風誘う日
今日は風が強かった。
自転車漕ぐのも一苦労。
「瞬間的感情」
風が強く吹いた日は
フェンスから手を放したくなる。
砂の海で溺れ、
沈みゆく躰。
最後に見たのは、
光輝く、あの——。
「夜霧」
霧雨の降る日に
傘もささずにそこに立つ。
普段の視界は
ぼやけてにじむ。
私は、
ずっと続いていくものだとばかり
思っていた。
思い込みたかった。
「死者への手向け」
真っ暗な中に
一つの光が灯る。
私はそっと手を伸ばす。
触れた指先がわずかにあたたかい。
廻る熱量、
軋みあう歯車。
最後に目撃するのは
関係のない第三者。
體をくの字に曲げて、
皆、視界から消す。
一時的な逃避にしかならないとしても。
それで報われるものがあるのなら。
夜は雲が消えて、星空がよく見えた。
「瞬間的感情」は【風】から連想していった詩。【砂の海】という言葉は当時気に入ったけれど、別の表現の方がいいかもしれない。【もがく】という意味で違う表現を考えてみようと思う。でもこれは、しばらくこのままで。
「夜霧」の最後は一文足して、【思った】ということを強めてみた。【ずっと続いていくものだとばかり】には、何を重ねていたのだろう。
「死者への手向け」は【熱量】【歯車】と、名詞を使って抽象的にしようとしていた気がする。この二行は自分の体のことを言おうとしていたことは覚えているが、【最後に目撃するのは/関係のない第三者。】の二行は何を指していたのか思い出せない。意味は持たせたはずなんだけれど……。
サブタイには【風誘う】とあって爽快感を感じさせるけれども、内部は暗かった。三つも書いている所をみると、書きたい欲求が強かったんだと思う。全部書下ろしだったんじゃないかな。風を意識して書いたというよりは、風によって引き出されたものを書いた感じ。
―追記日 2017/4/29