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普通の学園生活  作者: かいくいきい
第一幕
10/36

大魔王



虹ヶ浜学園 高等部の1年生が校庭に集められてこれから行われる年一回の体力測定.

その様子を眺めている存在がいた。

校庭の端。巨大な校庭を囲うように植えられた防風のための樹木達。その一つの枝の上にはミカン色の猫がいた。


…あれは、なんにゃ?


ミカン色の猫は驚き、目を見開いて校庭の様子を見る。

ミカン色の猫の視界に映っているのはこの世のものとは思えない光景。この広大な広場に1,000人は超えるだろう人間の数。

その人間達は皆、同じ色の着物を纏い、同じ方向を向きながら同じ動きをしていた。とても奇異なその動きは、両手を上にあげ降ろす。腕を横に振りながら足を曲げたり伸ばしたり、身体をねじりながら後方に向かって何かを投げるような動きなど。その動きは13種。そのすべての動きを1,000人以上の人間は揃って同じ動きをしていた。


その動きを終えた1,000人以上の人間。今度は同じ場所を見つめだした。

その視線の場所には五尺程の高さに作られた御輿。


その御輿の上には、1,000人の人間と同じ色の着物を纏った人間。

いや、この御輿の上の人間の着物を真似て1,000人以上の人間が纏っているのが正しいのかもしれない。先ほど行われた13種の奇異な動きもこの御輿の上の人間の動きを1,000人以上の人間が真似ていた気がする。


御輿の上の人間は、遠目からでもただ者ではない出で立ちに見える。1,000人以上の人間は皆、その人間の方向に身体を向け、御輿の上の人間が発する言葉を今か今かと待っているようにも見える。


なにより御輿の上の人間だけ首からなにかを下げている。

前に聞いたことがある。人間は力を持っている者ほど着飾る。従えている人間よりも着飾る。

着飾る物は被り物や羽織者など、そしてその一つに首飾りもあると…。


確かにこの1,000人以上の人間よりも御輿の上の人間は若干、風貌が異なる。

地に近い1000人以上の人間は誰もが身なりに気を使っているようにも思える。

だが、唯一人御輿の上の人間だけは違う。縦横無尽に暴れ狂う髪に自由奔放に伸びる髭。

あきらかにほかの人間とは違った。


御輿の上の人間以外の1000人以上の人間は髪を整え、髭を剃り身なりに気を使っている。

前に聞いたことがある。人間は統治している者へ気に入られるために身なりを整える。

統治している者の世話をする側近や妾といったものになることがとても名誉なことだと…。


間違いなく、この御輿の上の人間こそが1,000人以上もの人間を統治しているのだろう。


…にゃ、にゃさか…。いにゃ、そんなことはあり得ないにゃ‥‥


一人の人間の世話をしたい人間が1,000人以上もいる。

そのことがどれだけ異様なことか…。


目の前に広げられる光景が信じられないミカン色の猫だった。だが更に驚く光景を目の当たりにする。


神輿の上の人間は、下にいる1,000人以上の人間達に指示をする。すると、半数の人間は横に移動し跪く。

残り半数の人間はその場で肩幅ほど足を開く。よく見ると足元には三つの線が引かれていた。その真ん中の線をまたぐようにそのまま中腰になる。

そして、その場はとても静かになる。

誰一人声を出さず何かを待っているようだ。



そして、その静寂を壊すように声を発したのは、御輿の上の人間ただ一人。



「よし、始めっ。」



その言葉を発した次の瞬間。

中腰に構えていた500人程の人間が一斉に、右へ左へ動き出した。右へ行っては、元いた場所に戻り、左に行っては元いた場所に戻り、また右に行く。それを、ひたすら繰り返していた。

だが、御輿の上の人間は、必死に左右に動く500人程の人間には興味がないのか自身の首飾りのみを見つめている。


少しでも興味を持ってもらうためか、500人の人間は自分こそが秀でていると言わんばかりに早さを競っている。


…にゃ?今度はにゃんにゃ?


ミカン色の猫の耳は校庭に向いている。


…これは、にゃにを言ってるにゃ?


聞こえるのは、先ほど跪いた500人程の声。

一斉に数字を唱えだした。小さい数字から、徐々に大きい数字に。途中から様々な数字が混じり合わさり何を唱えているか判断がつかなくなる。それはまるで魔法の呪文のように…



前に聞いたことがある。ある願いを叶えようとした人間は装飾などの道具を使い、従えた多くの人間を生贄にし、儀式を行ったということを…。



…にゃさか、これは、にゃにかの儀式かにゃ?



その景色は、終始異様だった。同じ色の着物を着て、同じ行動をする。

しかも、御輿の上にいるたった一人の指示で。


前に聞いたことがある。人間はより強い力に従う。

それが同じ人間とは違う存在だとしても…。


ミカン色の猫は、考えた。

これは、なにかの願いを叶える儀式。

あの御輿の上にいる者こそが、この世界最強の存在だと。



…間違いにゃい、あいつは大魔王にゃ‥‥



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