始まりの前日【プロローグ】
主人公の学園生活が始まります。
応援をお願いいたします。
「どうした?これで終わりか?」
大きな黒マントを羽織り凶悪な笑顔を見せながらその男は言った。
男の視線の先には、うつ伏せで倒れている5人の魔女。
「くっ、なんという力だ。」
「このままでは、世界が滅ぶ。やるしかないのか。」
「決着をつけなくちゃ。」
「世界を守るために、しょうがないんだよ。それにこのままじゃ…。」
「わかってる。でも、でも…。」
痛々しい身体をなんとか起き上がらせながら5人の魔女は言う。
5人の魔女は、起き上がり地面片隅に倒れている小さな妖精に目を向ける。
5人の魔女は目の前で凶悪な笑みを浮かべている男の魔法を受け身体中はボロボロだった。
だが、片隅で倒れている妖精はそりよりもひどい姿だった。胸のあたりが弱弱しくも上下に動いているので辛うじて生きてはいるようだが、身体の小さい妖精は次の魔法にはもう耐えることはできないだろう。
その妖精の姿を見た5人の魔女は覚悟を決めた。
「マジカルピンク、隙をつくって。」
「わかったよ。」
幼い頃、リビングのテレビで家族と一緒に見ていたアニメ放送。
そのテレビから、聞こえるその声。
「ホーリーフラーーッシューーー!」
そのアニメは5人の魔女が数々の困難に立ち向かい、最大の敵である悪の大魔王から世界を守る物語。
悪の大魔王は、闇の力を使い人類を意のままに操り、世界を手に入れようとしていた。
悪の大魔王に操られた人類は数々の悪事を起こす。
優しいサラリーマンが突如、銀行強盗を行おうとしたり、真面目な学園の教師がハイジャックを行おうとしたり、毎週放送される度に操られた人々が起こす悪事は、回を追おうごとに凶悪さが増していった。
だが、どの悪事も「行おうとした。」だった。
操られた人々が起こす悪事は5人の魔女によってすべてが無事に解決。操られた人々も元に戻していった。
そうして大魔王の闇の力に立ち向かっていった5人の魔女。
最初、魔女の4人は、同い年の高校生。普通に登校し授業をうけ、同級生と一緒にお弁当を食べたりと、どこにでも居る普通の高校生。魔法は使えず、悪の大魔王に抗う力など持ってはいなかった。
そんなどこにでもいる普通の4人の女の子に運命の出来事が訪れる。
ある日、修学旅行で行ったとある島。
その島を一緒に行動をしていた4人の女の子。そのうちの一人の女の子が不思議な色の石を見つけた。周りの石とは違いその石だけわずかに輝いていた。その石に女の子が何気なく手を触れると石は輝きを増すと同時に小さな妖精の姿へと変えた。
女の子の掌の上で妖精はいままで寝ていたかのように伸びをした。
妖精は4人の女の子に気が付くと背中の羽をパタパタと動かし4人の女の子の目の高さまで飛ぶ。
「助けて頂きありがとうございます。私は、妖精王の命を受けこの世界にやってきた妖精です。」
妖精はお礼を言った後、この世界にやってきた理由を4人の女の子に話す。
この世界には悪の大魔王がいる。その悪の大魔王は世界を手に入れようとしている。それを阻止するため、悪の大魔王を封印することの出来る「封印石」を持ちこの世界にやってきた。
だが、大魔王に返り討ちに遭い封印石を壊され、石の姿に変えられ逆に封印されてしまった。
そして何日も自身の封印を解く者を石の姿で待っていたことを話した。
「一緒に、悪の大魔王を倒してくれませんか?そのため妖精王にお会いいただきたい。」
妖精は妖精王のもとへ4人の女の子を連れていく。
そして妖精王は魔法のステッキを女の子達に渡した。
4人の女の子は魔法のステッキを受け取り、魔法を操れる魔女へと変身する。
魔女となった4人の女の子たちは光の魔法を使って悪の大魔王の思惑を何度も阻止をした。
悪の大魔王に操られていた人が、光の魔法を浴びると影が立体になる。
それが悪の大魔王の力の具現化だった。立体になった影は魔女達に襲いかかる。魔女達は力を合わせ魔法を使い影を退治していった。
最後は大魔王を退治して物語は終わるのだが、その途中では大魔王の力に心が挫け、何度も敗けそうになる。その度に魔女達は成長をする。
――――――
僕はそのアニメが大好きだ。
自室のテレビで僕は幼い頃から見ていたそのアニメを見ている。
お年玉で買った「魔女っ子レンジャー」全49話DVDセット。
「くぅー、やっぱりピンクのホーリーフラッシュは最高だなぁ。」
僕は、何度も繰り返し見た「魔女っ子レンジャー」の感想を一人ゴチする。
僕は、ピンクこと「マジカルピンク」が特にお気に入りだった。
5人の女の子の一人、主人公マジカルレッド。その妹のマジカルピンク。
物語の途中から登場するキャラでテレビ放送をしていた当時は、幼かった僕と同世代だった。
僕はマジカルピンクに対して、他の魔女っ子レンジャーよりも特別に感情移入をしていた。
―――――
アニメの最終回。
悪の大魔王との決戦前。魔女っ子レンジャー達に妖精は残酷なことを伝える。
それは決められていたこと。
悪の大魔王を倒せば、魔法のステッキは力を失いただのステッキとなる。
そのことは特に問題は無い。
悪の大魔王がいなくなれば、魔法の必要は無くなる。行き過ぎた力は、第2の大魔王を生みだすことにも成りかねない。魔女っ子レンジャー達は皆、同じ意見で「問題ないよ」と笑い合った。
「悪の大魔王を倒したら、お別れです。」
だが、妖精の次の言葉を聞き、魔女っ子レンジャー達は笑うのを止め真顔になる。
悪の大魔王を倒したと同時に、時が戻される。魔女っ子レンジャー達と妖精が出会う前までに…。
それは、初めから何も無かったことになる。
大魔王に操られた人々を救ったこと。
様々な困難に立ち向かったこと。
そして…
いずれ友達となる妖精と出会ったこと。
そのすべてが無かったことになる。
―――――
そして、決着の時。
魔女っ子レンジャー達は、魔法のステッキを構え言葉を揃えて唱える。
「「「「「レインボーフラーーッシューーーーーー!」」」」」
5人の合体魔法が悪の大魔王へと向かう。
魔法を放った魔女っ子レンジャー達は、皆、勝利の確信と同時に頬に雫がつたう。
そして、魔女っ子レンジャー達は、妖精に出逢う前に戻される。
妖精に出逢った事も、悪の大魔王と戦った事も全て忘れて、元の生活に戻る。
――――――
「ふぅ…」
エンドロールを見終わった僕は、一息つくと仰向けに寝転がり天井を見上げる。
幼い頃から何度も見たアニメだが、何度見ても感動の気持ちは薄れない。
そして、余韻も残る中、自室の隅に目を向ける。
そこには、一度だけ袖を通した服がハンガーに掛かっている。
程よい光沢感のある上着に、チェックのグレーのズボンと赤いネクタイ。
明日から着ることなる服。
僕は明日、高校生になる
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