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エルフ、砂に生きる  作者: 初荷(ウイニィ)
本編

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35/200

35・特訓の最中でもしたい事(作品披露)

丸太に突き立った武器の状態を確認しながら、革の反物?に片付けていく。


刃先が潰れたりしないかチェックしていたが、杞憂だった。数点は早めの研ぎをしたほうが良いかもしれないので、村にいるうちにやっておこう。


わざわざ水が貴重な砂漠でやることでもない。


「すごい!すごいです!エルフであんな迫力を出せる人、初めて見ました」


「ありがとう、といっとこうか。けど、ばあさまの方が凄いぞ」


「師匠は別格ですから!」テンション高いな、エステル。


「砂を剥いでいった所は良しとしましょう。けれども投擲の精度が甘いわ。誤差の蓄積が今回の結果だと言う事は分かっているわね?」


「辛い評価だなぁ。実際、その通りなのだけれどもね」


「お前じゃなかったら手を叩いて褒めてたわ」


「うそばっかり」


お客相手だったらそうだろうが、身内や弟子の場合、ばあさまは容赦ない。




「全力投擲後の精密投擲だから誤差は出やすいけれども、出ていいという訳ではないわ。そんな時にはこれよ!」


じゃじゃーん、とばかりに隠し持っていたものを出してくる。


俺のと同じ革の巻き物というか反物というか……模様がついているからこれこそ反物かな。


よく見ると厚めの革に魔法陣が彫り込んである。彫った後に後表面処理をしているのか、つやつやと光っており、数種類処理が施されているのだろうが、俺の目には劣化防止位しか判別が付かない。


端を持って広げると内側にはナイフばかり収納されていた。


「まだ試作段階なんだけれどもね、こんなことが出来るのよ」


ばあさまは地面についているもう片方の端を足で踏んずけて固定。次の瞬間、革からナイフが飛び出し十メートル先の的のど真ん中に命中。


「はあぁ!?なにこれ面白い!」


「でしょ?けれどもこれ、命中精度は使用者に依るのよ。エステル、見せてあげて」


「え~、私がやるんですか?師匠みたく行きません。かっこ悪いですよ」


ギロヌ


「分かりました、やります。やりますってば」


狙いを定めていたのか、少し間が空いた後発射され、ギリギリ的の端に当たった。


「ふぅ、弓の方が得意なのに、なんでわざわざ投げナイフだなんて……」


「俺にもやらせてくれ!」


エステルと交代して構える。狙いを定めて魔力を流すと……


”トン”


ばあさまのナイフの上に刺さる。二人に視線を投げかけながら軽く”ニッ”と笑う。エステルはきょとんとしているが、ばあさまは早くしろとばかりに顎で的を指し示す。


即、連続して魔力を七回流す。


ばあさまのナイフを中心に、一本目から時計回りに等間隔で輪を描く様にナイフが刺さって行った。


ほえー、とばかりに目を丸くしているエステル。うん、そういう反応嫌いじゃないぞ。


「まぁまぁね。じゃ、交代。こんなことも出来る」


今度は手に持っていた革を地面に敷く。切っ先が的に向かうようにだ。


膝をついて革に手を当てるとナイフが上昇するように飛び、的に当たる。


場所を交代して貰って俺もやってみるが、ナイフは土煙を上げながら地面を疾走していった。


「あれ?」


「ヒントをあげよう。今、ナイフは下に落ちている。さぁどうする」


状況を頭に思い浮かべながら、手を動かす。こう、シュッと。拾い上げて、下から上へ……シュッと。


「こうか!」狙い違わず的に当たる。


要は、拾い上げしなの下手投げだ。


「しかし、使うヒトの技量が如実に反映される魔道具だな。なんで誰でも狙ったところに当てられる様にしなかったんだ?」


「初めはそのつもりで設計していたんですよ。けど、出来上がってみたらこんな仕様になっちゃって」


「こら、バカ!尤もらしく適当に理由を並べればいいのに、何を口走っている!」


「……」

「……」

「……」


「今のは対外用の建前です。本当は別の用途の為に設計したものなんです。謂わば隠れ蓑ですね」


「ほほう。何のために設計したんだ?」


「そ、それは……ひみちゅでひゅ」そこで噛むか。


「……なんという残念っぷり」旨いこと言ってたのに、締まらねぇなぁ。


ばあさまも軽くため息をついている。


「意図した性能ではないけど、何かこう……使い道がありそうなのよ」


「ん、良くも悪くも使用者の感覚通りになるんだよな。何かに使えそうだよな」


当然すぐに思いつく訳もなく、この話はそこで流れた。


後日、義手や義足に流用できそうだと思いついたが、再度実家に訪れた時にはすっかり忘れてしまったいた。




「さ、次いってみよう」


色々と言いたいことはあるのだが、言うと倍以上になって返ってくるのでここはだんまりだ。


「何で鍛えてやろうかねぇ」


「なにって、教わってたのは槍じゃないか」


「なに?あれから自分で剣とか試してみなかったの?」


面白そうだからといって、目に付く武器を手あたり次第鍛錬するのはばあさまくらいだ。


体術はもちろん、どんな武器でも人並みに扱えるくせに、本職は精霊使いだったりする。


「取り敢えず、組手で身体あっためましょうか。武器はそれからね」






ゼイゼイゼイ


ハッハッハッ


「ようやっと身体が温まってきたわね」


わかっちゃいたがエステルと二人掛かりにもかかわらず、全く歯が立たない。


手加減された突きや蹴りを必死になって防御したり、受け流して体勢を崩そうとするが、流せるのだが崩せない。


それどころか、そこから連撃が来たりする。


わざと隙を作ってくるので、攻撃して来いと言う事だと解釈し、蹴りだの突きだのやるのだが当りやしない。


避けてくれるならいい方で、いなされ体勢を崩した所に逆襲が来たり、手や足に触れられようものなら投げられたり転がされたりする。


そういったことが繰り返され、二人そろって土まみれになった所で終了が宣言された。




「水分補給して。息が整ったら次よ」


くそっ、まだ続くのか。


「どうしようかしら、まずは木刀かな?」


ばあさまは、ウエストポーチから木刀を三本引っ張り出した。


ん?魔法陣収納にしては小さすぎやしないか?そのポーチは縦横10×20センチくらいの平べったいサイズだ。


小型化されたとしてもあまりにも小さい。


「あ、気付いちゃった?」なんかめっちゃいい笑顔してる。これは……


「ばあさま、よくここまで小型化できたな。すごいじゃないか」


「ふっふっふ、このサイズでちょっとした倉庫分の収納が可能よ!」


「おぉ、今つけているってことはそのポーチは(さなが)ら武器庫とか?」


「何を出してほしい?」


よし、これは自慢したくて堪らないって奴に違いない。このまま誘導してしまえ。正直身体が痛くてたまらん。


「そうだな、槍とかあるかな」


「あるともさ!槍ね!」ポーチに手を当てながら返答するばあさま。


腕を突っ込み引っ張り出してきたそれは……


「……」


「槍…ね」


「槍だけど……ばあさま、馬上槍(ランス)出してどうするんだ。全身鎧(フルプレート)来て馬上試合(トーナメント)でもするのか?」


黙って地面に馬上槍を置く。


「槍、よ」腕を突っ込み、引っ張り出す。


すっ


腕を思い切り伸ばしても先端が出てこない。両手を駆使して引っ張り出したのは四メートルはあるかという歩兵槍(パイク)であった。


「……」


「槍…ね」


「槍だけど……ばあさま、集団戦の練習でもするのか?盾はあるけど三人じゃ練習にならないぞ」


黙ってパイクを置く。


「や・り・よ」腕を突っ込み、引っ張り出す。


「……」


「槍…よね?」


「槍だけど……」


言葉が続かない。引っ張り出されたそれは、まだ青々とした切り出されたばかりの様な竹槍であった。


プルプル震えながら地面に竹槍をそっと置く。


突然ウエストポーチを両手で広げると、ばあさまはその中へ向かって怒鳴り声をあげた。


「あんたたち!槍っていったら槍を手渡しなさい!極々普通の槍なんかいくらでもあるのに、なんでよりにもよってあんなのばかり渡してくるわけ!?」


エステルを見ると申し訳なさそうな顔をしている。


「知ってたのか?」


「ええ、まあ。空間系の魔法陣を試行錯誤していたんですが、出来たのは新しい書式の収納魔法陣ではなく、空間と空間とを繋ぐ魔法陣だったんです」


「収納目的で使うには仕舞う場所に左右されるな」


「そうなんですよね。ただ、あんなサイズで機能するので、さっきみたいな感じで驚かせたかったじゃないかと思うわ……」


一通り怒鳴り終え、大きく呼吸をして落ち着きを取り戻そうとしている。


「精霊のあなたたちじゃ武器は分からないわよね。ごめんなさいね、今度ちゃんと教えてあげるわ。じゃぁ、棍は分かるわね、あなたたちの身長位の木の棒よ。そう、これよ。あと二本頂戴。うん、ありがと」


俺たちを見るとばあさまは、棍を三本もって死の宣告を告げた。


「さあ、続きを始めましょう」




……この後、めっちゃしごかれた。






―――その時の某倉庫―――


『どうしようかしら、まずは木刀かな?』


「かあさまからの合図!」

「かあさまからの合図!」


精霊たちが、とたとた走っていく。


「木刀木刀」

「三本三本」


十把ひとからげにして立掛けてある木刀を三本、精霊たちは床の魔法陣から生えている手に渡していく。


「お仕事できた!」

「お仕事できた!」




『あるともさ!槍ね!』


「また合図!」

「また合図!」


「槍?」

「槍?」


槍が整理されている区画には、様々な種類の槍がかけられていた。


「どれだろう?」

「どれかしら?」


取り敢えず取り易い位置にあった馬上槍を二人掛かりで運んでいく。何気に力持ちである。


同様に手渡ししていく。


「……?」

「……?」


微妙な反応に小首を傾げる二人。




『槍、よ』


「また槍!」

「また槍!」


「違ってたのかな?」

「違ってたのかも?」


大量の槍を前に精霊たちは考える。


「きっと短かったのかも!」

「もっと長いものかも!」


今度は歩兵槍を二人で肩に担いで運んでいく。


手渡すと、長い歩兵槍がずりずりと陣へ消えていく。


それを見ながら、二人は顔を見合わせてうなづく。




『や・り・よ』


「……やり」

「……やり」


二人はもう何を渡せばよいか、分からなくなってしまった。


立派な拵えのもの、何でも切れそうなもの、他の物と違う穂先のもの、沢山ある。一体何を渡せばいいのだろう。


ふとみると”それ”はそこに無造作に立掛けてあった。


これだろうか?これで良いのか?ひょっとするとこれ位の程度の物で良かったのかもしれない。うん、きっとこれに違いない!


握ってみると意外としっくり来るし、切れ口も結構鋭い。青々としている所など、草木と馴染み深いドライアドやブラウニーにとっては好印象である。


これならかあさまも喜んでくれるに違いない。


そうして二人は嬉々として竹槍を手に握らせるのあった。


どちらの魔法陣も開発を進めればすごいものが出来上がります。


革の方は義手義足から始まり、大きなものではパワー〇ーダーも可能です。エイリ〇ンはいませんが大型の魔物・魔獣はいるでしょうし。



ポーチの方は転移ゲートですね。ただ、将来性があるだけでクリアしなければならない項目は膨大です。



お読みいただきありがとうございます。

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