AIノハンタイハ
「あれ? もう帰んの?」
「ん? 嗚呼……もう仕事も終わったしな」
「マジ? 早くね?」
「別に普通だろ……こんな仕事1時間もあれば出来るよ」
「だってお前……昔は半日か、下手すりゃ丸一日かかってたろ?」
「AIにやらせてっからな」
「え?」
「AIだよ、AI」
「お前、AIに自分の仕事させてんのかよ!」
「そうだよ。当たり前だろ。人間がやるより遥かに楽だし、正確だしな。あっという間だよ。部長に資料まとめろって言われて、今まで何時間もかかってたのが、AIならものの数分だから」
「マジか。そんなのアリかよ……」
「むしろ使ってない方が悪いって。簡単な文章やら資料作成なら、断然AIの方がコスパ良いよ。ほらこれ。AIで作った来週分の資料」
「おぉ……! すげえなAI、もう人間超えちゃってんじゃん」
「はは。AIなら不平不満も言わずに、黙って24時間働いてくれるしな」
「確かに……もう人間なんていらないかもな」
「人間なんて、ミスばっかりじゃん。AIなら完璧だし」
「絶対に間違えないしな、疲れないし」
「変に落ち込んだり、怒鳴ったりもしない。なぁ、俺がお前の分の資料も作っとくからさ、空いてる時間で、映画でも観に行こうぜ」
「マジ!?」
「別に良いだろ。仕事終わってんだし。毎日毎日残業して徹夜して、それが美徳だなんて何世紀前のハナシよ? そろそろ次の時代に行こうぜ」
「はへぇ。AIサマサマだなぁ〜」
※
「……映画、どうだった?」
「いやぁ〜、つまんなかったなぁ〜! こんなつまんない映画、マジ久しぶりに観た!」
「それな! クッソつまんなかったよなぁ! さすが人間が監督した映画って感じ!」
「え? これ人間の監督なの!?」
「そうだよ。当たり前だろ」
「だって今時、映画なんて全部AIが作ってるだろ?」
「いやいや、AIの映画なんて! あんなの面白いだけじゃん!」
「確かに……AIの映画って、めちゃくちゃ小綺麗で、整ってて、面白いんだよ。だけどどっか人間らしい泥臭さがないっていうかさぁ」
「面白いのに、語りたくならない」
「観た後に何にも残らないんだよな、AIって」
「面白い場面があるとさ『あ、これAIかな?』ってもう疑っちゃうんだよね。アレが嫌なんだよ」
「分かる分かる! めちゃくちゃ感動的なセリフもさ、はいはいどうせ生成したんだろって、なんか醒めちゃって」
「如何にも機械で計算された感動の押し売りって感じだろ? ここで泣かせます、ここ泣くところですよ、みたいな。変に感動的なBGMとか流しちゃってさぁ。あれが鼻につくんだよね」
「そうそう。それじゃ全然グッと来ねえんだよ。結局、俺たちが観たいのは、人間らしさなんだよな。台本ありきじゃない、生の感動。ミスして落ち込んだり、怒ったり……全然上手くできてない、このつまんなさが、如何にも人間らしくて良いんだよね」
「明らかに空回りしてる感じとかさぁ、上手いこと言おうとして全然言えてねー、って……ダメだ、思い出したら俺、つまんなすぎて涙出てきた……」
「『監督は毎日何時間も現場に張り付いて、時に徹夜でフィルムを回してた』……だってさ」
「くぅう〜! 人間仕事たまんね〜!」
「AIには出せないよな、このつまんなさ!」
「時代は『人間』ですよ。間違いない」
「つまんない映画、最高〜!」
「もう一回、観に行こうぜ!」
「おぅ!」




