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エルフ、砂に生きる  作者: 初荷(ウイニィ)
本編

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21/200

21・旅の道連れ

昨日は早々に毛布にくるまって寝てしまった。まぁ夜更かしする必要性がないということもあるが。


明るさで目を覚まし、あくびをしながら胡坐あぐらをかく。


……水の採集をせねば。手をついて立ち上がろうとすると何かが触れる。


なんだろう、と視線を向けるとサソリとトカゲの塊が!


反射的に飛び退く。手は?刺されていない!


動悸が激しくなり、深呼吸して落ち着かせようとする。この距離ならば被害にあうことはないが……




”なぁーぉ”


奴の声にハッとする。……これはひょっとして昨日と同じことを繰り返しているのか?


よく見てみるとトカゲの首は折れ曲がっており、サソリは昨日と同様にとどめを刺してある。


”たしったしっ”スナネコが砂を叩いている。


その様子はさながら”はよ飯を用意しろ”と言ってるかのようだ。


懐かれている……とは言わないな。使われているという方がしっくり来る。


”にゃあ”と鳴いてご飯をねだる方がまだ可愛げがあろうに。


獲物を獲ってきて対価を要求する辺りは、”おれとおまえは対等だぞ”と聞こえて仕方ない。こいつ本当にネコか?


「朝は色々やることがあるんだよ。しばらく待ってろ」理解できるかは別として奴に声をかける。


と言いながら先ず干物を火にかけ炙りはじめると、すぐに寄ってくる。


「熱いから手ぇ出すんじゃないぞ。焼けたらちゃんと分けてやるから待ってろ」


……お座りしてちゃんと待ってるよ、こいつ。視線は干物に釘付けだけどな。


日課の水採集から始まり、朝飯の支度、昼と夜の飯の仕込みも済ませる。




そうこうしているうちに朝飯完成。


内容は昨晩と同じになった。違うのは、俺の向かいに一緒に食事ととる相手がいることだ。


スナネコだけどな!


何を食べるか分からなかったので、取り敢えず待ち焦がれているであろう干物を半分。


トカゲは何となく俺がいやだったので、奴の所に押し付けた。


砂漠の生き物は水分を獲物から摂取すると聞いた気がしたが、物は試しに水を少し別の皿にいれてみた。


サソリは何となく昨晩の物と一緒にしまい込む。


さっさと食べて出発するか。




心配をする必要は何もなかった。


奴はきっちり完食し、俺の干物を狙ってきやがった。


食い足りないなら他の獲物を狩って来いよ。ヒト様の食事を狙うんじゃない!


用心しておいてよかったわ。


ひと悶着の後、じゅうたんを広げて後片付け。次々と収納魔法陣へ放り込む。


その横では奴が”くあぁぁぁ”とあくびをし、ながーく伸びをしている。


いい気なもんだ、こいつこの後どうするんだろう。


気にしても仕方ない。いつもの儀式を始めよう。


両手を打ち鳴らし広げつつ一回転。港町・オアシス・王都のマーカーを確認。地図と照らし合わせて現在位置を確定。


王都の方向が分かればいつかは着くのだが、現在位置が分かれば残りの距離や日数がハッキリする。


つまり食糧と水の消費ペースが調整できるということだ。


今位ならば問題ない。たかがネコ一匹で干物を余分に消費しただけだ。ペースを上げるほどでもない。


「お前はどうするんだ?ここらを縄張りにでもするのか?」じゅうたんを起動しネコに声をかける。


返事が返ってくる訳もなく、ネコは毛づくろいをし始めた。


「じゃ、またどこかでな」返事を期待してしまった俺は苦笑いを浮かべ、じゅうたんを発進させる。






ああ、うまかった。ネコはしみじみ思う。


ヒトの餌ってこんなにもうまいものだったなんて。


こんな美味い餌に慣れたら、普通の獲物なんか食べられない。


この砂漠で、常に獲物にありつけるとは限らないのだから。まぁ、ヒトに渡した獲物程度なら探せばなんとかなる。


腹がくちくなり、ゆったりとした気持ちになったのは何時以来だろう。


ヒトが何やらしゃべっているが、無視して思い切り伸びをし、ついでとばかりに毛づくろいも始める。


するとヒトがひらひらしたものに乗っていくではないか。


瞬間、野生の本能スイッチが入った。猛然とダッシュし、完全に加速が終わる前に飛びかかる。


すると、ひらひらしたじゅうたんの端ではなく、じゅうたんに音もなく飛び乗ってしまった。


更に加速し、後ろに引っ張られそうになるのをじゅうたんに爪を立てて体勢を整える。


大きな耳と尻尾はピンと立てられ、目は見開く。


しかし真っ直ぐ立っていた尻尾はゆっくりと下がり、腰を下ろす。


突き立てられていた爪は収められ、疾走していないにもかかわらず砂漠の風が身体を流れて行く。


初めて感じられる感覚にうっとりとしながら大きな耳は垂れ下がり、前足は折りたたまれ伏せの姿で目が細まっていく。


しばらくして、低く小さく”ゴロロロロ”と鳴き声が続いたのは気のせいだったであろうか。




なんとなくいつもより気持ち速い速度で飛ばしたので、結構な距離を稼げたはずだ。


じゅうたんを着陸させ昼飯の準備をしようと振り向くと、そこには大あくびをしているスナネコの姿が。


……いつの間に乗ったんだ。


こっちの気を知ってか知らずか、じゅうたんを降りたスナネコは大きく周回し始める。


その様子を目で追っていたが、ハッと飯の支度を思い出した。




その後奴は俺の前に陣取り、しっかり飯を平らげた


そして先程座っていた後部ではなく前部に座ると、後片付けをしている俺に向かって一声。


”なぁーぉ”と鳴きながら、立てた尻尾に先をちょっと曲げつつゆらゆらと振る。


こいつは俺を召使いか何かと思い違いをしてないだろうか。少しイラッと来る。


片づけを済ませじゅうたんを発進させると、奴の尻尾の振れ幅が大きくゆっくりとなっていく。


そんな後ろ姿を見て”スナネコもじゅうたんでの移動が心地よいのかな”と思うと、先程の不快感が霧消してゆくのが分かった。





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