思い出
お読みいただきましてありがとうございます。
至らない点が多々あるかと思いますが、見守るお気持ちで読んでいただけますと幸いでございます。
入学式の日に僕は黒よりも黒い影に襲われた。その時に助けを呼んで現れたのはマジカルピンク。
昨日も同じく黒よりも黒い影に襲われた。その時に助けを呼んで現れたのはクルミ。
そして2回とも見えた頭の後ろで揺れる尻尾。
「なぁ、購買に行こうぜ。」
次の日、昼の休み時間。
僕を誘ってきたのは「オウセ コウタ」。同じ「1-K」のクラスメイトだ。この「オウセ コウタ」は、とにかく明るくてクラスの人気者だった。気さくな性格の彼は気兼ねなく僕に話しかけてくれ、気がついたら行動を共にしていた。未だこのマンモス学園の「虹が丘学園」の広さに慣れていない僕は彼にとても感謝をしていた。
「ごめんコウタ。今日はちょっと。」
「なんだ、先約か。仕方がない、ヒロシでも誘うか。」
そう言いながら、コウタは教室の外に歩いていった。
僕はコウタに手を振りその後姿を見送った。そして、僕の斜め前の席に向かった。
「クルミ。ちょっといい?」
「いいよ。」
そう言い僕は、クルミの手を握り教室を出る。
――――
入学の日に体育館で置いてきぼりにされた僕はクルミに案内をされて自身の教室「1-K」にたどりつけた。右も左もわからなかったときに僕の前で左右に揺れる尻尾。ピンク色のリボンで一つに結われた髪。つい最近の事なのにいろいろな思いから遠い昔のようにも思えるのが不思議だ。
その時とは逆で僕が前。クルミの手を引き体育館へ進む。
体育館の中は入学式の時とは違い、当たり前だがパイプ椅子は一つも無い。
また、昼の休み時間が始まったばかりで誰もいなかった。
僕は体育館の中を入学式の時に座っていただろう場所までクルミの手を引く。
僕がクルミをここまで連れてきたのは、誰にも聞かれないようにする為だった。
昨日、身体は石になり動かなかった。だけどしっかりと見ることが出来た。
昨日、光を纏っていた女の子は、この学園の制服を着てピンク色のリボンで髪を一つに結っていた。
僕を助けてくれた光輝く女の子は、クルミ。
「あ、あのさぁ、クルミ。」
僕はクルミの手を放し、身体を向ける。
「ありがとう。」
そういった僕をクルミは不思議そうな表情で見つめてきた。
なんで僕が「ありがとう。」と言ったのかがわからないようだった。
「昨日と入学式の日に、二度も助けてくれただろ。」
僕の確信かつ簡潔な説明にクルミは首を横に振った。
「ううん。私が困っていた時に助けてくれた。だから、当然だよ。ありがとうは私の方だよ。」
今度は僕がクルミを不思議そうな表情で見ていただろう。
「え?僕がクルミを?」
思い当たることのない僕は、素直にクルミに聞き返した。
するとクルミは、僕の目を見て照れながら言った。
「私もマジカルピンクが好きだよ。」
…私も?
僕がマジカルピンクのことを好きなことをまるで知っているような言い方だった。
姉ちゃんを含め家族にも言っていない。もちろんほかの誰にも言ったことは無いはず…。
…何故、クルミが知っているんだ?
僕が、不思議に思っているとクルミは、その場で体をくるりと回転させた。
クルミの髪は出会った時と同じピンク色のリボンで一つに結っている。
…ピンク色のリボン。
そう言えば、僕は過去に一度だけ、マジカルピンクが好きと言った事があった。
―――――――
あれは、初めて出会った日のこと。
入学式よりももっと前。
幼い頃、私は親と一緒に近所に新しく出来たショッピングモール「ルリポート」に来ていた。
とても広くて大きなショッピングモールに来た私は、玩具コーナーで夢中になっていた。
「あ、これ、マジカルピンクの魔法のステッキ。」
私は人混みの中、その輝く玩具の前まで駆けていった。
「わぁ。」
宝石のような装飾にあしらわれた玩具は、私を夢中にするのに僅かな時間も掛からなかった。
「ねぇ、パパ、ママ。これ、買って。」
振り向いたそこには、パパもママも居なかった。
玩具コーナーに作られた棚は私よりとても高く、まるで迷路のような複雑さがあった。
一瞬にして、高揚感が絶望感に変る。その変化に耐えきれず私は、その場で蹲ってしまった。
「そのリボン可愛いね。」
そう言いながら近づいて来たのは私とさほど変わらない背丈の男の子だった。
不思議と男の子のその言葉は私を安心させた。先程まであった絶望感がすっと消えていく。
「そうなの、私の名前と同じ桃色なの。」
私はその場でくるりと回り、髪を一つに結っているピンクのリボンを男の子に見せた。
それが初めて出会った時。
その後、私たちはショッピングモールに設置してあるベンチに一緒に座り、お喋りをした。私は、好きな「魔女っ子レンジャー」の事、その中でも特に大好きな「マジカルピンク」の事をひたすら話したのを覚えている。男の子は話し続ける私に、ニコニコしながら聞いてくれた。まだまだ、話したりなかったけれど、ベンチに座っている私の心配していた親が見つけ、そこで楽しかったお喋りは終わり。
別れ際に男の子は、
「僕もマジカルピンクが一番好き。また、お話ししよう。」
そう言って、手を大きくぶんぶんと振っていた。
ママと手を繋いでいた私は、空いている手を大きく振った。
「うん、約束だよー。」
その後、名前を聞き忘れた事を私は後悔した。
その後、何度か両親と「ルリポート」に訪れた。
幼いころは何度もわがままを言って「ルリポート」に連れて行ってもらった。
小学校高学年になってからは一人で何度も訪れた。
でもあれっきり、男の子とは会えなかった。
やっと会えた男の子は、今、私の目の前にいる。
―――――
「そのリボン…」
僕の目の前でくるりと廻るクルミ。
その風を受け、クルミの髪はフワッと宙を舞う。
あの時と同じピンク色のリボンで一つに結った髪。
「あの時の女の子?」
――――
僕がマジカルピンクを好きになったきっかけの出来事。
僕は幼い頃に一人の女の子に目を奪われた。
姉ちゃんと一緒に行った「ルリポート」。
家の近くに新しくできたその商業施設に行きたかった僕は姉ちゃんにわがままを言い連れて行ってもらった。
連れて行ってもらったが姉ちゃんは音楽コーナーでアイドルグループのCDを視聴して、僕はほっとかれてしまう。
退屈だった僕は姉ちゃんの隣で一つのCDジャケットを手に取り、眺めていた。
不意に肩をたたかれた気がして振り返ると隣接していた玩具コーナーが目に入った。
僕は姉を残し玩具コーナーへ向かった。
玩具コーナーに入ると女の子が一人で立っていた。
僕は、その女の子から目が離せなくなった。
髪を結っていたピンク色のリボンがとても似合っていたのを覚えている。
その女の子は、後ろを振り向いたかと思うとその場で蹲ってしまった。
どうしたのかと思い僕は、女の子の傍まで行った。
なにか声をかけなきゃと思ったけれど、なんて言っていいかわからない僕は
咄嗟に思っていたことを言葉にした。
「そのリボン可愛いね。」
僕の言葉を聞き女の子は顔を上げてニコッと笑った。
僕はその笑顔を見て、ドキッとした。
女の子は立ち上がり、僕の目の前でくるりと回ってリボンを見せた。
その仕草はとても上品で、まるで僕達以外の時間が止まる魔法をかけられた気がした。
僕は目の前で回る女の子から目が離せなくなっていた。
僕にかけられた魔法はその後も続き、目の前の女の子の話を夢中で聞いた。その女の子は、表情をコロコロと変え、身振り手振りで、アニメの「魔女っ子レンジャー」の話しをした。僕は、その話を聞きばがら目の前にいる女の子が「マジカルピンク」なのではと思っていた。
とても楽しく、幸せな時間。
だけれど魔法の効果は切れてしまう。
女の子の両親が迎えにきた。
女の子とそこでお別れをする。
僕は、名前の知らない女の子とまた会えるように願いこめて言葉にする。
「僕もマジカルピンクが一番好き。また、お話ししよう。」
それが、僕の精一杯の言葉だった。
――――
僕は思い出から、現実に帰ってくる。
今、再び僕達に魔法が掛かっている。
いや、あの時からずっと魔法に掛かっていたのかもしれない。
目の前にいるクルミがあの時の女の子。
「だから、私は「マジカルピンク」になったんだよ。」
しっかりとした意思を込めて、僕にそう伝えてきた。
「えっ?クルミ、それって‥‥」
「えへへ、秘密。」
そう言ったクルミの瞳には、僕の姿が映っていた。
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