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12・エルフの肌の色


いつもの砂漠速達便(自称)で今日もじゅうたんにて飛行中。


起伏があろうとも、飛ばす高さは精々二メートル位だ。高度を上げて飛ばせるのだが、目立ちたくないので緊急時以外はこんな感じである。


今日一日飛ばせば王都に到着する。早く身綺麗にしてちゃんとした飯を食べたい。新鮮な野菜や肉汁したたるステーキとかが恋しい。水が十分でも、旅の後半は保存食になってしまう。


今回誰とも遭遇せず、平和で退屈な旅だった。報酬はいいのだけど、こうも退屈だとオアシス経由の隊商がうらやましくなってくる。




そろそろ昼飯時ってことで気が急いているのだろうか、いつもならじゅうたんを止めて保存食を齧るのだが、飛ばしながら料理を始めた。


既に鍋には水と燻製肉と干し野菜が投入済。昨晩から水で戻しているから、大分元に戻っているはず。分厚い鉄鍋で、ふたも結構重たい。


ふたを外して水を操作する。しばらくすると湯気が上がり始め、続けて操作してポコポコと沸騰しはじめた所でふたを閉めて終了。


収納魔法陣から毛布を引っ張り出すと、傾いてこぼれない様に包んで置いておく。しばしまてば余熱で具だくさんスープが出来上がるって寸法だ。


照りつける太陽に耐えながらじゅうたんを飛ばす。彼方に騎影を二つあるのに気付き、同時に昼を過ぎてしまっているのにも気付く。


片方は何となく見覚えがあるが、もう片方はリディに対して小さい姿だ。子供なのか見知らぬ種族なのか……速度はこちらのほうが断然速いから直に追いついて正体もわかるだろう。




片方はエルネストのおっさんだった。遭遇率が高いところを見ると、あれから順調に商売繁盛なのか。いいことだ。


「おう、ヴィリューク!」


「ちは!なんか儲かってるみたいですね」


「まあな、欲張っちゃいけないな。商売は地道にやってかないとだめだ」


「以前のエルネストさんに聞かせてやりたいですね」


「いやはや、まったくだ」


隣で会話についてけていないのが一人。


「エルフのじゅうたんだ……本物初めて見た」普人の子供が目を丸く見開いている。


「いつものガイドの人はどうしたんだ?」


「臨時の仕事で怪我しちまってさ。盗賊の矢を足に受けて、傷口が化膿したんだ。本人はやる気満々だったんだが、微熱まで出始めてなぁ。そしたら奴の息子のこの子が名乗りを上げてさ、もう15っていうじゃないか。誰でも初めてってなぁあるし、やつのお墨付きがあるとなればこちらも…な」


「ヴィリュークだ。よろしくな、ガイド君」


「カミー…グです。宜しくお願いします」


えらくダボダボな服を着ているなぁ。まだ幼さが残っている。


「ん、よろしくよろしく、で、昼飯にしないか?」


包まれた鍋をはたきながらお誘いをかけた。




具だくさんスープは汁を一滴残さず平らげられた。


「「やー美味しかった」」ハモリ来ました。


「いやいや、砂漠旅の後半だからうまいのであってだな」


「でもでも、おいしかったです」と、カミーグ。


「オアシスでもない限り、砂漠でスープ作るのはお前だけなもんだぞ」


「そんなもんかねぇ」


そう言いながらあれこれと片付け始める。




「あ、今晩にゃ王都につくんだろ?晩飯を一緒にどうだい?」とエルネストさんに問いかける。


「それは構わんが、納品や宿屋の手配で時間かかるぞ」


「それじゃ俺が宿の手配しとくよ。◯屋って知ってるか?」


「あぁ、飯が美味いとこだろ。すぐうまっちまうんだよな…ひょっとして……」


「ひょっとするぜ。三人分取っとくから晩飯はもりもり行こうぜ!」


「あ…お、れ、高いところはちょtt…」


「「まかせとけ!!」」


恐縮して返事をするカミーグ。「ゴチになります…」


「よし、先に行って待ってるぜ。遅くなるのもなんだが、無茶なペースは厳禁な!日が沈む頃までに来ればいいんだからな!」


「頼んだぞー」






「「「かんぱーい」」」


酒とお茶で乾杯する。その前に、こっそりとそれぞれの素焼きの壺を冷やしておいた。


一口つけて二人そろって俺の顔を見つめるので、黙って人差し指を口元に持っていき苦笑いをすると、すぐに察してくれた。


「ちょっと聞いてもいいですか?」腹もくちくなり始めのころにカミーグが聞いてきた。


「ん?なんだい?」


「エルフの皆さんて、なんで昼と夜と肌の色が違うんですか?」


あー、ああぁ…エルネストさんを見ると飯に夢中だ。聞かれてもまともな答えをしなかったんだろう。




「んー、まず俺たちエルフは森の民だ。そこはいいな?」


「うん」


「見ての通り、肌が白いので砂漠というかこの土地にいると日焼けして肌が真っ赤になるんだ。これがまた痛くてたまらん」


「普人ではそんな人見ないね」


「そこでエルフは考えた。日の光が強いなら弱めたり耐性をつければいいんじゃね!と」


「へー」あまりわかってない返事だな。


「結論として、強い光から身を守れる装飾品が作られた。それがエルフの耳飾という訳だ。強い光に反応して肌に防護幕を張ってくれる。その結果、肌が褐色に見えるわけなのさ」


「この耳飾が作られて結構歴史も長くてな、最近のエルフでは結婚を申し込むときに互いの耳飾を交換する風習が定着し始めたのだ」と、エルネストさんは自分の耳の非対称の飾りをアピールしてくる。絶対最近交換したに違いない。ちなみに俺のはまだ左右同じだ。


「ふーん、エルフもロマンティックなんだね」


「どの種族も、男は女に振り回されるものなのさ」と言ってその晩はお開きになった。


その後俺は次の定期便までまったりと過ごし、エルネストさんは港町の店への仕入れで忙しくしていた。






朝一で二人の見送りをする。おそらく次の便でも港町の手前で追いつくだろう。


「また途中で追いつくだろ、先に行っててくれ」とニヤリとする。


「後から食いもの持って来いよ」向こうもニヤリとする。


ゆったりとしたというか、だぼっとした服を着たカミーグが返事をする。


「では、お先です……」心なしか顔色がいまいちだ。


「体調大丈夫か?」


「だ、大丈夫です。一日目なので緊張してるだけです!」カラ元気に見えるのは気のせいだろうか。


「「じゃ、またな」」






定期便、あと一日二日で港町って所まできている。


今日もじゅうたんを飛ばし、退屈な一日を過ごしている。


すると前方から鼻息を荒げたリディが接近してくる。しかも二頭だ。交差するタイミングで反転したかと思うと、並走して”グワグワ”と鳴きはじめた。


ちょっと先行したかと思うと左にそれて止まり、またグワグワと。左には砂丘が見えるのだが、グワグワしながら砂丘に突き進んでいくさまはどう見ても異常だろう。


付いて進んでいくとすぐわかった。砂丘の手前に人影二つ。一つは作られた日陰に横たわっている。




こちらに気付いた人影が怒鳴った。


「ヴィリューク!カミーグが倒れた!!助けてくれ!!」




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