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エルフ、砂に生きる  作者: 初荷(ウイニィ)
砂岩窟脱出行
95/196

砂漠の涸れ井戸

二月十四日?

え?何かありましたっけ?知りませんなぁ。


タイトルがネタバレですみません(*ノωノ)



「ヴィリュークが生きているかもしれない!?早く助けに行かなくちゃ!」


ナスリーンがダイアン相手に食って掛かる。しかも頭一つ以上大きいダイアンの襟元に、ぶら下がるようにして揺さぶってくる。


成人女性が体重をかけて首にぶら下がっているようなものだ。


「だからー、入り口が埋まってるんだってば。それをみんなで特定してる最中なんだよぅ」


「んなもんヴィリュークのリディにもっかい探させればいいでしょうが!」


ナスリーンのヒートアップがさらに増す。ダイアンも筋力と体格で耐えるが、揺さぶりは止まらない。


逆にナスリーンは半分懸垂状態で身体が時々浮いてくるほどだ。


「エステルのじゅうたんで飛んだほうが早いんだって!駄々こねるな!」


耐えかねたダイアンは、ナスリーンの腋に手を入れ持ち上げる。


「だったらはやくしてーー」


今度は駄々っ子のように、平手をダイアンの頭に振り下ろす。


”ぺちぺちぺち”


「ナスリーン、痛いってば」


「「「「うるさい!」」」」


作業中の四人から声が上がる。


「ナスリーン、乗せてかないわよ」


鶴の一声。やっと大人しくなったので、ダイアンはナスリーンを降ろした。


「それより入り口まで掘る方法、考えてくれない?」


エステルが手を休めてそう言った。


「え?」


ナスリーンは声を上げ、他の者たちも一瞬手を止めてしまう。


「現地での最終的な位置特定はサミィがいるから大丈夫だけど、砂地を掘るとなると大規模にやらないと崩れ落ちるから」


確かに砂は土を掘るのとは勝手が違う。


「どうするのよ!早く着いても入り口をあけるのに時間がかかっちゃ、意味ないじゃない」


「力技は思いつかなくもないんだけど、大技すぎて。頼むわね」


「そんな……私だって旋風(つむじかぜ)で砂を舞い上げるくらいしか……」


「ちょっといいかね?」


割って入ったのは地図を描いていたラザックであった。


「確認するが君たちが要求するのは、深さ十数メートルの縦穴で間違いないだろうか?」


「その通りよ」


ラザックは返答したエステルを見、さらにその奥にいるダイアンを意識しながら言葉を続けた。


「ちょっとした肉体労働は必要だが、着実に掘り進める手段があるのだが、聞くかね?」






★☆★☆






通ってきた洞窟はほぼ直線で、多少のカーブはあるものの見通しは良好だ。


足元の通路も通るのがサンドクロウラー達だけなので、変な(わだち)もなく凹凸もなくきれいに(なら)されていて走りやすい。


なんてことを言っているが、出だしでは加減を間違えて天井にぶつかったり、天井や壁を擦りながらの移動だったのだ。


それでも慣れてしまえば、水面を石で水切りをするようなステップで走り抜ける。


そのワンステップの歩幅も速度も、流石速度特化の身体強化、いや身体魔装と言えよう。




それでもしばらく走り続けていると”疾風迅雷(身体魔装)”が解除されていく。だが疾駆招来(身体強化)はそのままだ。


どうやら疾駆招来だけなら、維持し続けられる魔力消費量のようだ。


それどころか時間をおけば、疾風迅雷を再度行使することもできそうである。


───どう考えても魔脈に身をさらした影響だ。


前にも似たような感じで死にかけたことがあったが、その度に魔力の量も回復量も成長している。


……成長?いや強制拡張といったほうがしっくりくる辺り、他人には絶対言えない溜め息ものであるとつくづく思う。


他にも自覚していない拡張がありそうで、自分が自分でなくなる感覚に少し嫌悪感を覚えた。


途中、何度かの休憩と仮眠をはさみながら、俺はこの砂岩窟を走り続けた。






★☆★☆






「なんとか救助は望めそうか?」


ナヴィイドの目の前には、今さっき書きあがったラスタハール周辺の最新地図があった。


そしてその南東部に書かれた小さな黒点。


「立てられた救助計画も、まぁ問題ないでしょ。何より砂の精霊の契約者(サミィ)がいるおかげで、精度も労力も限りなく絞れるわ」


「だが、彼女らはちゃんと救助地点に辿り着けるのか?」


ナヴィイドの問いかけに、ヤースミーンは地図を指でなぞりながら黙したが、黒点に辿り着くと叩きながら口を開く。


「仲間がいるから大丈夫だって書いてあるじゃない」


伝達器にセットされている紙には、力強く彼女たちの意思が書き記されていた。


”私たちで絶対に助けてくるので、吉報を待っていてください!”






★☆★☆






まだ闇が濃く、日の気配もない未明。


軽く仮眠を済ませた一行は、ウルリカの手配でラスタハールの門を飛び越えた。


同行人数が多かったため、エステルはいつぞやの様にじゅうたんを連結させて、分乗しての飛行である。


連結させているのは勿論ヴィリュークのそれである。飛行には問題ないので、エステルは担架用に持ってきたのだ。


本来門が開くのは日の出を確認してからで、門や城壁を乗り越えることは重罪である。しかし彼女らの為だけに門を開けるとなると、無用な混乱を引き起こす。


ウルリカは自身で関係各所を回ることで、特別許可を獲得してきた。




「門番の顔、見たか?ウルリカの持ってきた紙をみて首かしげてたけどよ、俺たちが門を飛び越えたら唖然としていたぜ」


「振り返って何見てるかと思ったら……ダイアン趣味悪いわよ。私はもっといいもの見ちゃったわ」


「何見たってんだよ、アレシア」


「飛び越えた瞬間に星空が一面に広がって見えたのよ」


”ふーん”

”へー”

”ほー”


と軽口を叩く二人を、ラザックがつついて合図する。


前のじゅうたんに乗っている三人、エステルとウルリカは前を見据えているが、ナスリーンは咎めるように睨んでくる。


死んだと思っていたヴィリュークの生存を知らされ、思わず浮かれてしまっているが、事態はまだ変わっていない。


「着いたら起こすから、寝ていていいよ。むこうでは力仕事が待っているし」


心なしかナスリーンの声が冷たい。


「お、おう。すまない」


ダイアンを中心に川の字になって三人は横になる。


「ナスリーン」


「……」


ダイアンは構わず続ける。


「大丈夫。あいつのことだ、出口が開いたら飛び出してくるって」


「呑気に挨拶してきそうでいやだわ」


「それは心配料として引っ叩いてもいいだろう」


「……」


「「「………」」」


三人は黙って目をつむった。




太陽はもう天頂に達していた。


朝食はじゅうたんの上で取ったが、昼食はじゅうたんを降ろし天幕を張って、避暑がてら食べる。気温が下がり始めたら再出発だ。


それでも行程は順調どころか、予定よりも距離を稼いでいる。


飛行もエステルとナスリーンが交代で行っている事もあるが、気が急いて速度も上がり気味なのだ。


今回は漠然と飛ばすのではなく、目印のない目的地へ辿り着かなくてはならない。


開発者のエステルからナスリーンへは、彼女のじゅうたんで試験運用されている地図の使用方法を伝達済みである。




二人の目には眼帯が装着されているが、それはいつものエルフの眼帯ではない。


視力強化・視界補助の効果だけでなく、じゅうたんに記録されている地図情報はこの眼帯経由でないと視る事は出来ない。


じゅうたんから地図を投影することも考えたエステルだったが、最適解を求めて眼帯で試験中である。


深夜のギルドで起こした地図は、既にじゅうたんにスキャン済みで収納魔法陣に放り込んである。


今は先日の飛行記録(ログ)を呼び出して、地図に重ねて投影しチェック中である。


「微妙にズレるわね。縮尺なのか精度なのか……ああっもう、見切り発車の魔法陣(システム)じゃ駄目ね。また書き直さないと」


「この精度で許容範囲じゃないとか……職人てのも大概ね」


「それとも別の方法がいいのかしら」


エステルの職人気質に舌を巻くナスリーン。


「どっちを信用するか……両方調べるか……」


”ナァオ”


「うん、頼りにしてるわ。サミィ」


頭をもたげてひと声鳴いたスナネコは、再び丸くなって目を閉じた。




「ねぇ、ナスリーン」


「なに?」


「……ヴィリュークが行方不明になってから、日誌で連絡取ろうとした?」


「え?ぇぇ、まぁ……エステルも?」


「うん、まぁ……」


各々は自分の日誌を取り出すが、ヴィリュークからの返信はなかった。


その日誌には、彼の遭難時の無事の問いかけに始まり、捜索が打ち切られ死亡したと知らされた時の、心中を吐露したものが記されていた。


生存が知らされた今、改めて読むその内容は赤面物である。


慌てて冊子を閉じると、お互いに目が合い、お互いに赤面しているのが分かる。


「返事あった?」


「ない」


「「……」」


「なぜだと思う?」


「暗くて読めないのか忘れているのか、可能性として高いのは地面の下で魔法陣の効果が及んで無いせいかも」


ナスリーンは製作者のコメントを聞き、新たな可能性を示唆する。


「地上に出たら?」


「今まで受け取ってなかった文章を受信するわ」


「「……」」


「何としても回収しましょう」


「そうしましょう」


まともな精神状態でない時の書き込みを、乙女二人は彼の閲覧を阻止することを誓った。






★☆★☆






仮眠から目覚めてうっすらと目をあけると、ちぐはぐな見え方をする。右目はモノクロの通路が映し出され、左目は漆黒の暗闇だ。


こんな長時間エルフの眼帯を使用したことは無いが、身体強化・身体魔装による魔力の欠乏感も今のところない。


本当に俺の身体はどうなったのだろう。魔力量も回復量も異常である。


水袋に口を付けて水分補給をし、空腹感はなかったが干しデーツを口にする。


空腹感を覚えてからの摂取では、タイミングとしては遅い。覚える前に定期的に体に入れるのだ。


口の中でデーツの実を戻しながら、たまってくる唾液を嚥下する。


”ぐふっ”


甘い唾液を飲み下した数瞬後、胃の中身がせり上がり、口腔内がいっぱいにたまってしまう。量が少なかったので、涙目になりながらも鼻呼吸をして吐き出さないように耐え、飲み込む。


そして水を一口あおると、口に残っていたデーツをとにかく小さくなるまで咀嚼、飲み下した。


この程度で胃が驚いて嘔吐するだなんて、やわになったものだ。


胃のむかつきと違和感を感じながら、軽くストレッチし”疾駆招来”。


もう一口水を含み、俺はあとどれくらいの距離とも知れぬ暗闇を走り出した。






★☆★☆






単調ではあったが熱のこもったじゅうたんでの移動は、休憩と交代を繰り返し翌日の昼前に終了した。


広げられた天幕には荷物が広げられ、面々が作業開始を今や遅しと待ち構えている。


砂地には棒が突き立てられ、捜索範囲の目印となっている。


天幕の下では作業前の腹ごしらえの真っ最中なのだが、エステルとナスリーンは食事もそこそこにサミィを伴って掘削地点の割り出しに余念がない。


掘り削るというのも正確ではない。


単純に砂を掘っても、周りから崩れ落ちてくる。ラザックはそれをどう解決するのか。




サミィは自身の能力と砂の精霊を駆使して、ヴィリュークのガラビアがあった砂岩窟の入り口を探していく。


彼女らの能力をもってすれば、硬い砂岩の壁を見つけるのは容易いものであったが、その入り口を見つけるには地道に辿るしかなかった。


尻尾をくゆらせながら歩いていたサミィ。突然その動きを止めとかと思うと走り出す。


『なぁぉぅ「ここ!」』


一鳴きして尻尾を立てると、直径二メートルほどの範囲の砂が沈み込む。


それだけではない。


縁に走ると一ヶ所に前脚をふるって目印を付ける。


『にゃあ「入り口!」』


エステルとナスリーンにかけられた鳴き声に、二人は顔を見合わせてうなずき合う。


「ラザック、出番よ!」

「早くやってちょうだい!」


その声にラザックだけでなく他の面々も、慌てて口の中身を飲み込んで立ち上がった。






「あらかじめ聞いてはいても信じられなかったが、これを見てはなぁ」


円を描いて沈下した砂を見て、ようやっとラザックもサミィの実力と能力を信じ始めたようだ。


「君らのぺ……、マスコットはお飾りじゃなかったということだ」


ペットと言いそうになったラザックであったが、何とか当たり障りのない言葉に言い直す。


「マスコットでもないぞ。仲間だ」と、すかさずダイアン。


「はっはっは。では私も仲間に入れてもらえるよう、頑張らなくてはな。よし、手伝ってくれ!」


小男は自分より背の高い女たちに指示を出していく。




ラザックは自らの付与背嚢から次々と土嚢を取り出すと、円の周囲に並べていく。


その後ろから女たちは土嚢の口を開いていき、円の内側にはシャベルと土嚢用の空の袋を山積みにする。


「さて始めよう」


ラザックは魔力を込めて唱える。


「■■■ ■ 土よ、形造れ」


ダイアンとアレシアにすれば何度も見た光景。土がラザックを中心に円を描いて這いずり、高さを増して円筒を形作る。


「■■ 硬化 」


シュッと抜ける音がして水蒸気が上がり円筒が締まった。


サミィの描いた円の内側にできたのは、井戸の中枠であった。


「さぁ力仕事の時間です。水分補給はマメにすること。いいですね?」


小男は得意げに胸をそらしたが、円筒に隠れて頭しか見えなかった。





「■■■ ■ 土よ、形造れ」


ナスリーンはラザックの詠唱を目の当たりにして、あきれ返ってしまった。およそ適当で自己流な術式で、あれでは当人しか発動できないだろう。


小男を天幕の下まで引っ張っていくと、早速術式を細かく聴取して書き取っていく。


改めて紙に起こしてみると、他人が詠唱しても発動できないのも理解できた。というより、失敗なく発動できるラザックのほうがおかしい。


ナスリーンは小男を作業場に戻し、自身は術式の改良を始めた。




円筒の中では、ダイアンとアレシアそしてサミィが作業している。


アレシアがシャベルで袋に砂を詰め、ダイアンは封をして付与背嚢に詰め込んでいく。


特筆すべきなのはサミィの働きぶりだ。


尻尾を立ててひげをふるわせると、円筒の下の縁から砂が盛り上がっていく。


盛り上がるにつれて、今度は円筒が沈降していく。つまり、サミィは円筒の下の砂を内側に移動させ、円筒を自重で沈めているのだ。


地上ではエステルがラザックをじゅうたんに乗せて、井戸の真上を浮遊している。


ラザックはじゅうたんのおかげで円筒の中心にいる事ができ、円筒を延長するにも外周を回る必要はなくなった。だが緩やかに沈んでいく円筒の延長に必死にならざるを得ない。ここで自己流術式の燃費の悪さというツケが来た。


ウルリカと言えば土嚢の土の補充と、付与背嚢で運ばれた砂袋を空けて下に降ろしている。


もちろん背嚢の上げ下げは、じゅうたんの牽引フックが活躍している。


エルフのじゅうたんの機能拡張性は相変わらずであった。いや、エステルの拡張の結果ともいえるのだが。






そうこうしてると疲労もたまるので休憩をはさんでいくと、役割が入れ替えられていくところもある。


「■■ ■■ 土よ、我が意に沿いて形を変えよ」


じゅうたんの上で詠唱しているのはナスリーンだ。


彼女の術式改良の結果、能力を満たしていれば誰でも使える術となり、今は円筒が作られているが魔力が足りていれば土塀や土塁も思うが侭なものになった。


”シュッ”


もちろん硬化も組み込んである。


誰でも使え応用の利く魔法となったのだが、悪用を心配すると気軽に公開できない魔法となった。もっとも応用を利かせるには、相応の実力がいるのだが。


だが応用を利かせられる人物が、じゅうたんを飛ばせているのは言わずもがな。意外と実力者はそばにいた。


ナスリーンとエステルは、交代でじゅうたんと円筒を担当していく。




円筒の底ではダイアンとラザックとサミィ、交代でアレシアとウルリカが出入りしている。


底の者達はひたすら掘り下げていく。


小さなサミィの負担が重そうに見えるが、そこは砂の精霊に頼んでいるので消耗は少ない。自らの属性に働きかけるのだから、砂の精霊にとってはどうということはないのだ。


また小男とは言っても、ラザックも肉体労働が多く筋肉質である。体の小ささが幸いして、ダイアン(大女)と次々砂袋を作り地表へ搬出している。


それどころか他のものがいると、やり難そうにするのはいかがなものか。


出入りしているアレシアとウルリカは、円筒から離れた位置で砂を捨てていく。


合わせて土嚢の口を開けて、じゅうたん組の魔法の材料が途絶えないように余念がない。しかしその材料もとうとう残りが無くなりそうである。


危機感を覚えたところで、円筒の底から声が上がった。


「もう深さはいいってよー!」


ダイアンの大声が響いてきた。





背嚢やら砂袋を片付ければ、直径二メートル程の場所にヒトが六人入ることは難しくない。


円筒の壁が割れる危険も考慮して、ナスリーンが短時間ながらも強度強化を付与しながら降りてきた。


じゅうたんのフックの他に、縄梯子も設置してある。


「では開通と行こうじゃないか。開ける方向はこちらで間違いないね」


「にゃーん『こっちよ』」


ラザックにはサミィの鳴き声しか聞こえなかったが、カリカリと爪を立てていたので正しい方向と理解した。


そして腰からナイフを引き抜くと魔力を込め、円筒に逆Uの字を書いてから中心に突き立てた。


するとそこだけ術式が解除されたのだろう。


ただの土塊に戻ると、中に砂が雪崩れ込んできた。


「わ、わ、わ!」

「え、なんで?!」

「ちょ、まっ」


数名から声が上がったが、生き埋めになることは無く上の隙間からは内部の空間が垣間見えた。


円筒の位置は正確で、入り口を擦るように円筒は降りてきていたのだ。


入ってきた砂は入り口に堆積していたもので、二・三度の付与背嚢の上げ下げで、邪魔をしていた砂は無事排出された。






「光よ」

「灯りよ」


薄っすらと壁が光っていたのだが、エステルとナスリーンがそれぞれ系統が違う術式で通路をさらに照らす。


通路は人工的な四角いものではなく、足元の隅も天井の隅も湾曲しており、砂岩と思しき通路の壁はなにかでテラテラと艶があるのは何だろうか。


「ヴィリュークは?」


ぞろぞろと内部に入るがそこには救助対象はおらず、その先は延々と暗闇が続いていた。


「「ヴィリューークーー!!」」


ナスリーンとエステルが声を合わせて呼びかけたが、その呼びかけは反響空しくすぐに消え去った。






★☆★☆






何か聞こえた気がして急停止する。


風切り音で他の音など聞こえるはずもないのに、慣性で通路を滑りながらも停止したのだが───何も聞こえない。


出発してからどれくらいたったのか。身体の感覚では二日くらいだが、それもどこまで正確か怪しいものだ。


何回か補給を取ったが、繰り返すにつれ嘔吐感は軽減されてきたのは、慣れなのか馴染んできたのか良く分からない。


額に噴き出す汗を拭い、水を一口。


そして不安と期待を胸に、魔力を纏わせて再び走り出した。




あともう一話の予定です。


お読みいただきありがとうございます。

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