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まぼろし
「幼日」
誰かに抱き上げられた日のことを
私はずっと覚えている。
(けれど それは 誰に?)
つながった右手と左手、
視線を右に。
見上げた先の顔は黒く染まっている。
(彼? 彼女? 誰だっけ?)
長くのびた影を追い、
走っていく子ども。
その後を追うことは
もう二度と……。
(時は過ぎ去ってしまった )
「見幻」
もやがかかった朝、
湖のほとりに女が一人。
手が白くて、ほっそりとしていて…。
黒く長い髪をたらしていて…。
私はもっと近くで彼女を見たくなり、
近寄るのだけれど、
途端にもやがはれて、
そこにはただ、湖があった。
「幼日」は『東京喰種』の14巻を見ていて、書きたくなったから。
「見幻」は神秘的な女性を書きたくなって、つい。