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腐れ縁・路地裏・鎧袖一触(決心)

ミスで予定外のつじつま合わせをすることに……(o_ _)o))

話が遅々として進まない(*ノωノ)






締め切った室内でラルスの手は止まらない。


薬包に乗せられた材料は次々と秤で計量される。


彼の目分量は正確で、ごくまれに少量修正される程度である。


それを繰り返す事数十回。


大振りの薬包紙の上に数種類の生薬が計量されると、ラルスは慣れた手で薬包紙を折り・包んでいく。


この一包が一回分の煎じ薬であろう。


包まれた薬包は山積みにはされず、細長い小箱に十数個単位で並べて封をされた。


「随分と密封性の高い木の箱だな。ぴっちりと閉まるし、蓋との境目が線にしか見えん」


木目の細かい、組み継ぎで作られた木箱である。


「薬専用の保存箱だ。この木で作られた箱は、湿気防止に優れていて重宝している」


会話の間も手は止まらない。


木箱を重ねあげると、今度は組み紐で複雑に結び上げていく。


「随分と厳重だな」


「これは一種の封だ。結びを解くのは難しくないが、元通りに戻すのはまず無理だ」


箱の中をすり替えられたらすぐに分かるという事か。よく考えられている。




いざ暇を請おうとするところに、ナフルさんから呼び止められた。


「ラルスさん、少しいいかしら」


ナフルさんは自身の店の一室であるにもかかわらず、声を潜めて口を開いた。


「ボノオウ苔の毒の解毒は決して難しいものではないわ」


いままでふんわりと触れてきた話題に、正面から語り掛けてきた。


「そ、それは」


ラルスが二の句を継ぐ前に、ナフルさんは最後まで聞くように押し止める。


「けれどもこの毒を受けて回復しても、後遺症が残ると言われているのは毒の効果のせいではないの。知っている?」


ふるふると首を振るラルス。


「この毒を盛られる主な者は身分が高いヒトばかりなの。そして解毒剤は一・二を争う不味さ。口が肥えた者ほど耐えられないわ。身体が不調を訴えている時は愚痴りながらも服用してくれるけれど、歩ける程度に回復すると素人判断で止めてしまうの。それが一生を決定づけるとしてもね」


ラルスの目が変わるのが分かった。


「完治までしっかりと飲ませ続ける事。煎じ薬は冷める程えぐみが増すわ。冷めた薬を一気に流し込むのも選択の一つだけれども、熱いうちに飲ませるのならば、これを一垂らしするといいわ」


「マルバオの蜜」


ナフルさんがわざわざ集めさせたハチミツだ。


「一垂らしで飲みやすさが格段に上がるけれど、これを知ってしまうと必ず“もっと入れろ”と要求されるわ。けれど一垂らしで留めたとしても、完治まで量が絶対に足りないの。その場しのぎで多めに使ってしまったら、後の服用がきつくなる。患者に与える時は注意して与えてね」


ラルスは感謝の言葉を述べ、両手で押し頂いた。




薬の調合は無事完了した。次はそれを持って再び砂漠を縦断せねばならない。


だがその前にギルドの魔道書簡伝達器で、王都にいるコーデル会頭へ無事の調剤を書簡で知らせなくてはならない。向こうは向こうでやきもきしているであろうから。


ラルスと連れ立ってギルドに入ると、受付カウンターに見知った男が立っているのが見える。


丁度よかったので彼の所へ進むと、ラルスが少し遅れて跳ね上げていたフードを被るのが分かる。


何かあるのかと少し訝しんだが、追及するほどのことでも無かろうと、そのまま流した。


「いいかな?魔道書簡を送りたい」


「久しぶりだな、ヴィリュークさん。あのグリフォンは元気にしているか?」


海賊船騒動でバドの世話を頼んできたのが彼だった。そう言えば彼の名前も───


「ああ、元気にしている筈だ。今は実家に預けているんだ。こっちは何かあったか?ラルス(・・・)


彼の名前もラルスだった。


ここであれこれと口を開くのも失礼であろうから、俺は努めて平静を保って続ける。


「細々としたトラブルはいつものことだ。個人的にはある。たった今起きた。なぁ、フード被るのが遅せぇンだよ」


「うるせぇ、お前がいると知っていたら、来なかったよ!」


いきなりカウンターのラルスが大声を張り上げたかと思うと、フードのラルスは負けじとかみついた。


どう見ても知り合いで間違いない。


「へっ、相変わらず薬臭ぇ奴だな」

「そう言うお前は、いつまで経っても指にインクが染みついてやがらぁ」


放っておくと延々と角を突き合わせていそうなので割って入る。


「旧交を温めるのは後にして、先にこちらを頼む」


“けっ”とか“ちっ”とか聞こえたが、分別はまだあったようだ。


「ラスタハールのグラッスル商会、コーデル会頭宛に。文面はこれだ」


あらかじめ用意しておいた当たり障りのない文章である。それが意味するところは“無事入手”と“明日出発”だ。


魔道書簡の利用料として、銀貨を積むのを忘れない。


「少し待っていてくれ」


俺に対する口調は至って普通であったが、(ラルス)を見る目は穏やかでなかった。何をそんなにいがみ合っているのか。


ギルドのラルスはトレイに文面と銀貨を乗せて奥の扉に入っていった。


魔道書簡伝達器は国内で急速に広まっているが、国とギルドで厳重に管理されている。


情報の伝達速度は一種の力だ。


現在その対価は決して安くは無いが、金を惜しまない者はそれを理解している者である。


横を見るとこちらのラルスはそっぽを向いている。


「馬が合わないのは分かったから、相手に構うな、口を開くな、仕事と割り切れ」


「向こうが絡んでこなけりゃ、な」


待つこと暫し、ギルドのラルスが扉の向こうから戻って来た。


「向こうの受取りを確認した。今日中に書簡は配達されるだろう───」


「言い争いは無しだ」


気配があったので、機先を制する。


予感は正しかったようで、カウンターの向こうで開き掛けた口が閉じられた。


「どんな因縁か知らないが、仕事であれば黙殺しろ。それに徹しろ」


不満そうにこちらのラルスがボソリと言った。


「ガキの頃からの因縁なンだから、簡単に割り切れねぇって」

「それはこっちのセリフだ」


お互い目を合わさないように、俺をねめつけて言った。


「同郷でガキの頃の因縁って、同じ女の子でも好きになったとかじゃないだろうな」


二人とも視線の外し方が心なし大きくなった。


「二人で取り合っていたら二人とも振られて───」


うつむき加減が増してきた。ひょっとしてさらに……


「そしたら本命は別にいた」


ぐるっと首を返す二人のラルス。


「魔道書簡に問題はない。気を付けて行ってこい」

「いこうぜ。明日は早いぞ」


なんだお前ら、図星かよ……くだらん。




★☆★☆




酒癖の悪い奴は何処にでもいるものだ。


表通りに近い酒場なら客筋も悪くは無いのだが、奥へ行くほど癖のある客が多くなる。


安酒を求める者。裏からくる高級酒が目当ての者。脛に傷を持つ者。男だけではない。女だって同様だ。


トラブルを起こしたその手の輩には、お話ししたり肉体言語(おはなし)したり脅迫(おはなし)するのが、酒場の用心棒の仕事だ。


その用心棒の出勤は夜も更けてから。


だいたいその頃に酔いも回って気が大きくなった客が事を起こす。


今晩も酔っ払いを一撫でして路地裏に転がしてやる。


「お客さーん、うちはそーゆー店じゃないんですよう」


倒れ込んだ客の胸ぐらを掴んで起こすと、そのまま壁に叩き付けた。


背中を強くぶつけてやると、“ぐふっ”と音がするので慌てて飛びすさる。


“ごほっごほっ”


危うく吐瀉物をひっかけられそうだった用心棒。だがそのせいで再度地面に転がる元客。


「これに懲りたら次はちゃんと娼館に行くんだな」


腹いせに蹴りを一発入れて踵を返すと、人の影が一つ佇んでいた。少なくとも酔っ払いではなさそうだ。


「誰でぇ……?」


その姿から男であることは間違いない。


「カシラぁ、いや元カシラか。場末の酒場で用心棒たぁ落ちぶれたモンだな」


「なんだおめぇか。カシラとか呼ぶんじゃねぇよ。盗賊団は離散(ばらけ)ただろうがよ」


どうやら二人は脛に傷を持つ者同士のようだ。


「おうよ。代わりに俺が面倒見てやってるぜ」


得意満面で男は言うが、対して元カシラは鼻で嗤い返す。


「その割には実入りが悪いみたいだな。お前らから逃げおおせた商人たちの話はよく聞くぜ」


「うるせえ。ちゃんと儲けは出てるんだよ、あんたの時とは違ってな……っと、今日はやり合いに来たんじゃねぇんだ……儲け話がある。一枚かまねぇか?」


その言葉に元カシラは最近の噂を思い返すが、大商会の縦断話も個人商会の高額品の輸送の噂も耳にしていなかった。


「ガセじゃねぇのか?」


「ガセじゃねぇ。今回のヤマはお貴族さまからよ。極秘に運ばれる荷物を奪って届けるだけで金貨五百だとよ。しかも荷運び人は目立たないように人数を絞っていて立った二人!経路も分かってるし、あんたが来ると言やぁ手勢ももっと集められらぁ」


「……」


元カシラも悩み始める。


金はあるに越したことは無いが、特に困っている訳でもない。それより気になるのは貴族からのネタであること。単純な強盗(おつかい)ではない筈だ。


怖気づい(ビビッ)てンのか?前金で五十枚寄越してるから金払いは問題ないぜ」


ここで一つ引っ掛かった。経路が分かるという事は、当時使っていた渓谷の近道だろう。あそこをわざわざ頻繁に使っていた奴と言えば一人しか思い浮かばない。


「砂エルフか?」


「察しが良いじゃねぇか」


「やめとけ。俺達が仕事していた頃と比べると、奴の伝手は太くて強いのが増えたぞ」


男は“それがナンボのモンじゃい”と強がる。


「他を当たってくれ。俺はその手の仕事はもうやらん」


(きびす)を返して路地の奥を見ると、お話していた“お客”の姿は消えていた。


もう一撫でするつもりだったのだが面倒くさくなり、元カシラはそのまま路地の奥に消えていった。


“どうすっかな……”




★☆★☆




砂漠の旅の朝は早い。


ベッドでいびきをかいていたラルスを叩き起こし、門まで向かいっている最中だ。


朝が早いのは俺達だけではない。


王都へ向けて旅立つ馬車が見えるが、俺達はそれらと違って逆走している。


彼らは安全ルートのオアシス経由。俺達は時間重視の砂漠縦断だ。


砂漠側の門に着くと、他にも数組リディを連れた者たちがいる。


同じ砂漠縦断と言っても、彼らは盗賊が出ない迂回ルートで、俺達は襲撃上等の渓谷ルート。時間と金を天秤にかけた結果のルート選択だ。


そこに安全を積み上げても、俺達には時間側に天秤が傾いた。


その門前の広場の傍らに、旅装ではない男の姿があった。


見送りか?とも思ったが、周囲にそれらしき者はいない。男はぐるりと見渡すと、明らかに肩を落として街側へ戻り始めた。


つまりは俺達の方へだ。


特に不審な様子も無く擦れ違ったのだが、男は俺に向かって一言告げた。


“待ち伏せされてるぞ”


振り返って見るが、男は背を向けたまま歩き去っていった。


知り合いかと思い返してみるが心当たりはない。


「今日出発か、気を付けてな」


知り合いの門番に声を掛けられて我に返る。


「お、おう。ありがとう」


反射的に挨拶を返す。


誰とも知れない忠告。意図は知れないが用心するに越したことは無い。




およその襲撃ポイントは分かっている。


ラルスとリディ二頭はその手前で待機させる。


遠くから射かけられたら庇いきれないからだ。


例の警告が本当ならば、崖の上に射手がどれだけ配置されていることやら。


時間があれば登攀地点を探して奇襲を仕掛けるのだがそんな暇はない。そこでサミィにお願いすることにした。


まぁ、なんだ。


彼女を崖上に投げて、そこにいる敵を無力化してもらう寸法だ。


しかしネコが“仕方ない”とばかりに息を吐くのを目撃することになろうとは。


頼んだ時は二つ返事ではなく、じっとしばらく俺の顔を見たのち“ヘマしないでよね”と告げて了承したのだ。


サミィと似た重さの石を投げて加減と角度を確かめたので、試みは問題なく成功し崖の上から顔をひょっこり覗かせる。


頼むとばかりに手を振ると、サミィもヒトガタになって手を振り返してきたがそれも一瞬。


本来の姿に戻ると、崖の向こうに姿を消した。




そして気配を探りながら、足早に渓谷を進んでいく。


砂岩の渓谷なので身を隠せるのは岩陰くらいだ。通過後の背後からの襲撃を警戒して進んでいくが、実際はその様なことも無く、幾つかの当たりを付けている場所で待ち構えているのだろう。


果たしてその地点に辿り着こうとすると、弓音に気付きすぐさま脇に飛び退いた。


地面に矢が突き刺さり、続けざまに二射三射とくるので、慌てずめぼしい岩陰に身を隠したが、随分と殺意が高い。


「大人しく出てこい!荷物を渡しゃあ命だけは助けてやる!」


殺す勢いの射撃だったくせに、大声で盗賊の常套句が発せられた。単なる金目当てとも思えない。だとするとオルセン伯爵の政敵から雇われた奴らか。どちらにせよ今回は相応の目に遭ってもらおう。




★☆★☆




間に合わなかった。


ヴィリュークが言うヒトを見つけたと思ったら、そいつらは立ち上がって崖下に向けて矢を放った。


本来(ネコ)の姿では一撃で仕留めきれないと感じた私は、間合いに入ったと同時にヒトガタに変化する。


同時に背中の砂の精霊を先行させ、しゃがんでいる一人の男の背を、魔力の爪で素早く切り裂く。


男は悲鳴を上げて弓を取りこぼし、崖下に落ちていく。


隣にいた男は素早く弓に矢をつがえるが、引き絞るには至らない。


先んじて一歩踏み込み、半身になろうとした男の脇腹を蹴り抜いたからだ。


「あ、あああ!」


ダメージとしては然程ではなかったが、蹴り飛ばされて倒れた先がいけなかった。


上半身が崖の外に出ると、バランスを取り損ねた男は崖の上から姿を消した。


まだ離れた場所に弓を持った二人がいる。


こいつらは既にこちらへ狙いを定めている最中だ。


“やれ!”


砂の精霊に指示を出すと、二人は砂の旋風(つむじ)に包まれる。


「ぐあっ」

「ぶぺっ」


十分な隙を得た私が駆け寄ると、その二人も同じ結末を辿った。




★☆★☆




今回は見逃さないと決めていたが、どうしたものかと岩陰で悩んでいると、崖上から次々とヒトが落ちてきた。


どうやら崖上にいた射手をサミィが仕留めたらしい。流石である。


これで上から射かけられる心配も無くなったので、俺は岩陰からゆっくりと姿を現す。


「で、姿を現せばなんだって?」


頭目と思しき男が落ちてきた男たちを一瞥し、邪魔だとばかりに顎をしゃくって合図をすると、すぐさま男たちは後方へ運ばれていった。


「上の奴らを始末出来たからと言って、いい気になってんじゃねぇぞ。まだこっちにはこんだけいるんだからなぁ!」


「荷物を渡せば見逃してくれるんじゃなかったのか?」


俺はこれ見よがしに付与ポーチから梱包された荷物を覗かせる。


「寄越せば半殺しくらいで済ませてやるよ。仲間の仇も打たなくちゃ示しがつかねぇが……ちと足りんか。街にいるお仲間のエルフも襲っておくか」


港街にはエステルは居らず、となるとエルネスト夫妻くらいしか思い浮かばない。


“どくん”と心臓が脈打つのを感じ、左の義手を魔刀の鞘に添えると、水がぐるりと鞘にまとわりつく。


この位置では少し奴らに遠いので、近付きつつも右手でポーチをまさぐって投げナイフを三本ばかし手に取った。


「油断が過ぎるんじゃないか?」


「余裕って言うんだよ。お前ら、やっち──」


最後まで頭目には喋らせなかった。


ナイフを三連投して牽制、ではなくしっかりと当てていく。


すぐさま走り出しながら、左の義手から出した水を操り魔刀の鯉口を押し出す。


頭目を狙うには前にいる手下二人が邪魔だ。


ナイフが刺さり呻く仲間に動揺したのか、盗賊たちが浮足立つ。


間合いに入るには十分な隙で、男二人がこちらに気付いた時にはもう遅い。


まずは逆袈裟で一人、返す刀で隣を袈裟で切り倒す。


「油断だよな」


もう一度宣言してやった。


「囲んでなぶり殺しにしてしまえ!」


目前の手下二人を切り倒され、頭目は他の手下をけしかけるが、自身は後退って保身に走った。


腰が引けている奴らに後れを取る訳がないだろう。ましてやエルネスト夫妻を害すると言われた以上、甘い対応は夫妻を危険に晒してしまう。


俺は身体に疾駆招来(身体強化)を施し、決意をもって魔刀を振りかぶった。




★☆★☆




ヴィリュークがネコと共に渓谷の奥に進んでからかなりの時間が過ぎた。


何でも盗賊が待ち伏せしているのでちょっと退治してくるとか。ちょっととか子供のお使いではあるまいし、ましてや一人で何とか出来るとも思えない。


無茶だと引き留めたのだが、彼は一顧だにせず行ってしまったのだ。


ここからならまだ引き返すことは出来るが、先代様が薬を待っているからには先に進まねばならないのだが、肝心の案内役が行ったきり帰って来ない。


逡巡すること暫し、俺はリディにしっかりと(はみ)を噛ませて鳴かないようにし、様子を見に行くことにした。


勿論ちょっとでもヤバければ、リディに乗って逃げることにする。




リディに乗らずにおっかなびっくり進んでいたので、時間はかかるが安全には変えられない。


きつめのカーブで先が見通せない所まで来た。慎重に歩を勧めるが、リディの鳴き声は何とかなっても足音までは消せなかった。


それでも慎重にカーブの向こうを覗くと、遠くにに二つの影が立っていた。筈なのだが、瞬きすると影は一つになっていた。


その場でじっくりと目を凝らすと、その正体が明らかになる。


思わず安堵の溜め息を吐きリディを引いて駆け寄るが、凄惨な状況に二の足を踏んでしまい掛ける声を飲み込んだ。


「ラルスか、待っていろと言っただろう。まぁ、時間がかかったからな。待たせてすまん」


ヴィリュークが剣を振ると、刀身に纏わりついていたものが地面に払われる。


水?血ではない。


しかし周囲には血痕が散らばり、彼が斬ったと思われる者が多数横たわっている。うめき声も聞こえるが、死んでいる者もいるだろう。


ヴィリュークは刀身を光にかざすが、そこには血糊の跡も見えず綺麗なものだ。


“なぁう”


鳴き声が聞こえ、彼のネコがそこに居ることに気付いた。


「ああ、ありがとう。助かった。そうだな、先を急ごうか」


こちらは見ていない。やはりネコと話せるのか?


「あんたがリディを連れて来てくれたからすぐに出発できる。先を急ごう」


「あ……あいつらはいいのか?」


俺の問い掛けに、ヴィリュークの返事はそっけないものだった。


「放っておけ。出血で長くは持たない」


その表情は甘くなかった。






インボイス法案のヤバさが報道されるようになりましたね。

推しの小説・漫画・アニメの関係者様の為にも、廃案になる様に声を上げていきましょう。

あ、農家の方たちも忘れてはいけません。


評価、一言、イイねボタンお待ちしております。

お読みいただきありがとうございました。



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