終わりから始まる物語
勇者一行のメンバー
・勇者(異世界人)
・弓使い(頼れる兄貴分)
・僧侶(温和な平和主義者)
・女魔法使い(典型的ツンデレ)
・盗賊(生意気な子供)
――――暗雲渦巻く、奇形の鳥達が飛び交う暗黒の城・魔王城。
その城の奥の奥、深部の深部。
魔王とのラストバトルに相応しい、巨大な大広間では死闘が繰り広げられていた。
「――――覚悟しろ、魔王!!」
やって来たのは、異世界から世界を救うために召還された勇者とその仲間達。
白銀に輝く聖なる剣を握りしめ、前を、魔王を見据える視線に迷いは無い。
既に戦いは長時間に及んでいる。
幾ら百戦錬磨で知られる勇者とその仲間達をもってしても、魔族の王にして闇の眷属の頂点であるという魔王を相手に無傷で済む筈が無い。
戦いが長引くにつれ、勇者にも、その仲間達にも、傷が増えていく。
『グオオオオーーーー!!』
しかし、それは彼らと対峙する魔王とて同じ事。
両者が相見えた際の、何処か人間離れした魔性の美しさなどとうに消え失せ、魔王は今や人の形を留めぬ異形の姿をしている。
「くっ! しぶといな!!」
「腐っても相手は魔王ですからね」
弓使いが滴る血を鬱陶し気に拭いながら吐き捨てると、温和な顔立ちの僧侶が頬に汗を滲ませながら同意する。
勇者一行の焦りを感知したのか、異形の姿となった魔王がますます攻撃の手を強くする。
それを女魔法使いの結界でなんとか凌ぐが、相次ぐ攻撃の数々に徐々に結界に皹が入っていく。
「勇者! この結界が破れた時が勝負です! 一瞬だけ魔王の動きを止めますから、貴方はその隙に!」
「分かった!」
僧侶の悲鳴の様な叫びに、勇者が頷いて聖剣を握りしめる。
甲高い破砕音と共に女魔法使いの結界が破られ、同時に僧侶の詠唱が完成した。
「今だよ、勇者! やっちゃって!!」
未だ幼い盗賊が勇者を振り返る。
僧侶の呪文によって創られた黒鉄の鎖が魔王の動きを拘束する。
動きを封じられ、魔王が悔し気に咆哮を上げた。
――――そうして。
「わあああぁぁぁ!!」
勇者が叫びながら、魔王へと特攻する。
彼の持つ聖なる呪文を刻まれた聖剣が閃光を放つと、そのまま魔王の体へと突き刺さった。
『ぐ、ぎゃあああああぁぁ!!』
弱点である心臓を聖なる剣に貫かれ、魔王が断末魔の悲鳴を上げながら一気に灰と化す。
大きく息を吐く勇者の目の前で、彼の旅の目的であった、世界を破滅へと導くと伝えられる魔王は消え失せた。
「お、終わった……」
精魂尽き果てた勇者の膝が崩れ、彼の仲間達が慌てふためきながら勇者へと駆け寄っていく。
やがて、魔王という脅威を見事退治し、世界へと平和を齎した彼らを祝福する様に、魔王城へと一条の光が差し込んだのであった。
次の話より本編開始です。