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エルフ、砂に生きる  作者: 初荷(ウイニィ)
森エルフ、砂エルフ
74/196

複合弓

話しのネタとして「弓弦」を出しましたが、掘り下げて「弓」や「矢」までやり始めると細かくなりそうなので、適当な所はご容赦ください。



ヴィリューク達三人の視線に、ミューシャ達は居心地を悪くする。けして嫌悪や好奇の視線ではなく、単純に”誰?”という疑問のそれであったのだが、ミューシャがその場を流せなか


った為、自己紹介することとなった。


「村で弓師をしてます、フレッドと言います」


「ヴィリュークだ。弓氏?古い言い回しだな?何か思う所があるのか?」礼儀として鋳掛屋師弟も名乗っている。


「いえ、違います。弓を射る(弓氏)方でなく、弓を製作する(弓師)方です。流石にうちの村でも弓氏とは言いませんよ。弓兵とも猟師とも違いますから……射手、ですかね?」


「ふむ……で、ミスリルシルクの弓弦か。贅沢だな、うちは麻ばかりだ」


「いつの季節も若干の出来の悪い物はあるからね、色味とかではじかれた糸を集めて弓弦に加工するの。弓弦なんか個人の好みや使い勝手じゃない?ミスリルシルクの弓弦を使う人は矢


筈のフィット感が違うとか色々言うけど、私には違いがよく分からないわ」


「ともあれ需要があるので、ミューシャ達に撚ってもらって、加工は間借りさせてもらってる自分がしているのです」


ミューシャの答えにフレッドの補足説明が加わっていく。




エルフの短弓は規格が定まっているので、弦も数種類作り置きしておけば問題ない。


しかし凝り性の者はどこにでもいるものだ。


既製品からの改造(カスタム)程度は良くある話で、個人専用の物を単品製作(ワンオフ)依頼してくる輩もいたりする。


この場合、専用化された弓は手入れや消耗品の入手が面倒になる。


弓弦一つとっても、長さや強度を妥協しないで作った場合、何かあった時に同等の物の再入手は困難になる。(流石に使用する矢の規格には合うように製作する)




普通は麻糸に(にかわ)等で処理した弓弦が使用されるが、この村では選択肢が多く、麻・シルク・ミスリルシルクと素材が分かれ、当然ながら弓の強度で太さも変えて作られている。



誰しも麻・シルクの弓弦から練習を始めるので、上級者になっても使い慣れたこれらを愛用する者が多い。


しかしこれらは当然、使用前・使用後に薬煉(くすね)と呼ばれる補強材で手入れが必要になる。そして薬煉(くすね)は滑り止めとして手にも塗布する。


手薬煉(てぐすね)を引く:十分に準備をして待ち構える───語源はここからきているのだ。


「シルクと弓矢関連、これらがうちの村の基本商品ね」


「あとは持ち回りで森の衛士をやってるくらいかな。本業のヒトもいるけど手が回らなくてね」


周知の通り、森あってのエルフである。


砂の民が砂漠から多くの恵みをもらっているように、エルフも森から沢山の物をもらっている。


そのため彼らは、じゅうたんで空から見回るだけでなく、徒歩で森を哨戒していくのだ。


その姿を見て他の種族はエルフの事を”森の守護者”と評したりするが、彼らは”そんな大層なものではない”と否定する。


”衛士”や”レンジャー”と評する分にはいい。しかし彼らを”野伏”(のぶし・のぶせり)とは呼ばないように。


農民による落ち武者狩り集団が語源のこの言葉は、地方によっては”ハイエナ”や”死肉あさり”といった蔑称と等しくなる。


山野における小規模戦闘集団や修行僧のことも指すのだが、そういった者たちが殆どいないこの地方では、蔑称と認識されても仕方ないのかもしれない。


「俺も街にきたての頃は、酒場でそう呼ばれて喧嘩を吹っ掛けれられたもんだ」


「ヴィリュークさん相手に……」

「街って怖いのね」

「ふん、黙ってた訳ではなかろう?」


「そこは”お話合い”だ。最後には謝罪してくれたよ」


「……肉体言語とか言うまいな?」


ゴダーヴの問いかけにヴィリュークは笑みを浮かべるばかり。


その場に居合わせた者たちは、黙って共通の認識に落ち着いた。






「おう、いるかい!!」


ミューシャにとっては本日三度目の客からの呼びかけに、あからさまに眉をしかめる。しかし無視はしないで返事を返す。


「はーい」明らかになげやりな返答。


ザッザッザッ


返答前から中に入ってくる足音がする。


それは全く気を使わない足運びで、森で物音一つ立てないそれと対極にある乱雑なものだった。


現れた(エルフ)はエルフの平均よりも背が高く、細身でありながら筋肉質。シャツから覗く二の腕の筋肉も隆々と、弓を引いた時にはシャツの上から大胸筋が浮き出すのも必至である。


そして第一声は不躾な物であった。


「おう、ミューシャ。相変わらず別嬪だな」


「来客中よジェラルド。遠慮して」


「あ……ジェラルド……」


「アンナもいたか。元気か?」


「あんたアンナに対して扱いがぞんざいすぎるわ」


「そういっても俺達にとっちゃこれが普通だぜ」


「あんたのとこは置いとくとして、私は許嫁がいるんだけど?」


先客そっちのけで言い合いを始めてしまう二人に、アンナとフレッドが割って入るが全く収まらない。


当然客の三人はおいてけぼりだ。






「あと一勝でこっちの勝ちだな」


「気が早いわね?次勝てるとは限らないでしょ!」


「いくらじゅうたんの腕が良くても射手が問題じゃぁなぁ」


「あんたなんか他人(ヒト)よりちょっと強い弓が引けるだけでしょ!調子に乗ってると足元すくわれるわよ!ウチが勝てないのはね!あんたンとこの操者が凄いせいよ!」


「はぁ?何言ってるんだ?的を射抜けられなくちゃ勝てないんだよ!どれだけ操者の腕が良くても、結局は射手の腕がなくちゃ始まらねぇって。分かってないなぁ、おい」




いきなり始まった言い合いに、ヴィリュークがゴダーヴに耳打ちして訊ねる。


「何かを競い合ってるのは分かるが、何なんだ?」


「来るときに湖でじゅうたんを見たじゃろ?二人一組でじゅうたんに乗って、コースを速く飛んで的を射て競い合ってるんじゃ」


「あれか……ミューシャの方が負けが込んでるみたいだな」


「みたいじゃな」




「そう言っていられるのも今年までさ。これで俺の実力が証明される」


「うっさい、今回はウチが…フレッドが勝つし!負けたらなんでもしてあげるわよ!」


「はっはっは、気が強いところも嫌いじゃないがどうすっかなぁ?ははっ、じゃぁな」


言うだけ言って立ち去るジェラルド。


「ミューシャぁ……」


「ぁぅ……ごめんアンナ。勢いでっていうか、売り言葉に買い言葉というか……ってフレッド!なんで何にも云わないのよ!」


「あ、いや……」


「負けてもいいの?取られちゃってもいいの?!」


「そんな話にはなって…な…い…」


「もう知らないっ」


足早に立ち去るミューシャ。口元をきゅっと引き締めて沈痛な面持ちのフレッド。


「あ、おれ、作業に戻らないと」しばし立ち尽くしていた事に気付き出ていこうとしたが、間口のところで戻って来たジェラルドと鉢合わせになる。


「……」

「……」


「弓弦、いいか?」

「……ん」


ジェラルドは輪っかに束ねた弓弦を確認し懐に収め、財布から金を勘定してフレッドに黙って手渡すと黙って背を向け立ち去ろうとする。


しかし戸口で立ち止まり振り返ると、アンナとフレッドに一言。


「じゃぁな」とジェラルドは”物音一つ立てず”立ち去って行った。




「何がどうなってる……それにがさつかと思えば妙に律儀だな」


「よくわからん男じゃ」


事情を聴くのも憚られたので、三人は挨拶もそこそこにここで辞する事にした。






あと三日。


ミスリルシルクの引き渡し日まで三日も時間を潰さねばならない。


とりあえずヴィリュークはギルドの紹介で宿を取ったが、暇の潰し方に頭を悩ませてしまった。


しかし部屋で(くすぶ)っていても時間は遅々として進まない。


仕方ないので貴重品を収納鞄に入れて担ぐと、村をぶらつくことに決めた。


入って来た門は湖側だったので、反対側の道を散策だ。旅の間リディに乗りっぱなしだったので、周りを見渡しながらゆっくりと歩を進めていく。




タンッ…


タンッ…


一定間隔で音が聞こえてくる。


聞き覚えのある音を辿っていくと、村の外れに来てしまった。


二メートルほどの塀の向こうから聞こえてくるのは矢が的に当たる音であった。


興味を引かれ塀沿いに歩いていくと、開けっ放しの門に辿り着いた。


そのまま中を覗くと、射的場に立つ痩せぎすな姿と彼方に的が見える。




ノースリーブのシャツからは脂肪も無く少ない筋肉を隆起させた腕が、珍しい形状の弓を引き絞り放つ。


引き絞り、放つ。


引き絞り、放つ。


三連射して矢筒の中身が無くなったのを見計らって、ヴィリュークは声を掛けた。


「やぁ、お邪魔する。───面白いのを使ってるな」


「あ、さっきの……」


フレッドは近くに放り投げてあった長袖シャツを手早く着込む。シャツ一枚では礼儀に反する……とも違うようだ。






筋肉量が足りなくとも威力を発揮できる短弓(ショートボウ)の素材が日々研究されてきた背景の一つとして、エルフの種族的特徴が華奢であるということが挙げられる。


ここの(あるじ)は特に痩せていて、筋肉は付いているのだが大変薄い。


脂肪もついていないので輪をかけて貧相な体つきなのだが、だぼっとした服ばかり選んでいるのはコンプレックスを隠すためであろう。


その彼が弓の練習をしているのだが、その形状がこれまたおかしい。


通常エルフの弓は短弓・長弓の差こそあるが、弦を張って横から見ると基本弧を描いている。ヴィリューク所有の出番のない弓もそうだ。


しかし彼の弓は横から見ると「Σ」を縦に伸ばしたような形だ。




「試させてもらってもいいかい?」


しかしそこはエルフの血なのか、目新しい弓を前にして好奇心が疼いてきているようだ。


「どうぞ」


手渡された弓を右に左に角度を変えて確認していくと、左手で握り締め、右手を弓弦に掛ける。


フレッドに視線で確認を取ると黙って頷くので、そのままゆっくりと力を加えて引き絞るが、身構えていた以上に軽い。

「ほう……一本いいか?」


「では、これを」フレッドから一本矢を受け取ると、番えてから”ひょう”と放つ。


過剰な力で引かない様に気を付けたのだが、想像以上に手応えがない。


”とん”


ギリギリ的に当たった。


不本意な結果とヴィリュークの表情を読んだのか、フレッドは矢筒を差し出し目くばせすると、”いたみいる”とばかりに苦笑してヴィリュークは受け取った。


だが受け取った矢筒を、背負うか腰に下げるか逡巡。数瞬後には背負って構えに入った。




先程は弓を垂直に立て、弓に対して外側から矢を番えていた。


今回は垂直ではなく末弭(ゆはず)(弓弦を掛ける上端のこと)を外側へ浅い角度で寝かして構え、右手はだらりと脱力させる。


───一息吸い止めると同時に右手が矢筒に伸びる。


筒から抜いた矢は寝かした弓の上に乗り、引き絞られ、放たれた。


それを三連射。時間にして二秒で三連射、全て的中。


”ぱちぱちぱち”


「最初の一本をいれたら皆中ですね。お見事です」


「なんとかなっただけだ。俺にはちょっと柔らかい弓だが通常の弓と遜色ない。この形に秘密が?」


ヴィリュークが弓を差し出すと、受け取りながらフレッドがはにかんで答える。




「限界まで伸ばされて戻る力と限界まで縮められて戻る力を組み込んだ弓、これが複合弓(コンポジットボウ)なんです。


限界というと語弊がありますけど、元々父が試行錯誤していた物なんです。それを引き継いでここまで来るのに大分時間がかかりました。


オリジナルは乾燥した地域の弓で基本形は出来ていたのですが、湿気の多い湖畔(ここ)で使える素材や異なる素材の接着剤とかの研究に手間取ってしまって……


でも!間に合いました!非力な僕でもヒト並み以上の威力を出せる弓が完成したんです!これでジェラルドと互角に競えるようになったんです!」


さっきまで顔も知らなかった相手に突然捲くし立ててしまったフレッドは、”しまった”という表情になってしまう。


「何か事情があるのか──いや、言いたくなかったら言わなくていい」


「いえ、村の皆も知ってることですし、切っ掛けもくだらない話ですよ」


フレッドは訥々と話し始めた。






元々の付き合いは、ミューシャとアンナの二人だった。家が近所と言う事もあり一緒に過ごすことが常であった。


そこへミューシャの許嫁としてフレッドが加わったのだが、大人しく優しい性格と言う事もあり、一緒に遊ぶ人数が増えただけのよくある光景に。


つまりミューシャが先頭に立ち、アンナが付いて行き、フレッドがフォローするという輪が自然と築かれていった。




月日が流れ成長していくにつれ、子供たちは大人から弓を習い、じゅうたんの操縦も教わっていく。


弓は一人一張、じゅうたんは一家に一枚が平均的なエルフの家庭である。


女の子が生まれると母親はじゅうたん織りの依頼を出し、デザインを模索し始める。許嫁が決まるとじゅうたん職人に知らされ、結婚式の日取りが決まると職人は納期に追われる日々を過ごすのだ。


しかし今や森エルフのわずかな集落に残る風習で、現在では廃れつつあるものであるが、この村ではミスリルシルクを生産しているおかげもあり、競技会も相まって現在も連綿と続いている。




競技会。


エアレースとも称されるじゅうたんと射撃を競うこの競技は、この村での娯楽でもある。


夫婦でコンビを組む者もいれば、子供が家のじゅうたんで練習する者もいる。新品のじゅうたんを持ってくるのは新婚夫婦だ。


子供がいい年頃になると、親は子供にじゅうたんの使用権を譲る。エアレースは相手のいない男女がアピールする、絶好の機会なのである。


フレッドとミューシャの関係は周知の事実だったので、ミューシャはフレッドとではなく、アンナとエアレースに数度出場した。


勿論フレッドと飛ぶことも忘れてはいない。練習でも一緒に飛ぶという事実は重要なのだ。




大人しく口数少ないアンナであったがその頃は既に工房で働いており、真面目な仕事ぶりや仕事の腕前、時折見せる笑顔が好評で、隠れて人気があった。


数回のミューシャとアンナの出場後、フリーの男が何人かアンナに声を掛けてきたが、ミューシャの奮闘のお蔭で悪い虫は(若干の濡れ衣もある)撃退。


そこを乗り越えてアプローチを敢行したのがジェラルドである。


その当時はまだ森の衛士見習いであったが、徐々に頭角を現し、今では小隊のリーダーを務めるまでになっている。


そのジェラルドが一回追い返されただけで諦めるはずもなく、何とかミューシャのお眼鏡にかなうと、アンナと一緒のじゅうたんで飛ぶまで然程(さほど)時間は掛からなかった。




「それまでいい関係だったんですが、八年前のエアレースの時です。ジェラルドとミューシャの喧嘩が始まったのは……」




八年前のエアレース。その頃にはもう、それぞれのペアでじゅうたんに乗っていた。


フレッド・ミューシャのペアが平均的な順位だったのに対して、ジェラルド・アンナペアは毎年順位を上げて行き、その年は優勝候補の一つに名を連ねるほどになった。


そして毎年新しくなるコースを前に、ジェラルドが”今年こそは優勝”と意気込んでみせる所までは良かった。


そこで収めておけばいい物を、つい彼はフレッドに言ってしまったのだ。


「お前もしっかりしないと可愛いミューシャを取られちまうぞ。いや、見限られるかもしれん」


「いやぁ……がんばるよ……」力なく”あはは”と笑うフレッドだったが、彼からすれば大人しいフレッドはもどかしくて堪らなかった。


「がんばるよじゃなくて。お前その調子でミューシャを守れるのか?俺はアンナを守る自信、あるぞ」


「うん……今回の弓は結構な出来なんだよね。筋肉は相変わらずだけど……」


「へらへらしてんじゃねぇ!じゃあ賭けるか?」


ただ彼を発奮させたいが為の冗談だったのに。


「俺が優勝して、お前が去年より順位を上げられなかったら」


「上げられなかったら?」


「ミューシャを貰う。アンナが嫁一号でミューシャが嫁二号だな」


よその種族ならいざ知らず、エルフに重婚の制度はない。浮気や妾もなくはないが、大っぴらにするものでもないし、良い目で見られないのはどこの種族も同じである。


「ちょっとジェラルド」

「ジェラルド、あんた」


当然抗議の声が上がる。


「それ位の気概を見せろって言ってるんだ。お前が順位上げられなくても、俺が優勝出来なかったらこの賭けは無しだ」


だが三人はジェラルドが優勝を目指して日々努力をしていることを知っていた。そして今までで一番充実していることも。


「分かった。やる」


フレッドの普段見せない顔つきと返事に、ジェラルドは一言「よし」と答えた。




結果は思いもよらぬものだった。


フレッド達はジェラルドの言葉に発奮し、操者ミューシャ・射手フレッドは自己ベストを更新した。


しかし、その年は他のじゅうたんも好成績で順位は変わらず。


二人の結果を見て手を抜くジェラルドではない。順調に勝ち進み決勝まで残った。


相手は昨年の優勝ペア。しかも何回も優勝を経験しているペアだ。誰しもジェラルド達の優勝はないと見ていた。


だが挑戦者の猛追に昨年王者は最後の的を外してしまう。


挑戦者の矢はギリギリ的の端に。それでも当りに変わりはない。


二枚のじゅうたんは最後の矢の結果を確認せず、同着でゴールを突き抜けていった。




同着の場合、的中枚数の多い方が勝利である。的の端でも当りには変わりない。


ジェラルドペア初優勝。


歓声の中、当の本人は困惑していた。


その表情を、周囲の者達は初優勝で実感がわいていないのだと好意的に見、祝福の言葉を掛けていった。




祝賀会の夜。


四人集まった席で、ジェラルドは無理のある強引なセリフを口にする。


”あんな優勝の仕方じゃ賭けの要件を満たしていない”


”僅差ではなく、ぶっちぎりの優勝でないと賭けは成立しない”


”それまで勝負は預けておく。来年また勝負だ”


勝ってしまった賭けを何とか受け取らない様に難癖つける勝者の姿がそこにあった。






その後フレッドもミューシャも腕を上げて行ったのだが、弓師フレッドは他の参加者の弓製作に手を抜くはずもなく、ジェラルドもレースで全力で挑む。


操者の二人もいい加減けりをつけたいのだが、レースで手を抜くことも許されず、どこかで妥協しあって手打ちにしたくとも着地点が見つからない。


その結果、年を追うごとに賭けの条件は抉れに抉れ、捻じれに捻じれていく。全てジェラルドとミューシャが成り行きで言い争った結果だ。


現在の条件、それはフレッドがジェラルドに勝つこと。


もはや賭けにもなってはいない。単純な勝負。今年の勝者は望みを一つ宣言し、負けた方はそれを叶える。






「弓は……間に合いましたが、僕のじゅうたんの調整は……。今回もミューシャので出ることに……」


「ん?彼女のではだめなのか?」


「駄目ではないです。バランスがいいので飛ばしやすいじゅうたんなのですが……」


「言わんとすることは分かった。で、お前さんのじゅうたんは?」


「えー…何と言いますか……」


「歯切れが悪いな。本職ではないが素人より分かるつもりだ。どこにある?」


尻込みしているフレッドをせっつくヴィリューク。久しぶりにじゅうたんを飛ばせるかもしれない機会に、居ても立っても居られないようだ。







ライバルを悪役に出来なかった(ごふ

文才が無いのはいつもの事です(ノД`)・゜・。


ギミック書いてる方が筆が進むしなぁ……



エルフの持つ弓って洋弓だよね?でも単純な弓から試行錯誤して和弓も作り出していても不思議でないけど、複合弓はどうだろ?


けど流石のエルフさんもロングボウは作ってないと思います。イングランドの弓兵は、この剛弓の引き過ぎで右手が長い遺骨が発掘された程だそうです。


お読みいただきありがとうございます。

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