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普通の学園生活  作者: かいくいきい
第一幕
6/36

マジカルピンク

お読みいただきましてありがとうございます。

至らない点が多々あるかと思いますが、見守るお気持ちで読んでいただけますと幸いでございます。



入学式の後。

旅行に行っている両親の代わりに晩御飯当番の僕はスーパーへと買い出しへと出掛けた。

無事に買い物も終え帰路についているときにそれは現れた。

“黒よりも黒い影“

僕の影から黒よりも黒い影が出てきて僕を襲ってきた。全身が石に変わり身動きができなくなる。僕はかろうじてまだ動く口で助けを求めた。そして口も動かなくなる。その時に僅かに聞こえた声。

僕にとっては聞きなじみのあるあの魔法。



「ホーリーフラーッシューーーーー。」



その声と同時に光が僕を飲み込もうとしていた黒よりも黒い影を撃ち抜いた。

身動きができなくなった僕だけどまだ見える目でその光景をはっきりと見ていた。


目の前で光が弾ける。直視出来るようではない光量だったが不思議と眩しくはない。

僕に襲い掛かってきていた黒よりも黒い影はうめき声すらあげずに目の前から消えた。

消滅したのか逃げたのかは僕には分からなかった。


残されていたのは僕の普通の影。

先程の黒よりも黒い影はどこにもいない。代わりにいるのは、目の前にいる光を纏った人物。なんとなく女性に見えた。


その人物は、僕に背中を向けて立ち全身からはピンク色の光を発し輝いている。

何時までも見ていたくなる程のとても温かい光。とても不思議な感覚だった。


その光を見て僕は、

もう、寒くは無かった。

怖くは無かった。


「ふぅ、間に合った。」


そして僅かに聞こえた声と同時に目の前の光の女性は僕へと振り返る。

ピンク色の光を纏いながら。


もう黒よりも黒い影はいない。

だけど、僕の石化は解けなかった。

それよりもますます石化は進み、僕の視界までもを侵食してくる。光の女性の顔は視界がぼやけはっきりとは見えない。

ぼやけた視界の中、光の女性は僕へと近づいて来たのがわかる。

直立不動になっていた僕の顔をのぞき込んだ。それは相当の至近距離に来ていただろう。

僕はもうどんなに距離が近くても、表情はもう分からない。


そして、視界も石になり真っ暗になる。












…ん?


その時、僕の唇に何かが触れた気がした。

そう感じた瞬間、唇から暖かい光が入ってくる。それは、ゆっくりと僕の身体全体へと行き渡る。

暖かい光が身体全体に行き渡ると徐々に視力が戻り身体全体の感覚が戻っていく。


視力が戻った時に見たのは光の女性が飛び立った後ろ姿だった。

僕はその姿をただ、呆然と見えなくなるまで見つめていた。



その女性の頭の後で揺れる尻尾を。


――――


その後、僕は問題もなく家へと帰ることが出来た。

今は家の台所に立ち晩御飯を調理中だ。

両親は度々、旅行に行くため、普通の家庭料理ならが出来る。


醤油、酒、味醂に塩コショウ、ニンニクやショウガなどで下味を付けた鶏肉に衣をまぶし、熱した油に投入する。

鶏肉がパチパチと心地よい音を奏でる。


僕は、調理をしながら先ほどあった出来事を思い出す。


…それにしても、あれは何だったんだろうか?


買い物からの帰り道。

辺りが急に暗くなり僕の影が立体的になり、襲ってきた。身体が動かなくなり、藁にも縋る思いで助けを求め口にした言葉。




「助けて、マジ…カ…ル…ピ………ンク」


その後、僕を救ってくれたピンク色の輝く女性。その特徴はマジカルピンクそのものだった。アニメの世界よりは成長していたがあの魔法は間違いない。


「ホーリーフラーッシューーーーー。」


その魔法の言葉と同時に光が黒よりも黒い影を撃ち抜いた。


石化している間にわずかに聞こえたあの魔法の言葉。

あれは魔女っ娘レンジャーのマジカルピンクが使う魔法だ。


その後、僕の石化を解いてくれたのは…。

僕は、微かに感触が残る唇に意識を向け考えていた。



それに飛び立ち去って行く時に見たあの髪型…。






「何を考えているの?」


いろいろ考えていたら、いつの間にか姉ちゃんの「アカネ」が隣に立っていた。


…いつ、帰ってきたんだ?


姉ちゃんは背伸びをして一生懸命に僕の顔を覗き込む。173センチの身長がある僕の目線に頑張って合わせようと姉ちゃんは背伸びをしていた。だが、全く届いていない。


姉ちゃんは、見た目がとても幼い。

若いのではなく幼い。145センチの身長で童顔。髪も肩にも届かないショートカット。ましてや今、仕事着のスーツを着用している。その姿でないと中学生に間違えられるだろう。それぐらいに幼い。

だが姉ちゃんは、25歳の社会人だ。


「いや、ちょっとぼーっとしていただけ。」


僕は肩くらいの高さにある姉ちゃんの頭を撫でながら言った。


「こらー、子供扱いするなー。」


姉ちゃんは子供扱いすると、怒る。それを分かっていて敢えて僕は頭を撫でる。

そんないつものやり取りをしていると、僕の頬が自然と緩む。このいつもと変わらない日常がとてもほっとする。


「で、何を作っているの?」


姉ちゃんは今度、ガスコンロの鍋を覗きこもうと背伸びする。この身長でも鍋の中は見えるようだ。


「何言ってんの?姉ちゃん。どっからどう見ても‥‥げっ。」


そこには、油にぷかぷかと浮かんだ黒い塊があった。





「か、唐揚げ、だよ。」


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