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エルフ、砂に生きる  作者: 初荷(ウイニィ)
森エルフ、砂エルフ
73/196

ミスリルシルク


村は害獣除けの石混じりの土塀で囲われており、街道から見ると中々立派である。


高さは二・三メートル程もあり、近隣の治安に対して過剰な警戒ぶりである。


「すごく頑丈そうな壁ですねぇ」


「なんでも、相当昔のシロモノと聞いたことがある。しっかり作られてるせいで、手入れもたまにする位で大丈夫だそうだ」


鋳掛屋師弟の会話を聞きながらヴィリュークがリディを進ませていくと、門番達が待機所から現れる。もちろんエルフだ。


「あれ?こっちのエルフはヴィリュークさんみたいな肌の色ではないのですね?」


セウィムが早速違いに気付いた。


「こっちのエルフは付与されたエルフの耳飾り()を付けてないのだろう」


答えたヴィリュークの肌は、いつもの様に褐色に変化している。


その彼は今でもガラビアを着ている辺り、砂漠の装備品から切り替えるつもりはないらしい。


門の手前で馬車群が停止すると、それぞれの馬車主が門番達とにこやかに話し始める。顔見知りなのだろう。


それに合わせて、幌馬車の中にいた者たちも姿を現していく。


どうやら入村するヒトを記録している模様である。


確認も直ぐに終わり、馬車は車輪の音を響かせて門を通過していく。


その際にヴィリュークは視線を感じて反応した先には、にこやかな門番達の中に一人無表情の者を見つけた。


一々気にはしないで通過していくと何やら呟いたように見えたが、その呟きも馬車の音にかき消されて彼の耳には届かなかった。


”砂エルフ……”






馬車は連なって進んでゆく。


村に着いたら、何はともあれギルドへ到着報告を済まさねばならない。


先頭のゴダーヴは道を知っているのだろう。手綱を握っているセウィムに指示を出している。


程なく馬車を回すスペースを備えた建物の前に到着。脇には馬を繋ぐ柵も備えている。


馬ではなくリディであったが、ヴィリュークは柵に手綱を結わえていく。




ギルドの扉をくぐると、カウンター内には女性職員が三人ほど待機していた。


受付カウンターに一人やってくるので、隊商の面々がタグを取り出して順番に到着報告を済ませていくと、ようやくヴィリュークの番が回って来た。


「宜しく頼む」


「あっ、はい」


ヴィリュークの服装や肌の色が珍しいのか、見入っていた受付のエルフはハッとして手続きを始めていった。


その後ろの職員たちなど頭を突き合わせて何かを喋りながら、ヴィリュークを品定めしているようだ。


何時の時代も余所者の来訪は、良しにつけ悪しきにつけ、退屈な村の話題の一つとなる。


ヴィリュークが後ろの二人に視線を向けると、”キャッ、こっち見たわ!”と反応がかえってくる。


依頼があればどこにでも行く配達人である彼にとって、さして珍しくもない反応であったが、受付のエルフが話しかけてくる。


「あ、あの、手続き終わりました。それと、なんというか、ごめんなさい……」後ろの同僚の遠慮ない反応に、おどおどと小声で詫びて来た。


その珍しい反応にヴィリュークは一瞬戸惑ってしまう。


思い返してみれば自分(ヴィリューク)の周りにはがさつ……もとい、明るく快活な女性が多く、このような大人しいのは珍しいと思いながら───


「いや、気にしていない」と一言返答し、ついでに道を尋ねてみる。


「ミスリルシルクの製糸工房へはどう行けばいい?」


「それでしたらご案内します。私もあちらに行かなくてはならないので」


そう言って女性職員がカウンターをぐるりと回って表に出てくる。


”キャー、アンナったら積極的~”二つの黄色い歓声が響いて来る。


”バカ!違うったら!この方に失礼でしょ!”大人しそうに見えても否定する元気はあるようだ。


「ありがとう」


背が頭一つ違うので見下ろしながら礼を言うと、それに反応して見上げてくるので正面から視線がぶつかってしまう。


アンナは”ご案内します”と自然に視線をそらして先導するが、ヴィリュークが後ろから見下ろすと、彼女の耳がゆっくりと赤くなっていくさまが観察できた。




「遅いぞ」


そこにはゴダーヴ達が馬車で待ち構えていた。他の商人たちはそれぞれの取引先に向かい、護衛達は宿へ行ってしまったそうだ。


「む、アンナ。どうした?見送りか?」


「い、いえっ。”仕事ついでに”製糸工房までご案内しようかと」


「(そんなに強調せんでも)じゃあ、お前さんも乗っていけ。わしらも丁度行くところだ」


「なんだ、顔見知りか?」


ヴィリュークの問いかけにゴダーヴが首肯する。


「これからいく工房のヒトだ。機織りもやっててな、防具にミスリルシルクの内貼りする時はこのヒトのをいつも使っている。セウィム、こっちつめろ」


アンナが座れるようにセウィムが慌てて場所を空けると、するりと入ってくる。


「ありがとうございます。あ、道はあちらです」


アンナの指差す方向にセウィムは馬を向けるが、これまた手綱捌きがぎこちない。


ヴィリュークは小さく肩をすくめると、リディに馬車を追わせていく。




挨拶もそこそこに、ゴダーヴは工房の様子を伺う。


アンナも顔見知り相手だと話しやすいのだろう。おどおどした様子もなく道案内をしながら受け答えし、ヴィリュークと言えば初めて訪れた村の様子を眺めていくのだが、たまにすれ違う村人から向けられる好奇の視線など物ともせず、リディを進ませる。


その中で一番年若なセウィムが、視線に居心地の悪い思いをしてしまっても仕方ないだろう。




「お客様連れてきましたー」


案内された工房は作業中だったようで、作業音はするがアンナの声に返事は帰ってこない。


「はーい」音が小さく変化していくと、ようやっと女性の声が返ってきた。切りの良いところで手を休めたのだろう。


「はい、こんにちは……ってお久しぶりゴダーヴさん、あと新顔さんが二人ね」


「おう、工房の(あるじ)自らとは。ミューシャも元気そうじゃな。紹介しよう、鍛冶屋(うち)のとこのセウィムと──」


「ヴィリュークだ。ギルドの配達人をやっているが、今回は護衛と買い付けに来た」


セウィムの会釈に続いて、ヴィリュークも自己紹介をしていく。


「ほー、うちの村にはいないタイプね。砂エルフさん?ミューシャと言います」


砂漠の街に住んでいるエルフはごまんといるが、街より砂漠にいる方が長いヴィリュークこそ砂エルフと言えるだろう。


「砂エルフってのは通称だ。耳飾りを外せばあんたと変わらぬエルフだ」と、当の本人は否定する。


今さら否定しても仕方ないのに、見ず知らずの同族にまで呼ばれてしまうのは不本意らしい。


「今回のお目当てはなんですか?」


「なんじゃ、せっかちじゃな。茶の一つも出せと言うに」


長年の付き合いなのか、遠慮ない遣り取りが交わされる。


「いつもなら酒の一杯でも出すんですけどね~。”競技会”が間近なので、みんなソワソワしてるんです。」


「そういえば湖でじゅうたんを見たな」


「時間を決めて集中して仕事をさせてるんです。半端な作業してたら行かせないって言ったら、みんなの気合も入りましてね」


”立ち話もなにですから”と言ってアンナとミューシャが先導するので、そのまま三人は案内されていく。






案内された部屋は採光用の窓が開け放たれ、光が差し込んでいる。


光の加減で埃が宙に舞っているのが見えるが、どの家でも当たり前である。


しかしアンナにとってはそうではないらしい。


「ちょっと綺麗にしますね。■■■ ■■ 空気清浄(ピュリファイエア)


手の平に小さなつむじ風が生まれると、空気が吸引・循環されていく。アンナは段々薄黒くなっていくつむじ風を維持したまま部屋を一周し、ゴミ箱の前で立ち止まった。


そしてゴミ箱の上で魔法の効果をそっと解除して手を除けると、集められていた埃が風の惰性で渦巻きながらゴミ箱に落ちていく。


「便利な魔法ですね。掃除が楽そうだ」セウィムが羨ましそうだ。日ごろ掃除が大変なのだろうか。


「でも、この汚れだけは自分で何とかしないといけないんです」


そういって見せたアンナの手の平の真ん中には、直径一センチ程うっすらと黒く埃で汚れていた。


「大掃除用の魔法を小規模発動するのはアンナくらいなものよ。普通やろうと思っても無理だから」ミューシャがお盆に色々乗せてやってきた。


どうやらアンナの魔法の精密さは相当の様である。




「はいどうぞ」


ミューシャは淹れたお茶を、皆の前に配っていく。


勧められるがまま飲んでいくと、なんとも香ばしいお茶である。


「モベリー茶よ。冷めるとヒトによっては香りが苦手らしいから、熱いうちにどうぞ」


「ふむ、嫌いじゃない……砂漠の夜は寒いからな、どこに行けば買える?」ヴィリュークは気に入ったようだ。


「少しなら分けてあげられるけど、お土産とかまとまった量が欲しいならワーム屋にいくといいよ」


「ワーム屋?」


「そ。シルクワームを専門に育てている所があるの。ワームの餌がモベリーの葉っぱなのだけど、副業としてそれをお茶にして売っているのよ」


しかし大々的にやって木を枯らしてしまっては元も子もないので、生産量は限られており村内で消費するのに留まっているとの事。




「さて……」ゴダーヴはまだ熱いお茶をぐいっと飲み干して切り出した。


「あるんじゃろ?見せてくれい」


ミューシャはアンナに合図をすると頷いて隣の部屋へ出ていってしまうが、すぐに戻ってきたその手には反物を手にしていた。


そしてゴダーヴの前で、巻いてあった反物を転がし広げていく。


それは青白く艶のある光沢を持ったシルクだった。ゴダーヴはさらに広げて確認していく。


「ふう、いつもながら見事じゃわい。セウィム、持ってみろ」


釘付けになってるセウィムに呼びかけ、生地を突き付ける。慌てて両手を差し出したところに、生地を乗せるとさらに慌てだす。


「手、洗ってません!生地が汚れちゃいます!」


「ミスリルシルクだから大丈夫ですよ」何も知らないセウィムの様子にミューシャが説明を始める。






一般的なシルクは美しい光沢や軽い肌触り、吸湿性・放湿性といった利点がある。対して変色やシミ、摩擦に弱いと言った弱点もある。


その弱点を克服したものがミスリルシルクなのだが、実はこの村で生産しているミスリルシルクは代替品である。


その昔──エルフにとっての昔なので、何百年前かも定かではない──シルクワームの亜種でミスリルワームと言う種が存在した。


ミスリルワームが吐く糸はミスリルの糸で、その糸で織った布は、倍の重さの精錬済みミスリルと同価値だったと言うが、今や伝説である。


”存在した”と言う言葉から分かる様に、ミスリルワームは絶滅した種である。


いなくなった理由は諸説あるが、餌の植物が害虫によって枯れて餓死した説と、天敵の異常繁殖によって全滅したと言う説が有力である。




そこに出てきたのが当時代替品として作られていた”マギシルク”である。


”マギシルク”とはその名の通り、シルク糸に加工を施しミスリルシルクの性能を目指した物の総称である。


ここで言うミスリルシルクの性能とは、一般シルクの利点をそのままに、耐摩耗性・防汚性・防水性・抗魔性が格段に向上したものである。


さらには抗魔性に矛盾した魔力伝達能力。装備者に害をなさない魔力を受け入れ、場合によっては効果を上昇までさせていくものだった。


今回のゴダーヴの様に、ミスリルシルクは防御性能の底上げには必須である。入手できないドワーフ達が業を煮やして繊維産業に参入してきたのはある意味必然であろう。


結果、エルフとドワーフの共同で、代替ミスリルシルクは開発されたのである。


ミスリルワームが絶滅した現在、ミスリルシルクの名前は代替品に取って代わられた。






「なんでもミスリルコットンとかミスリルリネンって物まで考えられたらしいわ。結構なコストにも拘らず、出来上がるシロモノはミスリルシルクの劣化版だったとか」


ミューシャの言葉を聞きながら、ゴダーヴは固まっているセウィムの腕から生地を受け取り、その美しさに見惚れている。


「ここの生地はどれも質がいいが、あんた(アンナ)のものは特にいい。出来ても仕方ない微細な織り(むら)すら見当たらん……鋏を入れるのも勿体無いわい」


ゴダーヴは懐から巾着を取り出し、ゴトリとテーブルに置いていく。


「相場は変わってないか?大金貨十枚入っている」


「変化はないですよ。──はい、確かに」ミューシャは中身を確認してアンナに手渡していき、ゴダーヴは大事にクルクルと巻き戻した反物を二重三重に別の布で包んで仕舞っていく。


「さてお待たせしました、ヴィリュークさん。ご用向きは何でしょう?」






「ミスリルシルクの糸を買い付けたい。───これを」


懐から出した手紙をテーブルにそっと置くと、ミューシャは手に取って中身を検める。


「ヤースミーンさんからの注文ね、ミスリルシルクを束で十。アンナ、在庫はまだあったわよね?」


こくりと頷いてアンナが再度退出し、戻ってきた腕の中には何かを包んだ布の塊が一つ。


テーブルに置いて紐解かれた中身は、一山のミスリルシルクの糸の束。


ヴィリュークは黙って束を数え、数が間違いないのを確認すると元通りに包んでいく。


品検(しなあらた)めしなくていいのですか?」


「門外漢の俺が見ても分からないから数だけ確認すれば問題ない。うちのばあさまの事を知っているようだし、その相手になまなかな物を出さないだろう?」


「お孫さんでしたか……」


ミューシャは”やれやれ”といったポーズで答える。


「あのヒト相手にそんなことしようものなら〆られちゃいますよ。というか私がやった奴を〆ます」


どこに行ってもヤースミーンの評価は変わらない。二人はため息を漏らしながら笑い合う。




「実は別口の注文があるんだが、大丈夫か?」


巾着をそっとテーブルに乗せると、小さく”カチャ”と音がする。


「数次第かしら。足りなければ作りますので少し時間を頂きます」


「ん?ミスリルシルクってすぐに出来るのか?」


「糸だけなら三日ってとこかしら?じゅうたん用に撚るならもっとかかるけど?ヤースミーンさんの名前にのっかって買い付けってことは関係者でしょ?……違う?」


エルフのじゅうたんを織る糸は羊毛が主であるが、ミスリルシルクも使用されている。羊毛を紡いだ後さらに撚るのだが、そこにミスリルシルクを何割か入れて撚っていくのである。


「まぁ……正解だ。関係者というかばあさまの弟子から頼まれた。もう独立していて、俺がじゅうたんの修繕を依頼している───その点俺も関係者か」


もう十束と伝えると足りないらしく、すぐさま作業に入ってくれることになった。代金も巾着内のお金で大丈夫というので、そのまま渡してしまう。






「繭からの糸引きは九割方終わっていてね。すぐにミスリルシルクへの作業に入れるわ」


工房の中を案内されていくと、残りの一割を作業しているエルフの横を通っていく。


横目で見ると、鍋を前にした(エルフ)が木枠で出来た三角柱を回して糸を巻き取っており、うっすら湯気が立ち昇る鍋の中を覗くと、糸の先には繭がお湯の中でゆっくり踊っていた。




案内された部屋の一角(いっかく)にあるかまどには、大鍋が一つ据え置かれていた。


しかしそのかまどには火が焚かれた様子はなく、煤一つ付いてはいない。


見学者の三人が興味深げに見渡していると、ミューシャとアンナが準備を始める。


「ほう、ミスリルの鍋か」ゴダーヴの言葉に、セウィムが触れない様にして見定め始める。


エルフの工房で使われている鍋がただの鍋の筈がない。ましてやミスリル製である。セウィムは寄り目になる程顔を寄せ、作りを確認していく。


「そんなに興味あります?終わってからでよろしければ手に取ってみますか?」


「ほんとですか!ありがとうございます!」ミューシャの言葉に目を輝かせて返答する。


「始めますので、場所を空けて下さい」


ギルドで出会った時とも、ゴダーヴと話していた時とも違う口調で、アンナが会話に割って入った。


目つきも真剣である。


三人が邪魔にならない位置に移動すると、アンナとミューシャが動き始める。


大鍋には水を入れて蓋をして、その横のテーブルには持ってきたものを並べて行く。


「■ 起動」アンナが言葉少なに手をかざす。


かまどに火を使った跡が無い訳である。大鍋の能力で湯を沸かしていたのだ。


しばし待って蓋を取ると、大量の湯気が立ち昇るが沸騰はしておらず、見ると鍋の内側にはびっしりと細かい気泡が張り付いていた。


何度も繰り返された作業なのだろう。狙った温度だったようで、アンナは大鍋が沸騰しない様に大鍋に手をかざして火力を調整していく。


アンナはテーブルの上の壺の蓋を開ける。


「ふむ」


中から掬われた一匙を見てゴダーヴが呟き、アンナが答える。


「ミスリルの粉末です」


黙って擦りきり三杯投入するが、鍋の底に溜まるばかりである。


見学者三人は次の行為を見守っていると、アンナは壺を替え、別の大きな匙で中の液体を入れていく。


一匙二匙……合計五匙投入し、立掛けてあった大型の杓で撹拌していく。


「その液は?」


「触媒。秘伝だから教えられない。これこそが先達の研究の成果」


アンナは必要な事だけ話し撹拌していくと、鍋の中では次第にミスリルの粉末が溶けてゆき、鍋のお湯がミスリル色に染まっていく。


大鍋の撹拌をアンナがやめると、今度はミューシャが静かに生糸の束を沈めていく。


「春繭でとったばかりの生糸よ。秋繭よりもいいのは確かだけど、今年は特に良いわね」


ヴィリュークの追加分、十束の生糸を投入するが、束は鍋底に着地せず水中を漂っている。


なんだろう?とヴィリュークが中を窺うがいま一つ把握できない。見極めようと目を凝らしていると、立ち眩みがしてしまい慌てて視線を外す。


「ああ”視”ちゃだめです。ミスリル溶液と魔力のせいで、今みたいになってしまうから」


「なんだって?」


「鍋の中では色んなことが同時に起こっているから、”視”ようとすると酔うわよ」


ミューシャの解説にヴィリュークは、思わず再度”視”てしまった視線を慌てて外す。どうやら水中で漂っているのも、起きている現象の一つらしい。






気付くと鍋の中で泳いでいた生糸も、水の量が少なくなり浸す程度の量になっていた。


鍋についていたアンナが輪にして束ねていた生糸を二本の棒で引っ掻け、緩く捻じって水分を鍋に搾り落とすと、そのままどこかへ持ってゆく。


「あとは乾燥させると、ミスリルシルクの糸の完成です」


鍋の残りが気になって聞いてみると──ミューシャは懐から新たに取り出した粉薬を一包鍋に投入して答える。


「ゆっくり沸騰させないよう煮詰めて壺に戻します」


秘伝の触媒とは壺の中身と言うより、包まれた粉薬のほうではないか?と空包みを見ていたヴィリュークであったが、ミューシャの視線に気付いてそっと目を逸らす。


「あとは乾燥して馴染むまで三日かかるから、その頃にまた寄ってください」






「三日か……待つのは構わないが暇だな」


「それなら───」


”こんにちはー”


ヴィリュークの思案げな独り言にミューシャが答えようとすると、入口の方から挨拶の声が響いてきた。





「ミューシャいるかい?弓弦を───」


ひょいと顔を出したのは男性エルフ。


ヴィリュークは同族なので性別が分かったが、他の種族からだと女と間違えられても仕方ないくらい線が細い。


「っとと、お客さん?失礼しました」


「いや、丁度終わった所だ。かまわない」


ヴィリュークもゴダーヴも気にした様子もなく席を立つ。


「すみません。(……弓弦でしょ?今日届けるって言ったじゃない)」


「(一部のヒトがまだかまだかってせっつくんだよ)」


「(アイツでしょ?売らなきゃいいのに)」


「(ミューシャ~)」


小声で話す男女であったがそんなに広くない室内、丸聞こえである。


「弓弦と聞こえたが、もしかして……」


お客を放っといて会話していたミューシャが、ばつの悪い顔で返答する。


「えぇ、少しですがミスリルシルクで弓弦も作ってます」


なんとこの村では、消耗品をミスリルシルクで作っていた……





ふらいんぐうぃっ〇、いいですね。

漫画もいいですが、アニメがまたいい。

ああいうのを書きたいなぁ……


ミスリルシルクの元ネタは、これまたSWです。何で読んだんだっけか?小説だったような……


お読みいただきありがとうございます。

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