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砂漠で朝食を

連続更新三日目、本章完結です。






《さぁ、このオークションも終盤に差し掛かって参りました!次の商品はこちら!今回のオークションの切っ掛けである海賊船んんん!もとい!中古の外洋船です!船の状態は事前にお配りした書類の通り!港湾組合のベテラン職員による査定でございます。それではお手頃価格の金貨一万枚からスタートです!》


“ターン!”


木槌でテーブルを叩く音でオークションがスタートすると、すぐさま“二万!”、“二万五千!”と値が上がっていく。


聞く所によると新造船で金貨十万枚かららしく、あれこれとこだわりを持って注文しようものならとんでもない額になるそうな。


それゆえに船は複数の商会が出資して建造するものらしい。今回のオークションも告知から開催まで期間が短かったので、中古と言えども複数の合同商会が競い合っている。


《おめでとうございます。中古外洋船、二番のお客様落札です。ありがとうございます》


ぼーっとしていたら、いつの間にか船が落札されていた。




《次の商品です。皆さま恐れ入りますが、大きな声を出さないようご協力お願いいたします。それでは登場してもらいましょう。グリフォンの子供、その突然変異個体でございます》


ハンマー片手に司会者(オークショニア)が進行する。彼の“お願い”を聞き入れた来場者たちは息を潜め、この国では目撃例のない幻獣の登場を待ち構える。


“KyoRururuuu!”


鳴き声とともに姿を現した幻獣を目にし、会場からは低いどよめきが漏れる。


《今回は少し声を落として参ります。まずは金貨───Kyurururuiiiiea!》


グリフォンの鳴き声が割って入り、進行の声が明瞭に聞こえない。司会者が舞台袖に向けて合図をすると、飼育員なのだろうか、必死に宥め始めるが一向に効果はない。


“Kyuuuuuu、Kyuuuuuu”


群衆に刺激されたのか、鳴き声は増し、羽ばたきも加わって興奮していく。これはもう宥めるのは無理だと司会者が退出の合図を出そうとしたとき───


“シャァァァァ!”


猫の威嚇音が響くと、グリフォンの鳴き声は止まり、広げ羽ばたいていた羽を小さくたたみ込んだ。


音の発生源は俺の頭の上だ。肩までよじ登ったサミィは俺の頭に前脚をのせ、怯えて威嚇していたグリフォンを叱りつけたのだ。




“な゛ぁう”


“Kyu、Kyururu……”


“に゛ゃぅるるる”


詳細な内容は分からないが、サミィがグリフォンを叱りつけ、言い訳も許さず黙らせた……のだろう。


《大変失礼しました。それでは再開させていただきます!》


「ちょっといいかね」


仕切り直そうとした司会者へ、客席から声が上がる。本来であればオークション中の質疑応答はご法度なのだが、不手際を起こしてしまったのはオークションハウス側である。仕方なく司会者は例外を認め、手を差し伸べて先を促した。


それを同意と受け取った客は、一つ咳払いをして口を開いた。


「今、グリフォンを鎮めたネコだが、それについて書類に記載がない。あのネコがいるのならば調教、ん゛ん゛ん゛……飼育も容易になろう。あのネコは付いてくるのかね?」


その質問に周囲の視線が一斉に集まる。とは言っても未だ頭上にいるサミィに集まっているのだろうが、居心地が悪いことに変わりはない。


そして壇上の司会者からも視線で問い掛けられるが、黙って目を閉じかぶりを振る。


《あのネコはあちらのお客様のパートナーでございますれば、残念ながらそのご要望にはお応え致しかねます》


サミィは俺の頭に足を置いたまま周囲を睥睨すると、“失礼しちゃうわ”とばかりに“なぁお”とひと声上げた。




《では、再開いたします》


熱かった会場の空気はすっかりと冷えてしまっていた。これから競り掛けられる商品はまだまだあり、会場を熱くさせねば値も吊り上がらない。


ここで司会者は選択を迫られる。


この商品(グリフォン)で改めて場を温めるか、叩き売ってでもこの空気をリセットし、次の商品で仕切り直すかだ。


《グリフォンの突然変異個体、金貨五百からスタートです!》


子気味良い木槌の音をさせて開始する。


だが、会場からは追従する声が上がらない。


《金貨五百枚、ございませんか?まだ若い個体ですので、躾は容易でございます。いかがでしょうか》


司会者は会場をぐるりと見渡すと小さく頷いた。何処かから指示が出たのだろう。


《では金貨四百枚!四百枚からです》


止む無く値を下げて声を張るが、それでも会場からは声が上がらない。


《そちらのお客様、いかがでしょうか。四百です》


異例の事だ。なりふり構わずこちらに声をかけて来る。


「いや、即金で出せるのは百しかない」


もともと競り落とすために来たのではない。グリフォンの行く末を見守る為に来たようなものだ。即金百枚と口にはしたが、出せる金はそれ以上に貯め込んである。


《三百五十!》

「百二十」

《三百!》

「百五十」

《───二百七十!》

「……に、にひゃく」


商売人の威圧に思わず口走ってしまった。


《モッテケドロボウ!金貨二百枚で落札っ!!》


周囲から拍手が沸き起こる。


向こうにしてやられた。


サミィがいるから世話はなんとかなるだろうが、連れまわすわけにもいかない。


どうしたものか、はぁ。




会場の空気にうんざりしてその場を後にするが、扉をくぐり・閉まるまで背後から拍手が浴びせられた。


「ご案内します。こちらへどうぞ」


横から声をかけられて何事かと思ったが、落札商品の手続きへの案内係だった。


案内されるがまま一室に入り、支払いと何枚かの書類にサインを済ませると、ようやっとご対面である。


“Kyururuie……”


一鳴きして羽を震わせるグリフォン。こうしてみるとサミィとは違った可愛さが……ある、と思う。


まだ体格も小さいからそう思うのだろうが、成長して馬くらいの体高になればそうも言っていられない。


なんでも野生種は馬も捕食するのだとか。それどころか稀に交配対象にもするらしく、そうして生まれるのがヒポグリフだそうな。これまた凶暴でヒトに慣れることは無い。


もっともらしく言ってはいるが、全て資料によるものだったり、ヒトから仕入れた情報だ。


「いかがなさいますか?このままお連れになりますか?ご自宅への配送も承りますが」


案内係の言葉に、はたと気付いた。


“どこに連れて行こう?”


『にゃぁう(だしてやって)』


どうしたものか結論が出る前にサミィが焦れて声をかけて来た。


「え?大丈夫なのか?」


『ぐぅるるるる(子供の面倒を見るのは親の務めよ)』


「お前がそう言うなら」


案内係は、エルフとスナネコのやり取りを見て見ぬふりを貫き、彼からの“檻から出してくれ”と言う言葉にも追求もせず、黙って檻の扉を開いた。




何年も運び屋をやっているが、定宿はあっても家を借りようと思ったことも無かった。


私物はじゅうたん収納で収まるし、知人は多くとも友人は少ない───はずが、ここ数年で交友関係は様変わりした。


けれども宿暮らしは相変わらずで、今回の件はほとほと困った。もっとも頼れる相手は決まっているのだが。


「かわいい~。この子が例の?」


先ずはエステルの所。


自分が頼れる相手は限られている。もちろん彼女にも情報収集で頼った。


目の前ではサミィとグリフォンがじゃれ合っている。まだ仔グリフォンということもあって、サミィより大きいくらいで収まっている。成長したらどれくらいになるのだろうか。


「ああ、例の奴だ。詳細は省くが、面倒を見ることになった」


その瞬間、彼女の目つきが変わった。


「うちは駄目よ」


「いや、まだ何も……」


「うちに置かれても責任持てないって。面倒も見れない。そ、それとも、い、一緒に住んで面倒を見てくれるってなら、はな、はなしは別だけ、ど……」


最後の噛み噛みのセリフは勇気を振り絞ったものなのだろうが、自分はまだそれに応えることは出来ない。


「いや、すまない。甘えすぎたな。別の方法を考えるよ。サミィ、散歩の続きだ。行くぞ」


「ちょ、ま、まって。うちの親の所ならきっと!」


エステルは店の奥に引っ込むと、慌てて戸締りを開始した。


慌ただしくエステルの実家、エルネスト香辛料店へ赴き、事の次第と事情を説明するとあっさりと了解を得られた。


けれども協力はするが日参して面倒を見る事や、仕事で街を離れるときは予め知らせる事、つまりは丸投げ厳禁と約束させられたことは言うまでもない。




★☆★☆




グリフォンの事を頼みに行ったその日、母さんから久しぶりに泊まっていけと言われた。


ヴィリュークはサミィとグリフォンを置いて定宿へ帰っている。


久しぶりに親子水入らずで食卓を囲み、酒瓶の封が切られたのだが、父さんは早々と酔いが回って寝室へ。


「父さんは酔い潰したし、それじゃあ聞かせて貰いましょうか」


「えぇっ?」


物騒な事をいう母がいる。


「何を話せって言うのよ」


「決まってるじゃない、エステル。ヴィリューク君の事よ。好きなんでしょ?あれだけ一緒に旅していて、何もないってこと無いわよね?彼の様子からしても、あなたに対してまんざらじゃない事は明白だしね。告白は済んだ?もうどこまで行っているの?あら?ひょっとしてまだなのかしら?もしかして恋敵がいるとか?」


お酒のせいもあって母の舌の滑りが良すぎる。答えを返す隙もありゃしない。けれども“恋敵”と言う言葉に、母はふっと自問自答し始めた。


「恋敵かぁ……彼も仕事付き合いは広そうだけれども、交友関係はそうでもなさそうなのよね。コナかけそうなのはギルドの窓口の女の子達だろうけれども、彼がそれに引っかかるわけもないし……あー、それでもラスタハールの受付嬢が良い線まで行ったけど駄目だったと聞いた事が……」


それはウルリカさんの事だろうか?彼が砂嵐で行方不明になった時の事だろう。だとしたら彼女自身で身を引いたという事かしら?


「普人の女の子たちは私たち(エルフ)に憧れても、それ以上は二の足を踏むみたいだからねぇ」


恋愛対象になっても結婚対象にならないのは、種族の寿命の違いからというのが一番の理由にあげられているのだ。


「となると~、彼が救護院に担ぎ込まれた時に一緒にいた子。もう何年前かしら。えーと、ほら───」


「ナスリーン?」


なんで努めて平静に彼女の名前を言わなくちゃいけないの。


「そうそう、ナスリーンさん。度忘れしちゃったわ。エルフにとって忘れようがない名前なのにね。あなたは小さかったから覚えていないでしょうけれど、王家で取り換えっこ(チェンジリング)で生まれた子もナスリーンって名前なの。あの時は、あなたのお師匠様のヤースミーン様が国から呼ばれてね、騒動を治められたのよ。あの方(ナスリーン様)も今どうしてらっしゃるのかしら?普通に考えれば、どこかに領地とか大邸宅を与えられて、のんびり過ごしているのが相場なんだろうけれどもね」


はい、彼女がそのナスリーン様、ご本人ですよ。


「……エステル、何か知ってる?」


「何のこと?」


そのまま独演会を続けてください、おかあさま。


母よ、娘の顔色を窺わないでください。お願いですから。


「そんなにジロジロ見ないでよ。居心地が悪いわ」


ダメ、バレそう。


「本人?」


「本人って?」


グラスを傾け、飽くまでもシラを切る。


「そうそう、それでそのナスリーンさん、ハーフエルフなら彼にとってもアリなのじゃないかしら。曲がりなりにも砂漠を同じじゅうたんで横断した間柄なんだし。それにちょくちょく彼の手助けを二人ともやっていたのよね。彼女も憎からず思ってないとそこまで出来ないわよ」


母はそこでグラスをクイッとあおり、身を乗り出した。


「いい感じに相手に意識させて接近するには、共通の話題・同じ仕事を共有する事よ。うってつけのものが有るじゃない。いい名目があるのだから、やっちゃいなさいな。リードするチャンスよ。例えば───」


母は私を焚き付けるだけでなく、その手段まで指示し始めたのだった。




★☆★☆




「ほうら、今日はごちそうの日だぞう」


店もひと段落した頃合い、エルネストが自身の使い魔であるフクロウに給餌を始める。


「あんたが使い魔持ちで、魔法もそれなりに使えるとは知らなかったな」


「ん?おっちゃん呼ばわりは終了かい?へへへ、んまぁ魔法も見せびらかすものでもないし、こいつの主な仕事は店番だよ。───ささ、ヴィリュークも上げてやって」


トレイに並べられた鶏肉をひと切れトングで抓んで、グリフォンの口元へ持って行くと、“くわっ”と鳴いて食らいつく。


しかし一飲みにできる大きさではないので、振り回し・前脚で押さえつけると嘴で引きちぎり呑み込んでいく。


肉もそんなに用意していなかったので、ごちそうはあっという間に二匹の腹の中に納まった。


「うちの子もそうだけど、グリフォンは砂漠の生き物でないから、水はこまめに上げたほうが良いよ。砂漠の生き物は直接水を飲む機会がほぼ無くても、獲物に含まれる水分でやりくり出来るらしいから。俺たち然り、普通の生き物は水が無いと老廃物を出しにくくなるからね」


エルネストが豆知識を披露するが、横ではサミィがグリフォンと同じ皿で水を舐めている。


つまり、水があれば砂漠の生き物もそれを飲むという事か。……そう言う事にしておこう。


その日一日グリフォンは、エルネストの店の中庭でサミィと一緒にのんびり過ごしたようだった。




翌朝、何を思ったかエステルが定宿まで訪ねて来た。


丁度起き抜けで、井戸端で顔を洗っていると、宿の女将が知らせて来たのだ。


「あの子たち連れて砂漠で朝ご飯しない?」


収納鞄にも入れないで、籐編みのバスケットを手にお誘いが来た。中身は弁当なのだろう。


手早く身支度をして連れ立って宿を出ると、サミィとグリフォンを迎えにエルネストの店まで向かった。




昇りかけの太陽が空を赤く染めるのを見ながら、じゅうたんで少し町を離れる。


サミィはじゅうたんの先頭で移り変わる景色を眺め、初めてじゅうたんに乗るグリフォンは羽を広げて軽く興奮している。


速度が乗っているじゅうたんの上で、羽を広げると翼が風をはらみ、軽く身体が浮遊するのだ。それでもおっかなびっくりやっているせいで、完全に宙に浮くことは無い。


浮いては羽を閉じ、広げては軽く浮くを繰り返していると街も彼方に小さくなり、ちょっとした低木群のある平らな所でじゅうたんを止めると、二匹は待ってましたとばかりに砂の上を駆けだした。




「今、用意するわね」


エステルはバスケットから色とりどりの料理を取り出し、じゅうたんの上に並べていく。


「パンは流石に市場で買って来たわ」


彼女は小さなまな板の上で焼き立てパリパリのパンをスライスして並べ、次に取り皿を取り出すと料理を小分けに乗せて手渡してくれた。


「はい」


「お、おう。ありがと」


彼女が自分の分を取り分けるのを待ち、改めてスプーンを手にする。


「「いただきます」」


数種の野菜がサイコロ状に刻まれたもの。汁気が少なくなるまで炒め煮にしたようである。


スプーンで一掬い口にする。


「いい味だ」


「そ、そう?よかった。お肉もあるよ、たべてたべて」


朝食にしては多めの量であったが、そんなことはお構いなしにしっかりと平らげた二人であった。




流石にごちそうになってばかりでは悪いので、とっておきのコーヒーを淹れていく。


カップは二つ。シュガーポットを添えて甘さはお好みで。


コーヒー片手に並んで座ると、遠くではまだ熱くなっていない砂の上で遊ぶ二匹が見える。


何の気なしに低木の方に視線を移すと、巣穴があるのかスナネコの頭が二つ三つ見える。脅かしても悪いので気付かないふりをして視線を戻した。


「そういえば、あの子の名前どうするの?」


「あ~、考えて無いわけじゃない、の、だ、が……」


「勿体付けるものでもないでしょ。なになに?」


「バドリナート。略すなら……バド、だな」


「無意味につけたのではなさそうだけれど、由来、あるんでしょ?」


そう訊ねてくるがすぐには答えを口にできなかった。遠くのバドを見つめカップを口にすると、隣でも彼女がカップを傾けていた。


「グリフォンの生息地だそうだ。標高の高い山の中腹にある町の名前。あいつがそこから連れてこられたか分からないが、遠い彼方の起源(ルーツ)を名付けてやったらどうかな、ってね」


「……うん、いいんじゃないかな」




遠くではまだ二匹が前脚で砂を叩いている。あれはサミィが獲物の取り方でも教えているのだろうか。


それを二人で眺めるが飽きも来ない。


「「あっ」」


突然バドが大きく羽ばたいたと思ったら、十秒ほど飛んだのだ。


紛れもなく、跳んだのではく“飛んだ”。


着地したバドはもう一度、とばかりに羽ばたくが今度はそうもいかない。するとサミィがバドにじゃれついて走り出すと、バドもそれを追いかけ始めた。


バドが走り出してすぐに、翼も一緒に動き出す。それはすぐに確りと羽ばたき出し、脚が身体に沿われると、翼は一層力強く身体を押し上げる。


まぐれではない。


今、バドは飛び方を覚えたのだ。




バドはサミィに披露するように、彼女の周囲を旋回する。


サミィが進路をこちらに向けるので、バドも一緒に戻って来るだろう。


「自分じゃなくとも、成長を目の当たりにするってのは嬉しいものなんだね」


「ああ、俺もそう感じているよ」


横にいる彼女を見ると耳の先が少し赤い。


「ヴィリューク、嬉しいの?耳が赤いよ」


「えっ、赤いか?エステルだって赤くなってるぞ」


「えっ?えっ?」


少し慌てる彼女だったが、静かに息を吸うと、少し距離を詰めて軽く寄りかかって来た。


二匹はまだ遠くで、バドは慣れなくて疲れたのか着地し、歩き始める。




「お前たちが俺を好いてくれているのは知っている」


今、ここだ。と思った。エステルも身を起こし、俺を見つめている。


「俺もお前たちが好きだ。だけれども、まだ、どちらかに優劣を付けられない。いや、優劣ではないな。どちらかが劣ってはいないのだし。うん、まだ、どちらかを選べないんだ。すまない……」


好意についての意思表示を彼女たち、いや、彼女に表すのは初めてかもしれない。結論が出ていない事を口にするのはどうかと思ったが、それでも自分の気持ちを明らかにしたかったのだ。


「……どちらかを選ぶんじゃなくて……どちらも(・・・・)選んでもいいんだよ。───実はもうナスリーンとは話してあってね、二人娶っても(そうなっても)大丈夫なのは確認してあるんだ」


気恥ずかしかったのか、後半部分は少し早口だった。


「───そう、か。すまん、もう少し時間をくれ。先延ばしって訳じゃなく、考える時間を、な」


ようやくスタートラインに立てたのだ。


エステルは小さく返事をし、頭をこちらの肩にもたれ掛けさせた。






蛇足(*ノωノ)

★☆独演会終了後のエステルの母、ナフル★☆




娘とのお酒も終わり、片付けも済ましてナフルは床に就いた。


『───あああ、あの子ナスリーン様相手にヴィリューク君を取り合ってるの!?あの子はとぼけたけれども、あの事件があって“ナスリーン”って名前を自分の子供に付ける親がいる訳ないじゃない!つまりあの見た目の年で、ナスリーンっていったら本人に決まってるでしょ!ヴィリューク君も隅に置けないわね……じゃなくて!どうするのかしら、あの子。本気なら手伝ってあげたいけど、ナスリーン様が悲しむのも見たくは無いのよね。いっその事、彼が両方嫁に取るってのは……ってハーレムじゃない!親としてそれはちょっとねぇ。英雄の孫に王家の血筋、そして英雄の弟子って、どうなのかしら、ありなのかしら?うう~ん……』


その晩、ナフルは延々と結論の出ない問題に頭を巡らせていった。









次章のプロットを作成中です。

半分はできてるのですが、〆のところがぼんやりと定まりません(*ノωノ)

見切りで書き始めたものかどうか……


お読みいただきありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。


老エルフ短編もよろしくお願いします。

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