命蓮寺とマミゾウさん
初めてまして。
がるがんだと申します。
初めての小説執筆・投稿ですので、誤字・意味の間違い・使い方の間違いなどが多々出る事は必至ですが、いい作品を書いていこうと頑張っていきます。
それでは、どうぞ。
ついこの間までは既に太陽が昇りだし始めている頃だったというのに、随分と顔を出すのが遅くなったものだ。
妖怪の山の木々が緑から紅へと染まり、身を震わせる木枯らしが吹き始める季節。幻想郷の「妖怪寺」と呼ばれる場所、命蓮寺にて、まだ一面闇に染まった庭をぼんやりと眺めながら、1人縁側に腰を下ろし、スパスパとキセルを吸う妖怪がいた。
「すー、ふー……」
キセルを大きく吸い、煙草の香りを味わう。そして煙と共に吐き出す。吐き出された煙は空中へ昇り、そして見えなくなってゆく。
彼女の名は二ツ岩 マミゾウ。佐渡の大狸と呼ばれる佐渡狸軍団の総元締であり、外の世界で暮らしていた。
そんな彼女が何故幻想郷へやってきたのか。それにはちょっとした訳がある。
その日、マミゾウはいつも通りのごく平凡な日常を送っていた。すると旧友である封獣 ぬえが息も絶え絶えに現れ、彼女に助けを求めてきたのだ。話を聞いてみると、妖怪を撲滅せんとする聖人とやらが復活したとの事らしい。
旧友の頼みとあらば行くしかあるまい、と部下の反対を押し切り、ぬえと共に幻想郷へと向かう。そして、外の世界と幻想郷を分かつ博麗大結界を越え、さぁ敵は何処かと構えたのだが、ここで1つ誤算が起きた。
なんと、復活した聖人は妖怪を撲滅する気などサラサラ無く、寧ろ幻想郷のルールに従って暮らしていくと宣言したのだ。
その後、こちらの存在に気付いた博麗の巫女達と手合わせをし、全てが終わった後に「おい、これはどういう事じゃ?」と、ぬえの方に顔を向けたが、ものの見事に顔を逸らされてしまった。
どうやら、旧友の頑張りは空回りに終わたようだ。その時のぬえのばつが悪そうな顔を思い出すと今でも失笑してしまいそうになる。あの動揺を全く隠しきれていない様子は昔の頃から変わっていないようだ。
さて、結局自分の出番は最初から無かった訳で。このまま帰ってしまおうかとも考えたが、ぬえから引き止められそのまま幻想郷に暫く滞在する事を決めた。あんな涙を滲ませた顔ですがりつかれたら帰るものも帰れないだろう。
そしてぬえの紹介により、ぬえの友人達が住んでいるという寺に居候させてもらう事となった。
「ふー……」
再び煙を吐き出す。ふと顔を庭の方から山へと移すと、山の方から光が差し込んでゆくのが見えた。ようやく太陽が顔を出しつつあるようだ。
「……」
平和だな。マミゾウはそう思った。
自分達の住んでいる外の世界も、平和と言えば平和なのだが、あくまでそれは人間側から見たらの話だ。妖怪側からはそうはいかない。
人間達から身を隠して生きていく者。人間達に紛れて生きていく者。他者多様いるが、それらはどれもこれも苦労の連続だ。特に人間達に紛れて生きている者。下手をしたら自分自身が狸であるという事を忘れて、そのまま人間として生き、狸に戻れなくなってしまう者もいる。
だが、ここ(幻想郷)はそんな難しい事を考えなくてもいい。幻想を追われた幻想の者達が人間達と共存する土地。まさに楽園ではないか。
「ここに来てもう一週間か。早いもんじゃのぅ」
ふと、キセルを吸えど香りがしない事に気付く。どうやら煙草を吸いきってしまったようだ。
キセルを片付け、腕を組み、思案する。
さて、そろそろこの幻想郷を見て回ってみたいものじゃが、何処から行ったいいものやら……
「あら、マミゾウさん。お早いですね」 声がした方を向くと、そこにはこの寺の僧、聖 白蓮が立っていた。
「おお、聖さんか」
「こんな朝早くから何をしていたのですか?」
「なぁに。日課の一服をしていて今終わったとこじゃよ。お前さんはどうしたんじゃ?」
白蓮の左腕を見ると、先日香霖堂という古道具屋で購入したと言っていた「えこばっく」なる手提げ袋を携えていた。
「これから人里へ朝食の材料を買いに行く所です。マミゾウさんも一緒にどうですか?」
「ふむ……」
渡りに船とはこういう事かの。まぁ、さほど困っているという訳ではなかったのだが。
……人里か、最初に見て回る所にしてはちょうどよいかもしれんな。「んじゃ、儂も手伝わせて貰おうかの」
よっこらせ、と縁側に畳んでおいた半纏を身に纏いながら立ち上がり、下駄を履き白蓮のもとへと向かった。
「さて、行こうかの」
気付けば、太陽は完全に姿を現し、幻想郷を照らしていた。
今日はいい天気になりそうだ。
マミゾウは昇っていく太陽を見上げながらそう思った。
ここまで読んでくれてありがとうこざいます。
少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
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m(_ _)m