理
大魔王と妖精王の話の中。(得意の親父とお袋のお惚気話しも混ざったが…)僕は自分の出生の際に起きたことを知った。それは、大魔王、妖精王ともにとてもつらいことだったろうと察しが付く。自分のせいなのだが、申し訳ないという気持ちよりも、「ありがとう」と感謝の気持ちでいっぱいだった。それは僕を育ててくれた家族に対しても…。
何かを忘れているような…。
『ドゴオオオオォォォォォォォ』
そんな、感動の話の中、後方より爆音が鳴り響く。
「◎△$♪×¥●&%#?!」
更に爆音の鳴る方向より聞こえてきたのは、意味の分からない言葉。
その言葉から遅れる事、数秒。
「◎△$♪×¥●&%#?!」
またもや聞こえてきたのは、聞き取れない言葉。
一つは女性の声。もう一つは、男性の声。
その声のする方向へ僕は、顔を向ける。
…あぁ、すっかり存在を忘れていた…。
そこには、ヒートアップし過ぎて何を言っているかが分からないコムセンとスミレ先生だった。
二人は、額に青筋を浮かべながら、特大の魔法をぶっ放し中だった。
大魔王と妖精王のそれぞれの熱狂的な信者は未だに戦闘中であった。
僕は、溜息を付き側にいる救世主に尋ねる。
「すまん。ミカン。お願いできる?」
僕の言葉を聞き、ミカンはやれやれと言った表情をしたが一歩前に出て、唱えた。
「ニャニャンッニャニャン。」
校庭で空へと向かって放たれた魔法と同様にミカンの大きく開けた口からはオレンジ色の光が戦闘中の二人へと襲いかかった。
コムセンとスミレ先生は仲良く、吹っ飛び宙を舞う。
やがて二人は折り重なるように地面に落下した。その体からはプスプスと煙が出ていた。
ミカンは、そんな二人の前まで行き、倒れている二人に向かい静かに…そうとても静かに言った。
「席に着くにゃ。」
「「…は、はい。」」
大人二人はやっとおとなしくなった。
「え〜とっ、何処まで話しましたでしょうか?」
「それはだな…。俺とウルミが出会ってだな…。」
「違うにゃ、大魔王が君を預けた所までにゃ。」
大魔王の問いかけに、答えようとしたのは親父だった。
危うく、再び、惚気話しに移行する所だった。
寸前で何とか話しを戻した。
…ナイス、ミカン。
さすが救世主。何度も助かります。
「そうでした。産まれたあなたは、何の力も持っていませんでした。弱くなったとはいえ私から漏れるわずかな陰の力でもあなたは、衰弱していきました。出産で体力を使った妖精王の力もとても弱くなり、あなたを守る力は私たちにはありませんでした。」
そう大魔王は淡々と話しを再開した。
「そこで考えたのは、陽の力が多く存在する地にあなたを預けよう。一人では、妖精王程の力が無いかもしれませんが、そこに存在する皆が陽の力を持っている地に。」
…ん?
いろいろと、気になる事を言っている気がする…
たが、そんな僕の気持ちはお構い無しに大魔王は話しを続ける。
「この地にあなたを預けると決めた時に、私はこの地に久方ぶりに訪れました。あなたを預ける事が出来る方を探しに…。私の側にいて日に日に衰弱していくあなたの体調を考えると早急に見つけなくてはなりませんでした。だけれど、幸運な事にそれは直ぐに見つけることが出来ました。」
大魔王は、そう言いながら親父たちに目を向けて微笑んだ。
「レンジさん一家は、とても楽しそうに過ごしていました。毎日を真剣に生きておりとても充実している様に見えました。この方達ならきっと私達の子供を幸せにしてくれる。そう核心して私は、あなたを彼らに預ける決意をしました。」
そう言われ親父たちは照れくさそうにお互いの顔を見合っていた。
「あなたを預けてからは、成長した姿を見に私は何度もあなたの側に行きました。成長したあなたは赤ん坊のころと比べて陰の力の影響は少なくなっていました。」
…ん?
大魔王は、ちょいちょいと気になる事を言うなぁ…
ーーーーーー
僕は改めて説明をお願いした。
「ーと、言うわけです。」
出会ってから今までこの大魔王は、僕達に対して何一つ敵対はしていない。
少なくとも僕ならコムセンに対して、10回は舌打ちしている。それなのに大魔王は冷静にわかりやすく僕に説明してくれた。
「そう言う事だったんですね。わかりました。」
僕がそう言った際、親父達にも目配せしたが、静かに頷くだけだった。
どうやら親父達も大魔王の話しを信じたようだった。
纏めるとこういう事だった。
――――
その1ー
僕には何も力が無かった。
時々、現れた黒よりも黒い影は僕の負の感情が高まった時に大魔王が心配になり力を使ったとの事。
その2ー
その黒よりも黒い影に襲われた際に、僕の身体が石の様になり動かなくなった事。赤ん坊のころよりは陰の力に抗えるようになったが、それでも大魔王の力には敵わなかった。息子である僕をみたら愛おしい感情が抑えきれなくなり石の様に動かなくして攫って……、ではなく安全なこの空間に連れて来ようと考えたらしい。…これには妖精王もノリノリだったとの事。
その3ー
親父達が持ってきたネックレス。あれは実は大魔王が作成したものらしい。封印石が出来上がるまでの失敗作だということ。
「あぁ、あの失敗作ですよね。あんな失敗作を見られたと思ったら、恥ずかしすぎてつい飛行機ごと襲ってしまいました。あのことについてはとても反省しております。それにあのネックレスはどんな力でも一度だけ身に着けているものを守る力があるだけです。陰の力や陽の力でもたった一度だけです。何なら小指をぶつけるのも守ってくれますが、それも含めてたった一度だけです。そんな失敗作ですが当時は何かに使えるかもと思いとある島に保管して、見つからないように島ごと隠していました。」
と言う事だった。
そして、やはりと言うかなんとなく考え無い様にしていた事。
その4ー
皆が陽の力を持っている地に。
これって、つまり、そう言う事だよな。
皆が魔法を使えると言う事。
その5ー
僕が大魔王と妖精王の息子ということ。
陰と陽の力を持つ子供の僕は、お互いの力が中和され全く力がない。
僕だけが魔法を使えないと言う事。
――――
僕はいろいろな疑問が解消した。残念な結果もあったが、それでも僕は恵まれていたと思う。
産みの親と育ての親。僕は両方の親から愛情を注がれ育てられたという事が分かった。
だが、未だに謎はある。僕は、ポケットに入れていた物を手に取り出した。
「それじゃあ、これは大魔王に返すよ。」
僕が、取り出したのは立方体の箱。その中には校長先生から託された封印石が入っている。
「え?これは、どちらで?」
以外にも大魔王が動揺していた。
「これは、校長先生から託されました。」
「なるほど、そう言う事ですか。大方、校長先生はこの封印石で僕の力を弱めようとしたのでしょう。」
「校長先生はなぜ、そんなにまで大魔王を敵対するのですか?確かに僕も大魔王は悪のイメージがありましたが…。」
僕がそういうと、大魔王は何やらニヤニヤと笑っているようだった。
「「「え?」」」
なぜか周りから疑問の声が上がった。
僕の発言はそんなに不思議はことを言ったか?
「大魔王が悪?おまえ、何を言ってんの?まさか…?」
「な、何だよ。」
親父は意味深なことを言いながら僕へと顔を近づけてきた。
そして、僕だけに聞こえる声でボソッと言った。
「魔女っ娘レンジャー。」
…ギクッ。
別にやましいことは無いのだが、親父の口から出た単語を聞いて、思わず動揺した。クルミにしか言ったことがない僕の好きな魔女っ娘レンジャー。
なぜ、ここでその名前が出てくる。
「お前、そっち系のアニメをそんなに見ていたのか?まぁ、いいや。問題は見ていたことじゃなくてな。あれの作成者だ。」
…魔女っ娘レンジャーの作成者?
そういえば考えたことも無かった。
続けて親父は、小声で話し続ける。
「あれの原作はこの大魔王が書いたんだよ。」
「はぁ~~~~~~~~。」
僕は思わず大きな声で叫んでしまった。
大魔王を見ると、いまだにニヤニヤと笑っているようだった。
…じゃあ、あれか。大魔王は自分の作った物語で自分を悪者にしたと。
それで、魔女っ娘レンジャー好きの僕は大魔王=(イコール)悪と勘違いしまくりまくりにしまくったということか?
…動揺し過ぎでまくりまくってしまった。
「ちょ、ちょっと待て、合宿所で大魔王の事を尋ねた時に、僕の想像通りって…。」
「仕方ないだろ、まさかお前が家族にも内緒であのアニメを見ていたなんて知らねえんだから…。普通は大魔王は戦争が終わった後に、餓死寸前の人たちに食事という希望を与えた。って思っているんだよ。」
「でも、大魔王の食事は影でできていて太らないって。それは栄養がないってことだろ?」
「はい、私が出す食事は栄養はありませんが、栄養しかない味気ないものと一緒に食べることで食べやすい食事に変えていました。…ちょ、ちょっと、妖精王。今大事な話を…。」
「で、でも合宿所で親父から聞いた大魔王の話では…。」
「あれはおとぎ話だって言っただろ。ま、最後の妖精王が大魔王を捉えたのは、本当の事みたいだがな。」
親父にそう言われた僕は大魔王を見るとそこには、
「ちょっと、くっつきすぎですよ。皆さんに見られていますよ。」
「皆に見られても大丈夫だよ、ダーリン(はーと)。本当はもっと、くっつきたいのぉ(はーと)。」
なるほど、確かに大魔王は妖精王に捉われている。
―その6
魔女っ娘レンジャーの作成者は大魔王だった。
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