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エルフ、砂に生きる  作者: 初荷(ウイニィ)
森エルフ、砂エルフ

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77/200

幕間:巣立ち



あれだけ広かった巣も、今となっては窮屈で仕方がない。


それもその筈。


親が二頭に、巣立ち間近の子供が二頭。


親たちは昨日から餌を取ってきてはいない。子供たちは自らの空腹を満たすため、旅立たねばならないのだ。


しかも体力がある内に旅立たねば、狩れる獲物も狩れ無くなってしまう。




さらに一日経過した。


親たちからは、今まで貰っていた餌の臭いがプンプンしている。自分たちだけ食べて、子供たちに分け与えるつもりはないらしい。


子供の一頭が巣の縁にやってきた。


崖の中腹に作られた巣は、陽が昇るにつれ上昇気流が発生する。


もう一頭の兄弟と餌の取り合いで勝ってきた彼だ。親には劣るが兄弟より大きく成長している。


巣の縁をしっかり掴み、翼を大きく広げて、二度三度羽ばたいてみせる。


親が巣から飛んでいくさまは何度も見ている。


彼は翼を大きく広げて飛び出した。




翼を広げたら、むやみに羽ばたかない。


眼下の森に向かって滑るように下降していく。


すると翼が何かをはらんだ。無意識のうちに頭をもたげると、自然に身体も持ち上がっていく。


なにかが身体を漲っていくが、彼はそれを魔力と理解することもなければ、それを行使して飛行の補助もしている自覚していない。


そう、一々意識などせず、生まれ持った力を(ふる)っているに過ぎない


結果、彼の身体は落下から上昇へと転じ、すぐさま広げていただけの翼を力強く羽ばたかせると、ぐんぐんと上昇し速度も増していく。


なんと気持ちがよいものだろう!


彼の頭からは先程までくすぶっていた巣の事などふっとび、振り返ることなく彼は飛翔する。


今日、彼は巣立っていった。






骨を砕き肉を咀嚼する音が響く。


苦労の末、彼はようやっと獲物にありつくことが出来た。


彼の体躯からすると、中型以上の動物でないと腹の足しにならなず、数度の失敗を経てようやく鹿を仕留めることが出来た。


あれから空を飛ぶことが楽しくて飛び回っていたが、地上を走る動物を見て空腹を思い出しての狩りだった。


多少の小骨はかみ砕いて飲み込むが、大きなものはしゃぶって吐き出す。


久しぶりの食事に、可食部は余すことなく腹に入れた。


”ごふっ”


がっついて食べていたのでげっぷを一つ吐き出すと、辺りは日が傾き始めているのに気付く。そろそろねぐらを探さねば地上で寝る羽目になってしまう。


今や身体には力が巡り、地上からの離陸も容易いものだ。


どこかの山肌に休める場所はないものか。そう考えていると、彼方に夕日できらめいている場所が見えるのに気付いた。


初めて見る湖であったが、それが何かと彼が理解するにはまだ先の話。


好奇心を刺激された彼は、明日確かめてみようと思った。


口元の鹿の血を長い舌でべろりと舐め、夕日に身体の鱗をきらめかせながら、彼はねぐらを探しに飛び立った。





話しの流れで分割しました。本日もう一話投稿いたします。



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