妖精王
大魔王はその昔、人々の負の感情から誕生した。何度も繰り返された戦によって生まれた大魔王。大魔王の過去の話を聞き、僕達は同情をした。そんな中コムセンは好物のパンケーキを出されたり消されたりされ、負の感情を謙虚に顕した。ここには心が貧しい教師がいた。
そして突然、背後から聞こえた声と同時に現れた幾多の光の矢。
その光の矢は僕たちの目の前にいる大魔王へ幾度となく突き刺さった。
「ゴールドアローーショットォーーーー。」
その声と同時に目の前で起きた出来事。
突然、現れた光輝く矢は音も無く大魔王の身体に突き刺さる。更に数え切れない数の光の矢が追い撃ちをかける。
全ての矢が例外無く大魔王へと突き刺さる。
僕達は咄嗟の出来事に為す術もなくその光景を呆然と見ているだけだった。
暫くして、光の矢は飛んで来なくなった。
それと同じくにして目の前にいた大魔王の姿も消えていた。
無数の光の矢に貫かれて、大魔王は消失した。
僕達は何とか我に返り先ほど声がした方向。魔法の矢が放たれた方向へと視線を向ける。
そこには、全身が黄金色に光輝く女性が立っていた。その女性は膝裏までの長さがあるゆるふわパーマの髪に全身が金色のマーメイドドレスを身に纏っている。一見して女神のような雰囲気だった。
「フーアーユー?」
そう言ったのはスミレ先生。
スミレ先生はいつの間にか紫色のサングラスを掛けていた。
サングラスを右手でクイッと上げては左手で光輝く女性へ指を指し「あなたは誰ですか?」。と問いただした。決して「お前は誰?」ではないと信じたい。
「はじめまして、皆様。私は妖精王といいます。」
目の前にいた光輝く女性は、自らを妖精王と名乗った。
…えっ?妖精王?
今度は妖精王かよ。
「オーマイゴッ!」
僕が疑問を口に出す前に、いち早く反応したのはスミレ先生だった。
先程、誰よりも先に妖精王に絡んだスミレ先生は、既に掌を返していた。
「リアリィ?オー、ワタシ、イズ、ネーム、スミレ。ファン、フォー、ヨーセーオー」
なぜかスミレ先生はたどたどしい英語?日本語?で自己紹介をしだした。
妖精王はその昔、大魔王に支配されそうな世界を救った者。大魔王とは真逆の救世主。
…つーか、スミレ先生…いろいろ混ざっているぞ。その文法は合ってんのか?
妖精王が突然、現れて大魔王へと魔法を放った。
先程まで僕達と話しをしていた大魔王は、跡形も無く消失していた。
だが、
「いやぁ、ビックリしました。」
僕達が妖精王の出現に驚いていた中。
聞こえた声は大魔王のものだった。妖精王の魔法の矢によって跡形も無く消失したように見えたがどうやら大魔王は、その程度の事ではなんともないらしい。
一応、僕の実の親だ。何となく安堵している自分がいるのが分かる。大魔王だが、悪者な気がしない。それは、僕だけでは無く皆も同じだった。大魔王が再び現れた時、皆も安堵の表情を浮かべていた。
「お〜、大魔王様〜。ご無事でしたか?」
そう言いながら大魔王に、揉み手で歩み寄るのはコムセンだった。
この行動で確信した。
コムセンは大魔王に完堕ちしていた。。
「やいやい、お前。大魔王様にそんな事をして、パンケーキ出してくれなくなったら、どうしてくれるんだ。」
コムセンが今度は妖精王の事をお前呼ばわりした。そして大魔王への本音がだだ漏れだった。
「シャーーーラーーーーップ。」
その妖精王へのだだ絡みをスミレ先生が怒りの形相で静止した。
紫色のサングラスのスミレ先生に紺色のジャージ姿のコムセン。何やら言い合いを始めた。かたや大魔王に餌付けされたおっさん。かたや妖精王の熱狂的ファン。
「紺色ジャージVS紫色のグラサン。」
絵面は、最悪です。
―――――
「酷いですよ。妖精王。全ての矢が刺さりましたよ。」
先程、妖精王の光の魔法により消滅したかのように見えた大魔王は、何事も無かったかのように現れ、妖精王に言う。だが、あれ程の事をされた割には、余り怒ってはいないようだった。
むしろ、大魔王と妖精王に近づいた紺色のおっさんが一人だけ喚いていた。
大魔王には媚を、妖精王には、怒気を…。
そしてコムセンとの距離を詰め胸倉を掴むスミレ先生。
そんな二人の事はまるで見えて無いかのように妖精王は、大魔王と対峙する。
僕達は、身構えた。
先程まで僕達と話しをしていた大魔王は敵意が全く感じられなかった。少なくとも直ぐには僕達をどうこうする様子も無かった筈だ。だが、妖精王か現れた事によりどうなるか分からない。
世界を支配しようとする大魔王。その大魔王の思惑を阻止しようとする妖精王。しかも、妖精王は先程、魔法で大魔王を攻撃していた。この二人が争った場合。僕たちは無事でいられるのか?
一触即発な状況に、親父達は何時でも魔法が放てる様に身構えていた。
コムセンとスミレ先生以外だが……。
緊張感が漂う空気の中で言葉を発したのは妖精王だった。
「だ、だって、何時まで経っても呼んでくれないから…。」
妖精王は先程とは打って変わり下を俯きながら、なぜかモジモジしだした。
目の前で両手の人差し指をくるくると回している。
「おいっ。妖精王。」
つい声に出して突っ込んでしまった。
コムセンの事をとやかく言えなくなってしまった。
「いやぁ、すみません。皆さんがとても真剣に話を聞いてくれるものですから、思ったよりも話しがはずんでしまいました。」
優しい声で妖精王へ言い返す大魔王。
大魔王と妖精王。
真っ黒い人と黄金に輝く人。
誰がどう考えても相容れない2つの存在のはずだ…。
次に口を開いた妖精王が信じられない事を口にした。
「もぉ〜、ダーリンたら〜。お預けプレイが過ぎるぞ〜(はーと)。」
…かっこ、はーとって…。
これはどういう状況なのだ?
僕は今の状況を理解しようと脳味噌をフル回転させる。
話の流れを考えるにきっと、大魔王と妖精王は何か約束をしていた。それこそ決闘のような。
そこに僕たちが現れ約束の時間が過ぎ、待ち切れなくなった妖精王が大魔王へ魔法を放った。
…だが、お預けプレイ?いやいや、そっちでは無い。
ダーリン?ダーリンとはいかに?
僕が頭をなやましていると大魔王がその答えを言う。
「皆さんに、紹介します。こちらが私のワイフの妖精王です。」
…はい?ワ、ワ、ワイフ?
ワイフってあれだよな…?
――――
「ーと言う訳でして、私と妖精王はめでたく結ばれました。」
「あの時のダーリンは、クールでかっこ良かったわ〜。あ、でも今の優しい感じも素敵よ(はーと)。」
…いま、僕達は大魔王と妖精王と共にテーブルに付いていた。
先程の大魔王のカミングアウトに、僕達は呆然としていた。それは皆同じのようで、何故か、勝手に話し出した大魔王と妖精王の馴れ初めは、全くと言っていいほど頭に入らなかった。
一通り、馴れ初めを話し終えた大魔王と妖精王は、途端に真面目な顔をして立ち上がる。そして横に座る親父達に頭を下げた。
「エンジさん、ウルミさん、あの子を育ててくれて有難う御座いました。」
大魔王は頭を下げたままだ。
…きっと、親父達の言葉を待っているのだろう。
妖精王も大魔王の隣で親父達に頭を下げていた。
「取り敢えず頭を上げて下さい。」
親父の一言で頭を上げる大魔王と妖精王。
…それはそうだよなぁ…大魔王の妻なのだから…
僕は、薄々感づいていた事だが改めて大魔王と妖精王に尋ねた。
「と言うことは二人は僕の親なのか?」
「はい。」
「えぇ。」
…僕は大魔王だけで無く妖精王の子供でもあった。
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