家族
大魔王が突然、無数の光り輝く矢に打たれた。打ったのは妖精王。妖精王は大魔王とは違い黄金色に輝く女性。大魔王と妖精王。どう考えても相容れない二人。一触即発な雰囲気に皆が身構える。そして大魔王から告げられた衝撃的な一言。
それは大魔王と妖精王は夫婦だということ。
ということは妖精王も僕の親ということだった。
「先程も話した通り、私と妖精王は、運命的な出合いで惹かれ…」
…先程も話した?
あぁ、なんか馴れ初めを言っていたなぁ…。全く聞いていなかったが…。
「なぁに、言ってんだ。うちらの出合いの方が運命的でだな…」
そんな中、親父達も馴れ初めを語り出した。
…張り合うな。もはや、カオスだ。
そんなカオスの中、姉ちゃんは目をキラキラさせて頰を高揚させていた。
――――
「ーと言う様に、私とお父さんは結ばれましたとさ。めでたし、めでたし。」
今、お袋が親父との馴れ初めを話し終えた。
親父は懐かしそうに、目を閉じ小さく頷いていた。
…「めでたし。めでたし。」では無い。
その隣の大魔王と妖精王は、親父達の馴れ初めを聞いて目を輝かせていた。
…何なのだ。僕の両方の両親は?
恥かし過ぎる。
「良いなぁ、良いなぁ…私も…私も…いつか……」
その両親達の馴れ初め合戦の話しを聞き、姉ちゃんはぶつぶつと何かを言っていた。
…姉ちゃんよ、帰ってこい。
「それでどうして、大魔王達は子供を預けたのにゃ?」
カオスな状況の中、思いも寄らない救世主が現れた。語尾に「にゃ」と話す人ならざる者。全身黄系統の色の毛に包まれたミカンだった。
…いや、ミカンは校長先生の魔法を解除した。ミカンは紛れもなく救世主だった。
「あっ、すみません。」
「すみません。」
ミカンの問いかけに我に返ったのは、大魔王と妖精王の二人だった。
それ以外の方々というと…
「ウルミっ。」
「レンジっ。」
これから核心への話しをしようとする中、親父とお袋は、久方ぶりに名前を呼び合、抱き締め合っていた。そしてうっとりとお互いを見つめていた。
いつもは「お父さん」「お母さん」と呼び合っているのだが……
「私だって…いつか……。」
そんなふたりの傍らにいる姉ちゃんは、未だにぶつぶつと何か言いながら、遠くを見ていた。
そして、逆サイドでは、紫色の光を発しながら、熱狂的な信者の二人が魔法をぶっ放していた。
「ヴァイオレット〜チョークズ〜〜」
妖精王の信者スミレ先生は、何処からともなく出現させた無数のチョークを放つ。
先程の妖精王の矢より多い数のチョークがターゲットに向けて襲いかかる。
「ネイビ〜ブル〜、キャッチ、キャッチャー、キャッチェスト〜〜」
対する大魔王の信者のコムセン。
訳の分からない三段活用を唱えながら全てのチョークを掴んでいた。きっとチョークは学園の備品なのだろう。コムセンはここに来て学年主任の責任を顕にしていた。
そんなカオス過ぎる中、僕はクルミに目を向ける。
クルミは、首を横に振る。完全にお手上げのようだった。
「大魔王さん、妖精王さん。話しを続けて下さい。」
大人達は、放っといて僕達は話しを続けるのだった。
この空間を共にした二人と一匹に戻って…。
…と言うか、大人達(こいつ等)は、何しに来たんだ?
――――
「僕達があなたをレンジさんに預けたのは…」
大魔王曰く、僕が親父達、家族に預けたられた理由。
大魔王と妖精王は「陰と陽」の存在だった。大魔王の陰と妖精王の陽。妖精王が大魔王との子となる僕を宿してから、妖精王の体調が急変した。
相反する力を持つ子供を宿したからなのかは分からない。
「子供は諦めましょう…」
大魔王は妖精王の苦しむ姿を見て、耐えきれず告げた。
だが、妖精王はその大魔王の決断に首を振った。
「いやよ。私は貴方との子供を産みます。」
妖精王は、力強く大魔王に言い放つ。額に大量の汗を掻きながら…とても辛い筈なのに…
「ですが…」
「駄目よ。貴方との子供を産むのは私の夢なの。それに…」
「そ、それに?」
妖精王問いかける大魔王。
「それに、子供を諦めると言った貴方の顔がとても悲しそうに見えたから…」
その言葉を聞いて大魔王は強く拳を握る。
「ありがとう。」
そして大魔王は一つの過程を推測する。
「もしかして、私の力…、陰の力が二人を危険に…。」
その大魔王の推測は酷なことに正しかった。子を身籠り栄養を子に送る母体には、今までのように陽の力を纏うことが適わなかった。
その事に気が付いた大魔王は、いろいろな物を作成する。休む事無く、何日も何日も様々な物を作成する。最愛の妖精王と子供を守るために。
そうして、封印石が出来上がった。封印石は妖精王ではなく大魔王が作ったものだった。
しかもそれは妖精王と僕を救うために…。
封印石は、作った大魔王の力を封印し弱めた。
封印石のおかげでで妖精王は、出産を終えた。
「ありがとう。ありがとう。」
大魔王は妖精王に何度も何度も感謝の気持ちを口にした。
だが、暫くして、子供の容態が悪化していった。
「この子には、陰に抵抗する力が全く感じられない…。」
産まれて来た子供には力が全く無かった。封印石のおかげで大魔王の陰の力は弱くなっていた。だが、それでもこぼれ出る陰の力に幼い赤子は耐えることが出来なかった。
その事に気が付いた大魔王は、密かに妖精王と子供の前から姿を消す。その予定だった。
その大魔王の考えを察した妖精王は、大魔王に向けて言い放つ。
「あなたっ。何処に行くつもり?」
「い、いやですね。そのお花を摘みに…。」
「うそ。」
そう嘘。大魔王は嘘が下手だった。
ーーーーーーーーー
「そんな正直で、嘘が付けない所にも惹かれたのよねぇ…」
回想シーンから戻り。
今、妖精王の脳内がお花畑状態。
大魔王がその場を立ち去ろうとした際に言った。
花を摘みに。それはトイレに行く時に使う言葉。
…乙女かっ。
「私と一緒にいると日に日に衰弱して行く我が子を私は、地上の人に託しました。私は、酷い父親です。」
そう言いながら、大魔王は拳を握っていた。その手に爪が食い込む程に。
その大魔王の言葉に異を唱えたのは親父だった。
「そんな事は無いぞ。確かにそうなのは代わり無いが…」
…いや、親父どっちだ。
そんな親父に助け船を出したのは、お袋。
「大魔王さん。そんなに自分を責めないで下さい。確かに大魔王さんは!自分の子を放棄しました。」
…おいっ、お袋。
お袋の発言で大魔王はより一層、握る手の力を増し爪が食い込む。
大魔王はとても後悔しているのがここにいる者達に全員に伝わっていた。
そんなに大魔王に優しく言葉をかけたのは、何と姉ちゃんだった。
「そんな事無いです。子供を守るための決断だもん。それに大魔王ちゃんのお陰で私達は出会えたんです。」
姉ちゃんは首を横に振りながら、僕達、家族が出会えた事。今日まで一緒に生活が出来た事に笑みを浮かべた。
親父とお袋は、うんうんと頷き、大魔王と妖精王は一筋の涙を流していた。
…それにしても、姉ちゃん…大魔王をちゃん付けとは…
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