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鍵の答え

翌朝、馬車で市街地を抜ける途中、突然の叫び声がセシリアの耳を刺した。

「セシリア・フォン・クレイモア!おとなしく出てこい!」

四人の武装した男たちが馬車を囲んだ。

男たちは革鎧に身を包み、剣と短槍を手にしている。

――トマスの差し向けた追手だ。


セシリアの顔が青ざめ、心臓が早鐘を打った。

「レノーラ…!」彼女は思わず助けを求めた。


「慌てないで、お嬢様。耳を塞いでなさい。少しうるさくなるわよ」

レノーラは冷静にリュートを手に取り、馬車の窓から身を乗り出した。

彼女の赤い瞳が鋭く光り、弦を弾く手が動き始めた。次の瞬間、奇妙な旋律が響き渡った。低く、荘厳な音色が空気を震わせ、追手たちの動きが一瞬で鈍った。彼らの目が虚ろになり、剣を握る手が震え始める。レノーラは歌いながら馬車の御者に叫んだ。

「今よ、急いで!」

馬車が急発進し、追手を振り切った。


ルートが

「フム、さすがワガハイの相棒じゃ!見事なものよ!」

と得意げに言うが、レノーラは

「静かにしてなさい、爺さん」

と一蹴。

セシリアは息を切らしながら、

「あ、ありがとう…」

と呟いた。

だが、彼女の頭は追手の恐怖よりも、別のことで占められていた。


ギルドマスターが言っていた「クレイモア家の紋章が刻まれた鍵」。それは、祖母の手紙に記されていた暗号と同じパターンだった。


「レノーラ、馬車を止めて!鍵の答え、分かったわ!」

セシリアの声は興奮に震えていた。レノーラが怪訝な顔で馬車を停めると、セシリアは手紙を取り出し、暗号を指差した。


「これよ!クレイモア家の紋章の薔薇の花弁の数、中心の星の角度…これが金庫の暗号の鍵なの!」

彼女は確信に満ちていた。


ギルドに戻ったセシリアは、ギルドマスターに暗号の解き方を伝えた。紋章の薔薇の花弁は8枚、星の角度72度。それを組み合わせ、ギルドマスターが金庫のダイヤルを操作すると、鈍い音と共に金庫が開いた。


中には、メリダが遺した金貨の山と、冒険者ギルドの運営を支えるための書類が詰まっていた。ギルドマスターは目を潤ませ、

「メリダ様の遺志を…やっと果たせた!」

と感激した。


セシリアは冷静に交渉を始めた。

「この遺産をギルドに渡す代わりに、私を追手から守ってほしい。ダックス辺境伯領まで無事にたどり着けるよう、ギルドの力を貸して」

彼女の声は、貴族の令嬢らしい威厳を取り戻していた。


ギルドマスターは即座に頷いた。

「メリダ様の孫に、これ以上の恩義を返す方法はない。約束しよう。ギルドの冒険者たちが、君を守る。ただし…」

ギルドマスターが付け加え、金貨の山から10枚をセシリアに手渡した。

「君は、彼女の報酬金を確保するのが先だ。冒険者ギルドは契約と信頼で成り立っているからね。」

ギルドマスターはレノーラを見やった。

レノーラは

「ギルドマスター相手にやるじゃない、お嬢様。」

とニヤリと笑い、ルートは

「フム、なかなか賢い小娘じゃが、まだまだじゃな。」

と上から目線で呟いた。


セシリアは内心でルートに舌打ちしつつ、胸を張った。祖母の試練を一つ乗り越えた達成感が、彼女の心を満たしていた。


再び馬車に乗り、セシリアとレノーラはダックス辺境伯領を目指した。馬車の窓から見える景色は、街から森、そして荒野へと変わっていく。レノーラの歌声が静かに響き、ルートの「これからが本番じゃぞ!」という声が重なる。セシリアは手紙を胸に押し当て、遠い辺境の地に思いを馳せた。祖母の遺した試練は、まだ始まったばかりだった。

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