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普通の学園生活  作者: かいくいきい
第一幕
18/36

特番



終業式の前日。

午前の授業が終わった後にクルミとルリポートでデ…デ……デートの待ち合わせをした。二人であちこちのお店を巡りとても楽しかった。その時、家電コーナーにあったテレビ画面から流れたニュース。親父たちが旅行に行っているインフィニティ―・アイランドの側の海に突然、島が現れたとのことだった。


翌日の終業式の日。

「ルリポート」のテレビで見た突如現れた島の話題で持ち切りだった。


「昨日の特番見たか?」

「あぁ、見たよ。」


――――


クラスでもその話題で盛り上がっていた。特番というのは、昨日のうちに急遽、放送されたテレビ番組。

「都市伝説」や「オカルト」を題材にしていて、その番組名は古代に存在していただろう大陸の名前と同じ。


司会者と4人のコメンテーターが様々な話題を提供する番組。

その番組の出演者は皆、個性が際立っていた。

手相占いが得意なスーツを華麗に纏った司会者。

番組名と同じ名前の超有名な雑誌を手掛けるサングラスをかけた編集長。

その超有名な雑誌にも数々の情報を提供しているオカルト研究者。

紅一点、番組のロゴが描かれたTシャツを着ているオカルトウェブマガジンの編集長。

最後に、超能力芸人。


いつものメンバーでお送りしていた。


――――


「今日、報道され世間を賑かせた突如現れたあの島。あれは、何ですか?編集長。また場所がインフィニティ―・アイランドの近海って…、直訳すると無限の島ですよ。」

司会者がインフィニティ―・アイランドの近海に突如現れた島の事を超有名な雑誌の編集長に訪ねた。


「インフィニティ―・アイランドはね。はるか昔に二つの火山の溶岩がくっついて一つの島になったんだよ。真上から見ると∞の形をしているから、無限の島って呼ばれている。名前の通り可能性があふれている島なんだよ。今回の近海に突然、島が現れるのもその可能性の一つ。」


サングラスを掛け直しながら、超有名な雑誌の編集長は言う。


「えっ、そうなんですか?」

「かの有名な大富豪も前にインフィニティ―・アイランドで不思議な事象に遭遇した。との記述が残っている。」

「うわー、ここでもあの大富豪が出てきますか。しかも不思議な事象って…。」

「それは、島中の御赦免花が一斉に花が咲いたらしい。御赦免花って言うのはソテツの花が咲いた時の名称。」

「ソテツって何年かに一度だけ花が咲く植物ですよね。それが一斉にって…。」

「御赦免花の名前の由来は、罪人を迎えに来た船に合わせて咲くところからそう言われるようになったって説があるくらい。」

「うわ~、罪人の迎えですか?」


編集長の話しに興味津々で相づちを打つ司会者。


「このインフィニティ―・アイランドの近海で突然現れたこの島はね。すでに生物がいたらしいですよ。しかも余所では見かけないような種類の生き物がいくつも見つかったって聞いてます。植物や虫などもね。」


オカルト研究者もいつの間にか仕入れた知識を披露する。


「そうなんですか先生。たった一日ですよ。情報が早すぎますよ。因みに、この話は雑誌には?」

「まぁ、この情報は初公開。」

「大丈夫ですか?編集長?」

「ん?」


編集長は、困った顔をしながら目の前に置いてあるビールを飲み干す。

そんな謎めいた話をして、途中、ウェブマガジンの編集長が若干、下ネタちっくな話題を出し、


「これはとあるスジからの話なんですが、あの島が現れてからインフィニティ―・アイランドの方たちは、夜の営みが盛んになったらしいんです。何でも、出生率が上がったって。」


「まだ、昨日ですよ。いきなり出生率って、誰なんですか?とあるスジって。ていうか、編集長ビールの次は何を飲んでいるんですか?」

「これはね。インフィニティ―アイランドで作っている水。」

「いや、それ焼酎だろ。」


編集長と司会者の華麗なやり取りあったり、やたらテンションの高い超能力芸人がタロットカードでこの突如、現れた島の事を占う。


「ドゥン、ドゥンッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥン、ドゥンッ‥‥、赴くままにーーー」


そしてテレビ番組は終了した。


――――


クラスメイトは登校するとすぐに昨夜に放送されたテレビ番組の話題で盛り上がっていた。

クラス中が何となくそわそわとしている。そんな中、


「うわっ、これやばくないか?」


スマートフォンで投稿動画サイトを見ていた「オウセ コウタ」が叫んだ。


「どうした?コウタ。」


僕はコウタに近寄り、スマートフォンの画面をのぞき込んだ。


「いや、インフィニティ―・アイランドの動画を検索したら、この動画がヒットして、何でもリアルタイムらしいぞ。」


その動画は、飛行機の機内にいる乗客の一人が撮影しているらしい。

映っていたのはガタガタと激しく揺れながら飛行する飛行機、その窓のようだった。


「さっき、一瞬だけ映ったんだよ…、ほら、また。」


その映像に映しだされたもの。

それはあの影だった。黒よりも黒い影が機体の窓から見えた。

窓の外でウネウネと動く黒よりも黒い影。何度も僕に襲い掛かってきた黒よりも黒い影だった。


…えっ?何であれが?あいつが?


―ブーッ、ブーッ


その時、僕のスマートフォンにメッセージが届いた。

それはインフィニティ―・アイランドヘ行っている親父からだった。


「校庭に出ろ。アカネも呼んだ。

ー父 エンジ、母 ウルミ」


…またもや連名だ。校庭に出ろってなんなんだよいったい。

姉ちゃんも呼んだ?なにが?


「この飛行機、インフィニティ―・アイランドから羽田空港行きらしいぞ。」


そのコウタの台詞を聞き、僕は途轍もなく嫌な予感がした。


…そういえば、今日、親父達が帰ってくるってメッセージがあった。まさかこの飛行機に乗っている?

本当に何なんだいったい…。


理解の及ばない状況と不安な気持ちを抑えきれないまま、僕は親父の指示通り学園の校庭へと出た。


―――――


終業式が始まろうとしている時間。

皆が体育館に向かうが僕は皆と違う場所へと向かう。


校庭には誰もおらず、僕は校庭の端から上空に目を向ける。

遙か上空でうっすら見えるのは先程見た動画の飛行機だろう。

学園の真上を飛ぶ飛行機には黒よりも黒い影が纏わりついていた。


…間違い無い。

まさかあれに、親父達が乗っているのか…


飛行機に黒よりも黒い影が纏わりついているが、何とか飛行しているようだった。

この高度なら少なくとも、この学園に落ちる事はなさそうに思えた。


そう思った次の瞬間、飛行機はバランスを崩し突如、真っ逆さまに急降下する。

先程とはうって変わり飛行機はこの学園に向かって落ちて来る。


…えっ?まずくないか?

僕は血の気が引いた。


「落ち着いて。」


そう言いながら僕の腕を掴んでいたのは、姉ちゃんだった。

いつの間にか姉ちゃんは、僕の真横に現れていた。


…いつの間に来たんだ。親父が姉ちゃんを呼んだって言っていたが、何なんだ?


こちらに向けて真っ逆さまに落下してくる飛行機。その周りにはうねうねと動く黒よりも黒い影。


僕は、早くこの場から去ろうと姉ちゃんに視線を向ける。

だが姉ちゃんは、慌てる素振りが微塵も無い。

逆に慌てた様子の僕を落ち着かせる様にゆっくりハッキリと言う。


「大丈夫だから。」


いつもと違う雰囲気の姉ちゃん。

僕よりも背の小さい姉ちゃんが今は大きく感じる。それは、姉ちゃんが履いている赤いヒールのせいでは無い。

何よりヒールを履いていても姉ちゃんは小さい。


「何か失礼なこと考えてない?」


そんなことを言う姉ちゃんにはいつもの幼さは無くとても頼もしい大人の女性に見えた。赤いヒールは、姉ちゃんの仕事用の靴。仕事に行くときはいつも履いていた。

姉ちゃんは仕事中に、親父からのメッセージを受け取りここに来たのだろう……。





「よし、よし。ちゃんと校庭に来ていたな。」

「お願い聞いてくれたのねぇ、ありがとねぇ。」


その声と同時に僕の側に現れたのは、親父とお袋だった。



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