表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王陛下、お仕事ですよ  作者: 鈍色満月
魔王城の新たなる日常・壱
14/51

お披露目

新章の開始です。ようやくここまで来ました……!

 奇形の鳥が飛び交い、暗雲渦巻く暗黒の城――魔王城。

 異世界より魔王討伐のために呼び出された勇者が訪れた際には、おどろおどろしい姿を見せていた彼の魔王の城は、勇者が去った後、その姿を一変させていた。


 濁った闇色であった城壁は、深い藍色がかった晴れ渡った夜空の色へ。

 どんよりと立ち籠めていた重たい雲は消え去り、むしろ清涼な風が城内から流れ出していて。

 飛び交っていた奇形の鳥達は、どこからどう見ても無害な小鳥へと様変わりしていた。

 

 人間族が誇る鉄壁の防御の白亜の城と同じ、いや、それよりも遥かに巨大で壮麗な夜色の王城。

 ――――それが本来の魔王城の姿であった。


* * * *


 すっかり元の壮麗な姿を取り戻した魔王城内、その奥の奥、深部の深部。

 勇者との最終決戦の場となった魔王の謁見の間にて集まった城内の魔族全員を前に、魔王補佐である藍玉は冷えきった声音で言い放った。


「――――こちらが、我らが王であらせられる魔王陛下の現在の姿でございます」


 見る者を威圧する様な漆黒の玉座に座して、少々居心地悪そうに縮こまるのは小さな人影。


 肩までの光を吸い込む様な黒髪と深沈たる輝きを宿した琥珀の瞳。

 黒を基調に金糸や銀糸をふんだんに使用した華麗なる衣装に身を包んだ、男とも女とも判断出来ぬ中性的な容姿。

 一歩間違えれば派手と思わせてしまう衣装を見事に着こなし、それでいて決して負ける事の無い魔性の美貌の持ち主。

 ――――言わずもがな、魔族を統べる唯一つの存在である魔王であった。


「あー。その、済まんな。ちょっと勇者と戦った際に力を使い過ぎた……」


 居心地悪そうに玉座の上で身じろぎしながら、魔王は正面で跪く魔族達へと弁解する様に呟いた。

 その脇に佇んでいる藍玉は常の如く無表情を保ったまま、固まっている同胞共へと声をかけた。


「――因みにドッキリとかではありませんので、あしからず」


 藍玉がそう告げると、固まっていた魔族達の間から悲鳴が上がった。


「そ、そんなっ! 我らが魔王陛下が子供のお姿になられただなんて……!」

「ちょっと待て! 幾ら陛下が色々と規格外だとしても幼児化するとは……! 実は陛下の隠し子ではないのか!」

「ああ、でも、あのお姿は正しく魔王陛下のものではないかっ……!」

「うわぁ。着飾らせてみたい……かも」


 魔王城に務める老若男女が各々好き勝手囁き合う中、十歳前後の子供姿の魔王が玉座から立ち上がる。――――途端にその場にいた誰もが口を閉ざし、ざわめきが収まった。


「えー、その、今のオレの姿を見て魔王と納得し難い者も多いだろうが、こんなナリでも魔王だからな。隠し子とかでもないし、正真正銘、お前らが知る魔王で間違っとらんぞ」


 そこで一旦、魔王が口を閉ざす。


「この姿は力を使い過ぎた副作用みたいなものだから、また時間をかければ元の姿に戻る。だから、それまでこの姿のままで頼むよ、オレの可愛い子供達?」


 巫山戯た口調ながら、跪く魔族達に呼びかける声には確かな信頼と慈愛が込められていて、それは今までの魔王の話し方と全くと言っていい程同じであったがために、魔族達はそれ以上何も言う事無く万感の思いを持って一斉に頭を下げたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ