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魔王陛下、お仕事ですよ  作者: 鈍色満月
勇者去りし後の魔王城
3/51

その訳その意味その理由

「やあ、僧侶。中々怖い顔だな。勇者が見たら卒倒するぞ」

「……何故このような真似をなされたのか、理由をお窺いしても?」


 とうに魔王城より勇者と共に去った筈の、しかも敵である筈の僧侶に向けて、魔王と呼ばれた子供はニヤリと笑みを浮かべる。

 茶化す様なその仕草に、僧侶の眉間の皺が深くなった。


「貴方様が気まぐれで動く方だと言うのは我らとて承知の上ですが、その様なお姿になられてまで、何故このような洒落にならぬ戯れをなされたのですか?」

「怒るな、怒るな。折角の綺麗な顔が恐ろしい事になっているぞ」


 くすんだ色の飾り気も何も無い僧服を纏っている僧侶は、よくよく見れば整った顔をしていた。

 地味な格好と短く切り揃えられた髪に縁なしの眼鏡のせいで、その容姿はどこか乾いた物として他者の目には映っていただけ。


 魔王と呼ばれた子供の言葉を聞き、僧侶が鬱陶し気に付けていた眼鏡を外して薄茶色の髪を掻き揚げる。

 すると次の瞬間には、先程までそこに居た地味な僧侶は消え失せ、他者の目を集めずにはいられない、怜悧な美貌の青年へと姿を変えていた。


 薄茶色の髪から、銀糸の混ざった灰髪へ。

 温和な輝きを宿していた茶色の双眸は冷たい光を宿した藍色に。

 その身に纏う質素な僧服でさえ、まるで貴族の礼服を着ている様な錯覚に陥らせる。


「わざわざこの私を人間に扮させ、勇者一向に加入させたのです。当然、それなりに意味を持つ行為であったのでしょうねぇ?」


 その慇懃無礼な態度に子供は腹を立てる事無く、滑る様な動きで壇上より降り立って、僧侶であった青年の前へと歩を進める。


「その点に関してはよくやってくれた。勇者一行が無事に此処まで辿り着けたのもお前のおかげだ。感謝するぞ、藍玉らんぎょく

「お褒め戴き恐悦至極、我らが魔王陛下。――ですが、誤摩化されません」


 ギン! と殺気立った眼差しで青年が魔王と呼ばれた子供を睨みつける。


「何故、危険を犯してまで、あの様な餓鬼に討たれる真似などなされたのです?」

「だって、仕方ないじゃないか。――――あの勇者、泣いてたんだから」


 居心地悪そうに、明後日の方向へと視線をそらした魔王が、口を尖らせた。


魔族の名前は漢字二文字で色がつきます。

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