贈り物
ゴールデンウィークの最終日なので、本日は2話投稿させて頂きます。
お付き合い頂けますと幸いです。
親父からこの世界には妖精王がいることを聞いた。その妖精王が作ったネックレスが僕の首に架かっている。このネックレスガあれば僕も魔法が使えるようになるかもしれない。そして、あの黒よりも黒い影を恐れることも無くなるだろう。そして、聞きたかったこと、どうして僕が黒よりも黒い影に襲われるのかを親父に聞いた。そして帰ってきた言葉は僕が大魔王の息子だということだった。
「あのネックレスはインフィニティ―・アイランドの近海の島にあった物で、大魔王の息子であるお前が黒よりも黒い影に対抗する為の物だ。ここまではいいか?」
…全く良くないが、とりあえず僕は親父の発言に頷いた。
「そのネックレスを俺達が島から持ち出した。その時に島全体に掛けられていた守護の力、まぁ結界みたいな物だな。それが無くなったことによって島の姿が見える様になった。突然現れたわけではなくて昔からその場所に島はあったんだ。」
インフィニティ―・アイランドの近海で突如として現れ、某テレビ番組に取り上げられたあの島の原因はそれだったのか…。
僕は、頭を整理しつつ親父の話を聞く。
僕の首に架けたネックレスからは、いまだ輝いていた。
「あの黒よりも黒い影が大魔王の力で合っている?」
「おう、その通りだ。」
親父は、相変わらず淡々と説明をする。
…確かにネックレスを付けた僕の身体からは溢れんばかりの力が漲っている。これならあの黒よりも黒い影…、大魔王の力にも負けない気がする。
「ほれ、その証拠に、ネイビーーーブルウゥゥー」
そう言いながらコムセンは右手に力を込める。
「クラッシーュッ」
「ちょっ、ちょっと、ま…。」
ーガギンッ。
鈍い音がなる。だがコムセンの攻撃は僕へは届かなかった。
僕の目の前でまるで見えない壁あるかのようにコムセンの右手は止められていた。
「すっ、凄いっ。」
「い、痛てて…。な、こんなふうにどんな力でも防ぐことが可能だ。」
コムセンは痺れを取るように右手を振り払いながら言った。
「これでわかっただろう。このネックレスを付けていれば、どんな力にも対抗が出来る。大魔王の力にもな。そのネックレスを俺たちが持ち出したから大魔王に狙われた。それで大魔王の力の黒よりも黒い影が俺達の乗っている飛行機を襲ったという事だ。」
次に答えたのは親父。
根本の原因だった僕が大魔王の息子ということを知ったからか、疑問だったことがパズルのピースが組み合うように素直に頭に入ってくる。
僕の頭に入ってきたことを確認するため皆と答え合わせを行う。
「僕の影があの黒よりも黒い影になって襲って来たのって…。」
「お前は大魔王の息子だからな。大魔王の面影みたいのがあるんじゃないか?その面影が恋しくて普段は現れないけれど常にお前の側にいる。」
「そんな馬鹿な。それじゃあ、僕が黒よりも黒い影に襲われたと思っていたけど、そんなつもりはなくて好意を寄せられているってこと?」
それに答えたのはコムセンだった。
「そうだ。お前の精神が不安定な時は特にあの影は現れる。それをお前は、拒絶していたから、反作用って言うのか?それでお前の身体を石に変えちまう。」
「それじゃぁ‥ もしかして、今までも前からずっとあの黒よりも黒い影が僕にいた?」
僕の精神が不安定な時に黒よりも黒い影が現れるとしたら…。
つまり怒りや妬みなどの感情になった時。
入学式の日は、黒板消しのいたずら。次は公園で猫をいじめる不良をみた時。そしてその後も…。
大魔王の子供らしいが僕にも普通に反抗期があった。
つまり、幼い時にも黒よりも黒い影が僕の影から現れたことになる。
「その時は、お姉ちゃんが何とかしてくれてたのよぉ。」
そう言ったお袋の視線の先には、姉ちゃんが照れくさそう頬を赤らめていた。
精神が幼い間にどれほどの黒よりも黒い影を呼び寄せていたのだろうか?それは相当な数じゃないか?一度や二度の訳が無い。
そしてそんな黒よりも黒い影に取り込まれていたら、それこそ「魔女っ子レンジャー」の悪の大魔王に操られ世界征服の駒として使われていたかもしれない。まだ、大魔王の脅威がなくなったわけではないだろうがこの年まで普通に暮らしてきた。そうならないように僕を守ってくれた姉ちゃんに、また、そのように育ててくれた家族に僕は感謝した。
「ありがとう、姉ちゃん。」
姉ちゃんは更に照れ、顔を真っ赤にしていた。
「でもねぇ、お姉ちゃんも社会人になったし、私達も貴方が少なからず普通と同じ生活を送れるようにと思ってインフィニティ―・アイランドに行き、このネックレスを持ち帰る必要があったの。大騒ぎになっちゃたけど…」
お袋が僕を虹ヶ浜学園に入学させた経緯を説明する。
「それで、ネックレスを持って帰ってくるまでの間に黒よりも黒い影から僕を守る為にクルミ達のいる虹ヶ浜学園へ入学させたと?」
「虹ヶ浜学園には優秀な者が多いのは事実だ。それに、この学園は俺と母さんの母校でもあるから、安心して任せられる。俺の先輩のコムラ先輩もいた事も大きいがな。」
「そうだろ。そうだろ。それほどでも…あるがな。」
先程の見たくもない馴れ初め第一章、「出会い」を見て親父達の母校ということは、分かっていた。親父とコムセンの間柄も校庭での会話で何となく察していた。
…そして褒められたコムセンが若干、ウザイ。
「僕が黒よりも黒い影を拒絶したから身体は石にされるのは何となく分かる。だが、黒よりも黒い影が現れても身体を動かせた時があった。あれは?」
僕はパンケーキを食べた日の事を聞いた。その場にいたコムセンが応えてくれる。
「身体が石にならなかった時は、黒よりも黒い影を怖いものと思わなかっただろ。多少は今までと違う感情になったんじゃないか?例えば黒よりも黒い影の事を知ろうとしたとか。」
確かに黒よりも影が何度も現れたが皆に何度も助けて貰うにつれ、恐怖心は徐々に薄らいでいた。それに僕はあの時、黒よりも黒い影が何者なのか?と疑問を抱いたのは事実だった。
その質問をしたときにクルミが僕の手を強く握っていた。その手は僅かに震えている。僕もクルミの気持ちと同じだ。あの時、自分と黒よりも黒い影。どちらが僕なのかの判断が曖昧だった。あのままクルミが助けてくれなかったら、僕自身が黒よりも黒い影になっていたかもしれない。
「クルミ、あの時はありがとう。きっとクルミがいなかったら、僕が僕で無くなっていたと思う。」
先程の大魔王の息子と聞いた時も僕は闇に飲み込まれようとしていた。
僕はクルミに何度も助けられている。
「親父、このネックレスがあれば、大魔王の力にも屈しないんだな。」
僕は、少しでも皆の負担を和らげたかった。
インフィニティ―・アイランドから危ない目にあってまで、このネックレスを運んできた親父達。
幼い頃から、僕を守ってくれた姉ちゃん。
コムセンやスミレ先生。
そして、クルミ…。
大魔王の息子かもしれないが、さっきのコムセンの攻撃ですら防いだんだ。
僕にも魔法が使えるようになるかもしれない。
不謹慎だがワクワクが止まらない。
ーミシッ。
そんなワクワクしている中、僕の胸のあたりから乾いた音が聞こえた。
「え?なんで?」
僕の首から下げたネックレスに罅が入っていた。
そして、
ーパリンッ。
粉々に砕けた。
「それなんだがな。さっき、コムラ先輩の魔法で壊れた。」
「他にも同じような物あるでしょ。ネックレスじゃなくても、指輪とか…。アクセサリーじゃなくてもいいから何か…。」
藁にもすがる思いで親父を見たが、親父は淡々と僕に説明をした。
「さっき、お前に渡したネックレスが最後の希望だったんだよ。さっき言った通り、渡したネックレスは島にあった物だ。島を見えなくする程の力だぞ。そんな簡単には見つからん。」
親父のその言葉を聞き、呆然とする。
そして、止めの一言。
「今、俺達の把握している物はもう無い。」
「コムセーーンッーーー!」
僕は、喪失という感情をコムセンへと向けた。
―――――
「親父、そもそも大魔王って何をやったんだ?」
食堂の隅で反省の為か、体育座りをして両手の人差し指をくるくる回しているコムセンのことは放っておいて僕は親父に「大魔王」の事を聞いた。
大魔王の息子らしいが、僕の大魔王の認識は魔女っ子レンジャー基準だ。
先程は、驚き闇にのまれそうになったが、認識を改めて確かめる必要があると考えた。
そんな僕をクルミは不安そうに見つめている。
…大丈夫。さっきはいきなり告げられ動揺したが、今は、皆を信じている。それにクルミも居てくれる。
「概ね、お前の予想通りだが‥」
親父が言うに大魔王とは、やはり僕の予想通り「悪」なのだろう。
―――――
「あくまでもこれは、おとぎ話だ。」
そう前置きをして親父は僕に話をする。
―はるか昔、突如として悪の大魔王が現れる。そして、その悪の大魔王は、言った。
「この大魔王が世界を滅ぼす。まず手始めにこの島国からだ。」
その島国と言うのは日本。
何故、この日本が狙われたのかは分からなかったが、全国各地に黒よりも黒い影が現れ人々は震え上がった。黒よりも黒い影は日中の日射しが降り注ぐ頃に現れては人々を襲った。夜は影が出来ないためか日中に現れる。徐々に人々は日中を怖がり、夜が待ち遠しくなる。火を焚けばその明かりで影が出来てしまうため、人々は明かりもつけずに夜に活動をした。だが、そんな状況では大した活動は出来るわけがない。畑は枯れ動物も狩ることが出来なくなりやがて食料が尽きることになる。
だが、不思議と食料が尽きることは無かった。
大魔王が現れた後にもう一人の王も現れていた。
それが、妖精王。
妖精王は大魔王に挑んでいたがなかなかうまくはいかなかった。
そんな日が何日も続き、あるとき覚悟を決めた様子の妖精王は言う。
「今日こそ妖精の王の私が大魔王を捉えます。」
そして妖精王は言ったことを守り、黒よりも黒い影は現れなくなった。
それと同時に妖精王も姿を現さなくなった。
その事で人々は妖精王が自らを犠牲にして大魔王を倒した。そう皆が考えたのだった。―
…やはり大魔王は、悪者なのだろう。
僕は親父の話しを聞いて新たな疑問ができた。
先ほどの親父の話しは、はるか昔だ。妖精王によって成敗された大魔王は生きているはずがない。
「それで、大魔王の息子である僕はどうやって親父達と出会えたんだ?」
「それはだな‥‥。お前は我が家の前に置かれていたんだ。籠に入っていたお前を見つけた時は、そりゃあ驚いた。」
「いつから僕が大魔王の子供だと?」
「初めから分かったよ。」
…初めから僕が大魔王の子供だと分かっていたということは、他の子供と違い何かしらの特徴があったという事だろうか?
今は、皆と同じ人間の姿だが子供の頃は、あの黒よりも黒い影みたいな姿だったのだろうか?
僕はやっぱり皆とは違って、人間ではないのかもしれない。
「籠の中に入っていたあなたはとても可愛くてねぇ。赤ん坊のころのお姉ちゃんといい同じくらい可愛かったわよぉ。」
「それなら、どうして僕が大魔王の息子と分かったんだ?」
「籠の中には手紙も入っていてな。その手紙には「「大魔王の息子だ、宜しく。」と書いてあった。その手紙は今も大切に保管してあるぞ。」
「はい?」
…おい、大魔王さんよ。そんな事あるか?
是非ともブックマークをいただけますと嬉しいです。
評価のポイント【☆☆☆☆☆】もお好みのポイントを押していただけますと、読んでくれたんだなと実感が湧き、何よりの励みとなります。
お手間かと思いますが、応援いただけますと幸いでございます。




