当ですか」

「本当です」

 その他、すべての罪状を読み上げられ、有罪を認めるアリス。

「それではアリス・フローネ、あなたはもはや聖女に相応しくありません。解任します」

 と続くことを期待したのだが、その罰は下されなかった。
 アリスは自分の部屋で謹慎を命じられると、夕食抜きの罰を受けた。

 育ち盛りにして大食漢のアリスには酷な罰であったが、その罪の重さから比べればあまあまな処置である。

 どうしてこのような沙汰が下ったのだろうか。
 不思議そうに首をひねっていると、窓から忍び込んできたカーバンクルが言った。

「そりゃ、なんだかんだいって、神官長は君に甘いからね」

「そうかなー」

「君は自覚はないかもしれないけど、巫女の中でも君のことを一番に可愛がり、目をかけてくれたからね。なんでも君のお母さんとは幼なじみだったらしいし」

「それは聞いた」

「その幼なじみの忘れ形見を自分の娘のように思ってるんじゃないかな。だから厳しくも優しいんだよ、あの人は」

 ならば夕飯抜きは免除してもらいたいが、そんな愚痴を言えば明日の朝食も抜きにされかねない。そうなればアリスは飢え死にするだろう。

 アリスはそれを避けるため、夜中、食料庫に忍び込むことにした。

「てゆうか、君、どうしたちゃったの?」

 カーバンクルは不思議そうに尋ねてくる。

「どうしたって?」

「数日前までは絵に描いたような良い子だったのに」

「今も良い子だよ」

「育ての親である神官長に逆らったり、嘘をついて芝居を見に行ったり、タダ見をしたり、ましてや食料庫に忍び込んで盗み食いをするような娘は良い子じゃない」

「その罪状に食料を鞄につめて家出する、も追加しておいて」

「家出するのかい!?」

「うん、もう決めたの。わたし、このままここにはいられない」

「いや、いくら君が悪い子でもまだ更正の余地はあると思う」

「更正はできても、わたしの心に灯った火は消せないよ」

「どういう意味」

「やっぱり、わたし、女優になりたいの。演劇の道を志したいの」

「演劇の道って……、君はまだそんな夢のようなことを」

「夢じゃないわ。すぐそこにある現実よ。だってこの村にきているのは王都でも有名な劇団なんだもの。その主催者はあの往年の美人女優ベアトリクス・アマーチェ。これは神さまがわたしにくださったチャンスだと思うの」

「待って、神の名を持ち出すならば、聖女であることも思い出して。君はこの村で唯一の聖女なんだよ。君がいなくなったら村人は困る」

 その言葉でアリスは自分が聖女であることを思い出した。
 聖女とはこの世界独特の制度である。

 各地にある神殿に仕える巫女の最上位版で、巫女の中から選ばれたもっとも聖なる存在が聖女となる。

 聖女となったものは、その神殿に留まり、その地域の象徴となり、聖なる力で村人を癒すのが仕事とされていた。

 この世界において欠かせぬ存在である。

「てゆうか、元々、回復魔法が苦手なわたしが聖女ってのがおかしいと思う。選考方法に誤りがあったんだと思う」

「たしかに君は褒められた聖女じゃないけど、今、この村に聖女は君しかいないのもたしかだ。そうそう簡単にやめてもらったら困るよ」

「大丈夫、わたしの代わりはいくらでもいるもの」

 とアリスは親友であるニーナの名をあげる。
 彼女はアリスと同い年の巫女である。

 品行方正、学識豊か、そして美人。回復魔法もアリスよりも何倍も上手いし、本来、彼女が聖女となるべきはずである。

 それをなにかの手違いか、アリスが選ばれてしまったのだ、ここは彼女の運命を本道に戻すべきかと思われた。

「というわけで、後事はニーナに託す、という手紙を置いていくから、これで安心♪」

 とアリスはしたためていた手紙を食料庫に残す。
 一応、育ての親である神官長にも別離の手紙を残す。

「女優になるための旅に出ます。探さないでください」

「やけに淡泊な手紙だね」

「神官長さまにはこれで通じるの。それくらい仲良しなの」

 と断言すると、アリスはそのまま旅に出た。
 すでに衣類や身の回りのものなどをリュックサックに詰め込んでいた。
 あとは当面の食料さえあれば問題ないだろう。

 そう思ったが、そのアグレッシブな行動は無駄に終わった。
 忍び足で神殿を出ようとした瞬間、来客がやってきたからである。
 アリスは物陰からその来客を見つめる。

 その来客とは先ほどアリスを子ブタ呼ばわりした大男であった。
 無精髭を生やした筋骨隆々の男だ。
 名をザムドといっただろうか。
 彼は正面玄関から堂々と入ってくると神官長へ取り次ぎを頼んでいた。
 神官の女性はいぶかしげに用件を尋ねるが、ザムドは悪びれずに言った。

「この国の宝にして、国王陛下から女男爵の位を授かったベアトリクス・アマーチャ様よりの使いである。この神殿に住まう子ブタのような娘を是非、弟子にしたいとのこと。なにとぞ、お取り次ぎを」

 その言葉を聞いたアリスは思わず立ち上がり、こう言った。
「ぶ、ぶひぃー!?」
 と。

 その声を聞いた神官とザムドは同時にこちらを見た。

『宝くじが当たったのでレベル1から聖剣を買ってみる』

宝くじで一等を当てた少年が聖剣を買いダンジョンの最深部を目指すお話です。

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