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24・まんざらでもないと気付く

あらすじ


・倒れていたスナネコを連れて帰ったら、魔力をちゅーちゅー吸われた。

・どうやら進化したスナネコは、ケットシーではなく人語を操るネコマタになったようだ。

・更にスナカケと言うスキル?まで会得したらしい。




「お前、何食ったらそうなるんだよ……」エルフ三人、砂まみれの身体を掃っている。


『さばくでときどき食べていたやつよ』


「え?砂漠で食べていた奴があそこにいたのですか?」


『ええ、ここはまるまるとしたのがいっぱいいるのね。たくさん食べちゃったわ』


「ねぇ、今回の不調は食べ過ぎのせいじゃないの?どんなのを食べたの?」


『頭がふとくて先のほうがだんだんほそくなる奴。頭にはめだまが二つとび出していたわ。すなの中ではめだまだけ出してようすをうかがうの。それからぴょんぴょんとんでいどうするの』


結構細かく答えてくる。


「「砂の精霊だな(ね)」」


「二人とも知っているのですか?」セツガさんだけがピンとこないらしい。


「童話の”砂の精霊”の描写との類似点が多々あるわ」


「童話だとナメクジっぽい姿って書かれているけど、その飛び方は何だろう?」


所詮フィクションと言うことで、実際の物とは違うのだろうか。


『さばくではさっきみたいなのはあまりいなかったわ。よくたべていたのは、こんもり小さくふくらんだやつね。さっきのとくらべるとうすかったけど』


このスナネコの食生活はどうなっているんだ?


「どうやらこのスナネコは、肉体的栄養と魔力的栄養のそれぞれを摂取していたと考えられますね」


「そうか!その栄養のおかげで、精霊を狩れるほど魔力が身についたのね!」


「……最初の獲物はどうやって狩れたのやら……」こんな所で、”卵が先か鶏が先か”で悩むとは。


「我々の場合、経験を積んで力を得ていますが、スナネコも同様なのでしょう。今、何歳なのです?」


全くだ。よくそこまで成長し、生き長らえられたものだ。


『なんさい?よくわからない』


「じゃ子供は?何回くらい産んだの?」産んだって……ま、口調からメスっぽいしな。


『うーん……こどものこどものこどものこどものめんどうを見たところまではおぼえてるよ』


「む……孫、ひ孫、玄孫まで面倒を見たと。そこまで生きてきたなら、ネコマタになれても頷けますね」


『ぅぅ……ケットシーはむりなの?』元の話題を思い出したらしい。


「ええ、残念ながら」


「でもでもでも!ネコからネコマタだなんて一つの進化よね!ある意味成長したんだから、そのケットシーさんも鼻が高いはずよ!」


『そう、かな?』少し気持ちが上向いてきたっぽいスナネコ。


「そうですよ!しかもヒトの言葉を話せるレベルのネコマタです。ちょっと格が違います」


「あ!名前!名前なんて言うの?教えて!」この姉さんは、ほんと思いついたことを直ぐに口にするな。






『なまえ?なかまからは”すばやきつめ”ってよばれていたわ』ちょっと誇らしげだ。


「なにやら狩りが上手そうな名前だな」


『わたしのつめにかかれば、どんなえものもひとふりよ』お座りしながら胸を張るスナネコ、得意げです。


しかし一寸不満気なのが一名。ミリー姉さんだ。セツガさんに何やら耳打ちをし、セツガさんは苦笑しながら頷いてる。


「どうです?、もう一つ名前を付けてみませんか」


『なまえならもうあるよ』いぶかしげなスナネコ。


「修行次第ではヒトに変化も出来るネコマタです。そして我々とも知り合いになれました。いい機会ですからヒト用の名前を考えませんか?」


なるほど、姉さんはもっと可愛い名前で呼びたいのだろう。確かに”すばやきつめ”ってのは我々からすればネコ用の名前ではない。


「じゃあ童話の砂の精霊の名前なんかどうでしょう?なんて名前なんです?」


「「確か……」」


「サ〇アドだったな」

「サミ〇どんね」


「『……それはちょっと……』」セツガさんとスナネコがハモる。


「サ○アどんて何だよ!むかし話に出てくる登場人物じゃないんだぞ!」


「えー、私が読んだのだと○ミアどんだったよ。間違いないわ」自信満々な姉さん。ひょっとして本が数種類あるのだろうか?


「じゃあ、別の名前を考えます?そうですね……ゴンザレスとか」


「うん、セツガさんにネーミングセンスが無いことは分かった」


『そんなのだったら、とくにほしくはないんだけど』


「だめよ!やっぱり可愛い名前は必要よ!直ぐにぱぱっと思いつくから!」命名の機会を逃してなるものかと姉さんが慌てはじめる。




俺はやれやれとばかりに、一つ提案をする。


「そしたら、サミィとかはどうだ?サミア〇は野暮ったいけど、サミィにすると可愛くならないか?」


「「『ふむ』」」


『じゃあ、ヒトあいてにはサミィとなのるわ』


そう言ってスナネコはずっと座っていたクッションから降りると、俺の前でお座りをする。


「?」なんだろう。


『なまえつけてくれないの?』スナネコが見上げて問いかけてくる。


「きちんと宣言して命名して欲しいのではないのでしょうか?」


「かっこよく決めなさいよ」


いきなり無茶振りが過ぎる、どうせよと……


なんとなく右手が持ち上がり、スナネコの頭に手を添える。


「スナネコからネコマタとなり、更にヒトの言葉を操れるようになった汝を改めて命名する。”サミィ”と。」こんな感じが精一杯だ。


宣言した瞬間スナネコから淡く優しい光が発せられ、手を伝って俺も光に包まれた。何かが少し抜けたかと思ったら、すぐさま補充される。


光に包まれたのは一瞬だった。


『ありがとう。名付け親だからおとうさん、って呼んだ方がいいのかしら?』


サミィのたどたどしかった言葉が流暢に聞こえる。


「ぅえ?一体何が起こった?え?何が起きた?」隣の二人に問い質す。


「あんたとサミィが光って……魔力の交換?をしたのよね?」自信なさげに答える姉さん。


『命名のおかげで、もう一つ上に上がれたみたい。語彙が一気に増えて、もどかしさがなくなってスッキリしたわ』


その中でセツガさんが一人首をかしげている。


「どうしたの、セツガ?」


「いえね、経験を積んで少しづつ言葉を覚えるのだろうと思っていた所、命名して一気に言葉が流暢になるってどうなっているのかなと疑問を覚えまして」


『今なら説明できるわ』


今までの状態を見ていた俺たちからすれば、今のサミィの立派な言動は驚くばかりである。


そんな俺たちをよそに、サミィの説明が始まった。




サミィはあそこの砂地で砂の精霊を食べていたつもりだったが、実際は精霊たちを体内に入れていただけだった。


本当に食べていれば精霊の魔力は、即サミィの力として吸収されていたはず。


今まで砂漠で食べていた時も今回同様体内に入れていただけであったが、しかしそこは少量かつ薄いのが幸いし、時間をかけられたのでなんとか吸収できたのであった。


しかし今回は事情が違った。美味い美味いと感じ狩猟本能も相まって、ありったけ腹に納めてしまったのだ。


砂の精霊はサミィの腹の中で合体。身体を操って祠へ戻ろうとしたが、完全に主導権は握っていない。サミィは当然それに抵抗する。


力が拮抗していたのは砂地が精霊の縄張りであったからで、運が良かった


鳴き声は意識してやっていなかったらしい。抵抗するうちに自然に漏れ出たものらしく指摘した所、ころげ回って恥ずかしがっていた。


それを見た姉さんが”なにこれ可愛い”と身悶える。セツガさんみたいに黙って愛でれ、正直うざい。セツガさんの表情もヤバいがね。


運が良かったと言えば、俺たちがやってきて砂地から遠ざけたのもよかったらしい。力を振り絞ったので砂地から脱出できたのだが、その消耗のせいで脱出できても拮抗状態が継続してしまったのだ。


しかし俺の魔力の供給もあったおかげで、加速度的に精霊を取り込むことに成功し、言葉を操れるようになる。


しかも精霊の特性も取り込んでいたようで、名前を得ることによる能力増加も獲得。だがそこは完全ではない。


サミィはネコマタであって精霊ではないのだから。半妖半霊?妖精霊?……スナネコに精霊の力が若干プラスと言う方が正確か?ともあれ、ここら辺は憶測でしかない。




『ネコマタの力は説明できるけど、名付けによる力の覚醒?は恐らく精霊を取り込んだせいだろうとしか言えないわ』


「わかったようなわからないような?」


「全てのことが白黒はっきり分かる訳ではないですが、もやっとしますね。さっきの砂も精霊を取り込んだせいなのでしょうか」


『あ、おとうさん、私と魔力を交換したから多分砂との親和性が増していると思うわ』


突然の情報に、ギョッとしてサミィを見つめる。


「砂との親和性って!俺は水使いだぞ!悪影響があったらどうするんだ!」


『ん~?何か違和感ある?』不思議そうに尋ねるサミィ。


「……今のとこ、ない。いやいや、時間差で現れるかもしれないじゃないか」


『現れたとしても私の力よ。祠に引きずり込むなんてことはないから安心して』


そんな事起こってたまるかとばかりに睨みつけるが、どこ吹く風のスナネコ《サミィ》。




「おとうさん発言を思いっきりスルーしてるわね」


「ただ思考が追いついてないだけでは?」


呑気な夫婦未満の発言に我に返った。


「命名はしたが、おとうさんはやめてくれ。結婚すらまだなのに」


『あら?嫌だった?じゃあ名前教えて』


サミィの問いかけに俺たちはそれぞれ名前を教える。


「ね、ね、サミィちゃんはこれからどうするの?よかったらうちの子にならない?」


自己紹介もそこそこに、姉さんが興奮して勧誘する。愛玩用のネコじゃないんだから無理じゃないかな。


『住むにはちょっと閉塞感があるわね。遊びに来る位なら大丈夫だけど』


ほら、野生のスナネコはやはり砂漠がいいにきまってる。


「あぁーん、残念。遊びに来てよ、約束よ!」全くあきらめが悪い。


「私も待ってますよ。それで、これからどうするのですか?」セツガさんも残念そうだ。


『そうね……』ちょっと考えたサミィはさらりと返答した。




『暫くヴィリュークについてくわ』


”え゛~”と声を出すより、姉さんの方が早かった。


「ヴィリュークずるい!」


何と言ったものか、喉まで出かかっているのだが声にならず口をパクパクさせ、何とかひねり出す。


「なんで俺なんだ?」


『色んなものを見たいのよ。その点あなたのじゅうたんはうってつけだわ。よろしくね、お・と・う・さ・ん』


声にならず天を仰ぐ。やはりこいつはじゅうたんで移動中、先頭で寛いでいたスナネコだ。特等席を逃す筈がない。


「勘弁してくれ」


『ご飯は時々でいいわ、毎日は贅沢だもの。それとも娘を放り出すつもり?おとうさん』


「~~~~!!?!」


声にならない声を上げる。全く面倒なメスネコに掴まってしまった。


抗議の声を上げる姉さん、それを宥めるセツガさん。


その声にうんざりしつつ、これからの旅の道連れが現れた事に、まんざらでもないと思っている自分に気付いた。

元ネタは「砂の妖精」、精霊じゃないですね。

名前をお借りしました。調べてみたら原作は1902年発表とかびっくりです。

おねがい!サミ〇どん、おらに文才を!

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