表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフ、砂に生きる  作者: 初荷(ウイニィ)
森エルフ、砂エルフ
72/196

娯楽との遭遇

妄想の神様は気まぐれで、順番に妄想が下りてきません。

ええ、起承転結の転ばっかりとか。


昨日はそのまま彼ら身内の食事会に二人はなぜか同席。


エステルはキァラシュ相手に支払いの話に逃げていたのだがオルタンシアに回り込まれ、じゅうたん工房をさらに大きくしないかと強い押しが入る。


だがそこに母娘から助け舟が入り”あらやだうふふ”と獲物を見据えながら後退して行き、エステルは辛くも難を逃れたつもりであった。


だがしかし、伸び悩んでいるじゅうたん職人たちへの技術指導を取り付けたあたり、オルタンシアはきっちり成果を手にしていた。廻船問屋ではなかったのか?


ヴィリュークと言えば正にエステルのおまけでしかなかったのに、キァラシュとオルタンシアの夫婦二人に”何か要り様の際はお気軽に”と声がかかる。


二人からすればそれで繋がりが出来れば、緊急の配達要員の伝手が入るので、ダメもとでもアピールしてくる。


しかし主役たちを差し置いてはいけないと理性が働いてくれたおかげもあり、二人は無事帰宅の途につけたのであった。




行きはエステルを連れて行かねばならなかったのでじゅうたんに乗っていたが、気持ち遠い程度で歩けない距離ではない。


長時間座りっぱなしだったので、二人揃って歩いて帰る。


「そういえば」


「ん?なぁに?」


ヴィリュークは先程は流した問題発言を問い質す。


「修繕用のミスリルシルクが無いだとか?どうするんだ?」


「あぁー……」


苦虫を噛み潰したような顔になるエステル。


「今回の一件の前から手持ちは少なかったのよ。で、師匠に分けて貰おうと連絡したら、あっちも少ないんだって」


丁度工房に着いたのでそのまま中に入る。


「お茶、飲むでしょ?」


「ああ、頼む」


エステルがヤカンを取り出すと、ヴィリュークが水がめから水を引っ張り出し、そこへ投入。


ついでに温度も上げてやり、沸騰の手助けをしてやる。


「後は心当たりあるんじゃない?」


「まぁな。自治区までお使いに行ってこいだとさ。紹介状諸々届いている」


急須に茶葉を入れ、湯飲みを二つ。エステルがお盆にのせて持ってくる。


「仕事は?」


「ばあさまが勝手に休暇申請しやがった」


すると眉を八の字にして申し訳なさそうにしてくる。


「えっとその、ごめんね」


「エステルが謝る事じゃない」


「あ、ちょっとヤカン見ておいて」


そう頼んでエステルは奥に引っ込む。


暫く待つうちにお湯が沸いたので、勝手知ったるなんとやら。


火から下ろしてお茶を淹れると、奥のエステルに声を掛ける。


(ちゃぁ)入ったぞー」


”はーい”と奥から返事がすると、間を置かず普段着に着替え化粧を落としたエステルが小袋片手に戻って来た。


「ありがと。あとこれ」


小袋を差し出すので手のひらを上にして差し出すと、小袋が落とされた。


そこに金属がぶつかり合う鈍い音、しかも結構重たい。


予感めいたものがあるのだろう。


ヴィリュークは口元を引きつらせながら、テーブルの上に小袋をひっくり返して中身を出す。


重い金属音をさせて出てきたのは大金貨。一枚で金貨十枚分だ。それが十枚。


”なにこれ?”と視線を投げつける。


「そういうことよ。糸を束で二十、買ってきて。私と師匠とで十づつ」


「”ミスリル”と名前がついているから相応の値段だろうと思っていたが、そんなに高いのか?ミスリルといっても糸だし、そんなに重たくないだろう?」


「ミスリルを加工するから高いのよ。それをいったら、ただのじゅうたんだって山羊の毛よ。わかるでしょ?」


言われてみれば付加価値が付いていると、原材料がいくら安くとも相当の価値が出ると思い当たる。


「分かるけど大金を持っていると落ち着かないな」


「なーに言ってるのよ。あなたが持ち運びしている鞄の中身、どれだけの価値があると思っているの?」


事実ヤースミーンから押し付けられた装備だけでなく、エステルやナスリーンから”ちょっと作ってみた”と言って渡される、(魔道具)が着実に増えている。


それこそ”材料費”は大したことが無くとも、理解できる者が見れば立ち眩みをするほどの価値があるのだ。


まさに”ミスリルシルク”と一緒である。


「そう言われればそうだが……はぁ。あ、明日ギルドで打ち合わせがあるから、明後日出発するよ」


諦めてそう返事を返すと、”気を付けてね”と言うエステルの言葉でその日はお開きとなった。






「おはよう。朝から元気がないな」


いつもの男性職員がヴィリュークの対応に当たってくる。


対応したい女性職員たちが牽制し合った結果決着がつかず、必要以上に待たせてはいけないと彼が出てくる事が多くなるのだ。


それを知ってか知らずか、ヴィリュークは彼と良好な関係を築きつつある。女性職員たちは牽制し合えばし合うほど、彼とのフラグを潰し合っているのだ。


「やぁ……疲れがちょっとな……」


愚痴の詳細を言い合う関係になるのも時間の問題であろうし、それを見た女性職員たちが歯噛みして悔しがるのもそのうちだろう。


「今日はどうした?」


「休暇の件だが……」


「そうだったな、ちょっと待て」


男性職員は一旦制止して奥の机へ行くと、書類を片手に戻って来た。


「あの後調整をしてな。お前さんにとっては意にそぐわない休暇だから、仕事として扱う事となった」


そう言って手元の書類をひらいて一言。


「護衛の仕事、やってみないか?」


「?」






移動の足を持っている者にとって、空荷で行くほど無駄なものはない。


休暇の行き先が隣のエルフ自治区という呟きをおぼえていた職員は、小耳にはさんでから暫く、適当な依頼がないか当たってはいた。


しかし港街から自治区への商路は確立されており、砂漠ルートの様な急ぎの便は街道を行く早馬で事足りている。


となると次の候補は隊商護衛になる。


そもそも護衛の仕事はパーティで当たるもので、個人で依頼を受ける物でもなければ、個人に依頼が回ってくる物でも無い。


しかし先日のギルド訓練場での試合の記憶は新しく、沈静化したとはいえ、護衛依頼を受けて貰いたい者は個人の行商人から大規模の隊商までごまんといる。


護衛に付いた者たちの名声だけで、避けられるトラブルはあるのだ。そして名声は実力に比例する。


名声が役立たない動物・魔物が来ても、彼らは実力を発揮し排除してくれる。


そうして運び屋ではなく護衛として雇われたヴィリュークと、隊商の代表が顔合わせをしたのは出発の朝であった。







早朝いつものリディに騎乗して西門に行くと、丁度幌馬車が集まり始める所だった。


「護衛依頼を受けたヴィリュークだ。隊商(キャラバン)の代表はいるか?挨拶をしたい」


その中で一台だけあった荷馬車の普人に声を掛ける。


「あ!ヴィリュークさんお久しぶりです。いつぞやの山道ではお世話になりました!」


よく見ると鋳掛屋ゴダーヴの弟子、セウィムだった。全く普人ってのは成長が早い。


背も高くなり、彼だと気付かなかった。


「大きくなったな。セウィムも隊商に?親方はどうした?」


すると荷馬車をぐるっと回って来たのか、後ろから声が掛けられる。


「ここにいるぞ。久しぶりだな。あんたがいると心強いってもんだ。紹介しよう、こっちだ。セウィム、荷馬車見とけ」


”はい、親方!”元気の良い返事を背に、ゴダーヴはずんずん先を進んでいく。




「あんたが噂の砂エルフか。宜しく頼む。この隊商を取り仕切ってるベマンだ。大所帯になったが、進みながらの説明でいいか?なぁに、時間はたっぷりあるからよ。あんたも乗りな」


紹介されたのは普人の男性。丸帽子をひょいと上げて挨拶してくる。


がっしりした体型で髪には白いものが混じりはじめ、肌は日に焼けしわが多い。年寄りと見間違えそうだが、まだ中年の様だ。


そう言って先頭の幌馬車の御者台に乗り込むので、一緒によじ登る。


ベマンがお構いなしに馬車を進めるので、ヴィリュークは口笛でリディを呼び寄せる。


「そいつがあんたの相方か」


並走するリディを一瞥して彼は説明を始めた。




隊商の規模が少し大きいものになったのは、オアシスからエルフ自治区と王都に隊商が分裂するからだそうだ。


エルフ自治区行きの方は規模も小さく、護衛もヴィリュークを含めて四人である。


何故かというと、エルフ自治区周辺で盗賊の被害は皆無なのだそうだ。あったとしてもちょっとした泥棒程度。


それは被害が彼ら(自治区のエルフ)の耳に入ろうものならば、弓矢を背負ったエルフ達が空から陸から押し寄せてくるからである。


森の中でエルフに敵うと思うなかれ。どこに潜もうともエルフは盗賊()を見逃さない。


数年に一度、高をくくった奴が出てくるのだが、御多分に漏れず盗賊は捕えられ、多少目減りはするものの被害者の積み荷も取り戻される。


そう言った理由で街道での脅威は、魔物や肉食動物が少々といった程度である。




だが今はオアシスまでの道のりの最中だ。


こちら側は、ヴィリュークがいつも使っている東門よりも緑が多い。


街道の外に点在していると言うが、草木や藪だけではなく木の本数もちらほら目立つ。


「知り合いがいたから、ちょっと挨拶してくる」


動いている馬車から飛び降り、リディへ鞍と鐙を支えに飛び乗ると、ゴダーヴの荷馬車へ向かって行く。


「今朝はどうも」


「おう、あんたか」


再度挨拶を交わすと、お互いの近況を伝え合う。


既にセウィムの鋳掛屋行脚は近隣を二周し、今では二代目である息子の(鍛冶屋)で鎚を振るう日々だそうだ。


当のゴダーヴと言えば鍛冶仕事は息子に任せきりで、相変わらず鋳掛仕事ばかりとの事。


「その鋳掛屋がどうしたんだ?セウィムはもういいんだろ?」


リディは自分で馬車と足並みをそろえ、馬車は弟子が手綱を握っているので、二人は他人任せでおしゃべりを続ける。


「防具のでかい仕事が入ってな。今回、魔法にも抗える盾と鎧の注文なんだよ。まぁ防ぐにも限界はあるんだが、とにもかくにもミスリルシルクの内貼りは必須だからな。こいつを後学の為に連れて来た」


付与のやり方にもいろいろあるが、作製しながら付与していく方法と、既に完成した物へ後から付与していく方法とある。


以前エステルが鞄に付与したやり方は後者だが、多種多様な付与を連携させるならば前者の方が対応しやすい。




オアシスまで三日の行程だが、ヴィリュークは隊商の者達とあまり親交を深めなかった。


いや、お互いに挨拶は交わし同じ火を囲んではいたのだが、どうも大人数だと遠慮してしまっているようである。


だが言葉少なではあるが火を囲んでの会話は成立していたので、寡黙な性格なのかと察した商人たちは適度に放ってくれている。




その三日目の午後、移動ペースも慣れたものでうまい具合に日の入り前にオアシスに到着する。


テントの設営や食事の支度や馬の世話など、それぞれが自分の仕事をこなし、明日には王都行きと自治区行きに道が分かれる。


その晩のうちに、明日の配置の打ち合わせを済ましてゆく。




王都行きの隊商を見送ると、こちらも出発だ。


「じゃあ、ワシらもいくぞ」


ゴダーヴが合図とともに自分の荷馬車を進めると、自治区行きの幌馬車が二台続く。


ヴィリュークはリディに乗って荷馬車と並走。


昨晩のうちに三人の護衛達は装備の変更をすませていた。彼らはパーティとして護衛に参加しており、普人の三人組だ。


その彼らもオアシスまではのんびりと馬車に乗っており、警戒はしていたが武器を手元に置いておくくらいであったが、今やフル装備である。


もちろん不必要に緊張はせず昨日と同様にリラックスしていたが、それぞれ防具を身にまとい、ヴィリュークもガラビアの下に革鎧を装備している。




ヴィリュークは先頭のゴダーヴの荷馬車と。


二台目の幌馬車には、痩身の魔術師。


三台目の幌馬車に、重装備の前衛と小柄な斥候が乗り込む。


全て男だ。先日の調査隊の様なケースは例外である。




起伏に富んだ街道を三十分も進むと、植生が目に見えて変化した。


眼下の緩い下り坂の先には緑の平原が広がり、彼方には森が広がって街道はその中に続いている。


実家の山道と違った緑にヴィリュークは、額に手をかざして緑を見ながらリディの背に揺られていく。


”あの砂漠も昔はこうだったのだろうか……”


物思いにふける視線の先には、小動物が巣穴からこちらを窺っていた。


だが馬車群が迫ってくると、素早く巣穴に頭を引っ込める。


「ちょいっと失礼ー」


最後尾にいたはずの斥候の男が、弓矢を手にゴダーヴの荷馬車に乗り込んできた。


「ん?なんじゃ?」


「いやね、美味そうな獲物が見えたんで二・三匹獲れたらなぁ、と」


そう言って男は目を細めて遠くの何かを探し、素早く弓を引き絞ると空に向けて矢を放った。


矢は高く放物線を描いていく。


「風を受けてないな……よし、当たった」


「まだ当たっとらんぞ」


ゴダーヴも目が良い様で、まだ飛んでいる矢を視認できているらしい。


「あっ」


そう言っている間に、男の矢は巣穴近くにいたウサギを地面に縫い付けた。


「俺くらいの腕になると、放った瞬間に当たり外れが分かるんだよ」


進行方向から少し外れた辺りに獲物が転がっているので、男はこのまま同乗するみたいである。


「砂エルフの兄さんも腕前見せちゃくれないかね?」


軽く煽ってくる男に、ヴィリュークは黙って鞍から腰を浮かして獲物を探していく。


「……流石に鹿は処理も手間だし食い切れないよなぁ」


馬車の二人ゴダーヴとセウィムは何を言っているんだと首をかしげるが、斥候の男は森から出てきた鹿の群れを確認出来ていた。


”いやいや、どんだけ距離があると思ってんだよ。それに矢一本で仕留められるわけねぇだろ”


そう男が心の中てツッコミを入れ横を見ると、砂エルフが投槍(ジャベリン)を収納鞄にしまう所だった。


”───え?”


そして新たに取り出されたのは、一辺三十センチ程のV字ブーメラン。


さらに背負っていたバックラーを左で保持し───ヴィリュークは一言。


「いた」


リディから素早く降りて荷馬車の前方へ駆け出し、助走をつけると思い切り投擲した。


ブーメランの軌跡を目で追うが、その先には獲物はいない……


と思っているうちに軌跡はカーブを描き、その先の二羽のウサギをまとめて打ち据えた。


「「「おおぉ」」」


後続の視認できていた者達からはどよめきと拍手が、できない者たちも視線を彷徨わせて拍手をしていく。


ブーメランは、勢いを緩やかにして帰還軌道を取る。


その先には投擲後も小走りで進んでいたヴィリュークが待ち構えており、バックラーを差し出すとブーメランはその上に着陸。しばらくその上でクルクルと回転していった。


「おかしいだろ!」


荷馬車で追いついた斥候は、理解できない現象に文句をつけた。


「なんでウサギにヒットしたのに手元に戻ってくるんだよ!軌道もおかしいじゃないか!」


「なんでって魔法武器(マジックウエポン)としての効果だが?」


男は口をパクパクさせ、膝に手を叩きつけて反論。


「ブーメランは狩猟道具だ!武器じゃねぇ!」


「じゃあ弓はどうなんだ?それより獲物を回収しないと。いくぞ」


返事を待たずにヴィリュークが自分が仕留めた獲物へ向かうのを見て、男は頭を掻きむしり、獲物を回収しに荷馬車を飛び下りた。






その後馬車は森の街道を進み、幸いなことに?ヴィリュークの装備の披露の機会はなかった。


その後も斥候の男による食材の提供は行われ、ヴィリュークは野草の知識を久しぶりに掘り起こしてゆく。


他の者たちも、薪を拾ったり食事の準備、夜の見張りなどそれぞれの役割を果たしていった。




さて、森の街道とは言え、道はしっかりと整備されている。


所どころ狭い場所もあるが、そう言う地点にはすれ違える様に待避所も用意してあった。


整備されていると言えば、野営が出来るスペースが一定間隔で確保されていた。


これは適当な所で火を使われたくないエルフの手によるものであり、こうしておけば逆に管理がしやすい。




オアシスを出発して四日目。


昨晩のうちに森を抜けたが、とくに魔物等の襲撃もなく平和な旅であった。


目的地はエルフ自治区に入って一番目の村だ。あと一日もかからない距離である。


エルフ自治区はちょっとした小国だ。


人口の八割はエルフだが、それ以外の種族も暮らしている。普人やドワーフはもちろん、場所によってはマイナーな少数種族も自治区内で仕事に付き、暮らしている。


今回用事があるのは自治区の中心ではなく、湖の畔のこの農村だ。


丁度春の仕事が終わるタイミングを見計らって、この隊商もやってきたのだ。




道は湖に向かって続いているが、数十メートル手前で湖畔沿いに曲がっていく。


「なんか飛んでいるな」


「む……じゅうたんか?」


見てみると湖の上に、吹き流しのような物が垂直にたなびいており、そこをじゅうたんが飛び交っている。


どうやらたなびいているのはパイロンのようで、それでコースを設定しているらしい。




隊商はさらに進み、近くなっていくと何をやっているか段々と分かってくる。


コースを飛ぶじゅうたんは常に一枚で、それ以外の者は脇で邪魔にならぬように漂っている。


どうやら一枚のじゅうたんがスタートするようだ。


じゅうたんの搭乗者(エルフ)は二名。一人は弓を持っており、もう一名は手ぶらである。操縦者か?


”ピーーッ”


笛の合図でじゅうたんが飛び出した。


加速がついた辺りで、矢を番えて待ち構えていた射手が素早く弓を引き絞り、放つ。


放たれた先を見ると、パイロンに備え付けられている的に命中した。




その後もじゅうたんは右に左にとパイロンを通過していく。


じゅうたんの先のコースを確認すると、緩く長いカーブが続いており、一定間隔で的が設置されている。


そこを駆け抜けると、長い直線の先にゴールが待っている。




じゅうたんがカーブに突入した。


手前が急カーブなので、目いっぱい速度が落とされてからの急加速だ。


的が一定間隔なのに速度は上がる。必然的に射手は速射しなければならない。しかも加速による重さが身体にのしかかっていく。


そこを操縦者は、射手が射れる限界を見極めて速度を上げねばならない。


四枚の的を、あの射手は射抜けるだろうか。


的中


的中


的中──少しもたついたか?


はずれ──矢を番えるのに遅れ、背面撃ちになってしまい外れてしまった。


悔しがる暇もなく、じゅうたんの二人は身体を小さくし、ゴール目掛けて最後の直線を駆け抜けていった。




「面白そうじゃないか……」


だがじゅうたんが無い事を思い出したヴィリュークは、悔しい思いをしながらリディの背に揺られていく。


そしてコースの横を通り過ぎると、目的地の村が視界に入ってくるのであった。






お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ