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◇23

「魔獣狩りでユーステス殿下を監視しろって?!」


ラノベ本によると、次の主人公と第一王子の接点は、学園内のイベントである『狩猟大会』。

魔術を教える学園だけに、狩るのは魔獣だ。

加護は個々で違うものなので、参加は自己申告となる。

(光の加護持ちに戦闘は不向きだものね。)

学園が管理する山で生徒たちが各々狩りをして、獲物の量と種類によって年間評価に加点されるというもシステムだ。

学園卒業後は第一騎士団入隊と第二王子の側近になることが決まっている兄が、この大会に出ないという選択肢は考えられず、聞けばウキウキで「当たり前だろう?」と返された。

お調子者の兄の剣術と魔術は、ずば抜けて秀でているのだから、『流石、ユリウス侯爵』と言ったところか。

そして、この狩猟大会…無事卒業が出来るかどうかという、成績的に切羽詰まった状態にある第一王子が参加しない理由が見つからない。


主人公は当初参加する意思はなかったのだが、王子から誘われて参加を決める。

王子「私は今年で学園を去る。君との思い出を作らせてくれないか?」

主人公「でも、私の魔術なんてまだまだ未熟ですし、きっと貴方の足手まといになるわ。」

王子「君のことは私が守ると約束しよう。それに、君と一緒にいられるだけで、私は嬉しいのだ。」

そして、狩猟大会では、学園が管理している山であるのに関わらず、何故か狂暴な魔獣が二人の前に姿を現す。

その魔獣とは蛇型の大型魔獣『ニーズヘッグ』

通常、普段から訓練を積んでいる騎士団でも数人がかりで倒す魔獣を目の前に立ちすくむ主人公を、ボロボロになりながらも守り戦う王子の姿を見て、主人公は感動し、最後は二人で力を合わせて倒す流れとなっている。


実際に『ニーズヘッグ』が出て来るとは思わないが、第一王子がまともに戦える気がしない。

周囲を色々燃やし尽くすだけ燃やし尽くして、隠れる場所もなく窮地に陥るだろう。


正直、第一王子がどうなろうが知ったことではないのだが…、そこに無関係なご令嬢が関わるかと思うと、看過できないのだ。

「お兄様はご令嬢さえ守ってくれればいいのです。」

私の説得に、兄は渋々ながら了承してくれた。


私はほっと胸を撫でおろし、学園に舞い戻る兄を見送ったのだった。


❀-----------❀


王城の図書室で、『建国の裏歴史』という禁書庫の書物を開いた私だったが、心が落ち着かなかった。

今日は学園で『狩猟大会』が開催される日だ。

(お兄様は上手くやってくれるかしら?)

そわそわと窓の外を眺める私に、神の声が降臨した。

「心配なら、覗きに行ってみるか?」

「出来るのですか?」

「ここ、一応王城だし?学園に繋がる移動魔術具がある。」

青い目の神に、私は最大限の懇願を示した。


「ラカーシュ殿下、お願いします!無事、確認出来ましたら、殿下の言うことを一つ何でも聞きますから!」

「ほう…。それは良いね。」

見つめた青い目の奥が、キラリと不気味に輝いたように見えたことは、見なかったことにした。


❀-----------❀


第二王子に連れられて、王城隣接第二騎士団の詰め所に着いた私は、感嘆の声をあげた。

「これが…瞬間移動の魔術具!思っていたより大きいですわ!」

第二騎士団は魔術具の制作と運用に特化した部隊だ。

第一騎士団が切り込み隊だとしたら、第二騎士団は後方援護部隊と例えられる。

その第二騎士団の詰め所には、ありとあらゆる魔術具が揃っていた。

(本で見た物ばかりではないのですね?!)


ただ覗くだけだからということもあり、護衛騎士2名だけを連れて、私と第二王子は学園に向かった。

学園についた私たちは、狩猟大会が行われている山へと走る。

「こちらからが近道です。」

そう教えてくれた護衛騎士は、学園の卒業生で、学園時代は学園内のあちこちで剣術の訓練をしていたのだと話す。

彼によれば、狩猟大会が行われるこの山は、恰好の訓練場だったのだとか。


無事、山には入った私たちだが、問題の第一王子がどこにいるのかを見つけ出す術を持ち合わせていない。

「どこに行けばいいのかを、考えていませんでしたわ。」

自分の考えの足りなさに反省していると、第二王子は「いや、すぐに分かるだろう?」と余裕の笑みを見せた。

どういうことかと首を傾げた瞬間、前方1キロくらいの場所から火柱が上がり、納得した。

「馬鹿は’’いちいち’’やることが大きいから。」

「…そうでしたわね。」


私たちは火柱が上がった方向に向かって歩き出す。

近くには小さな小川が流れており、川に沿って歩いていると、池に出た。

先ほどの火柱はここで上がったのかと分かる程に、池の付近の木々が焼け焦げている。

「あの馬鹿は自然破壊を狙っているのか?」

溜息交じりに呟く第二王子に同意する。

その時、突然地響きがしたかと思うと、私たちの立つ地面が割れ、割れ目は私の足元に私がスッポリ落ちるには十分な大きさの穴をあけた。

(あ。これヤバイやつだわ。)

こんな時でもその後の最悪の事態を冷静に判断できる自分の思考に、嫌気を覚えた。

「リリーシュア!!?」

割れた地面に吸い込まれていく私を、第二王子が呼んだ。

彼が咄嗟に伸ばした手を握ろうと藻掻き、「あ、届いた」と思った時には、彼も一緒に落ちていた。


落ちた先は、なぜか先ほどの池。

しかし、一緒にいたはずの護衛たちの姿が見えず、焼け焦げた木々もない。

「水のお陰で死なずに済んだ。」

「ええ。ですがここ、何だか変です。」

とりあえず、水から上がった私たちは周囲を調べることにした。

見れば見るほど、先ほどまでいた山の中にそっくりだった。

隣を歩く第二王子も、興味深げにあちこちを調べているようで、その顔はまるで『冒険者に憧れる子供』のようだ。

「奇妙だ。面白い。」

そう呟きながら、草を触ってみたり、木を触ってみたり、池の水を飲もうとしたり…「殿下!それはダメです。」流石に止めた。


そうこうしているうちに、ここはちょっとした異次元空間ではないかという結論に辿り着き、近くの岩に腰を下ろした。

「そもそも、異次元空間が現れたという記録は少ないので、これは大変貴重な体験と言えます。」

「うん、駄目元で試してみたが、一応加護は使えるらしい。」

「あの~」

「この体験は本に残した方が良いですよね?」

「我々が子供であることが恨めしいな、信用されない可能性も否定できない。」

「あの~すいませーん。」

「そうですよね…。では…。ん?」

私たちの会話に入ってくる呼び声に振り返る。


そこにいたのは先ほど第二王子が飲もうとした池から身体を半分出した、顔が7つある蛇の魔獣だった。


「な!いつの間に?!」

咄嗟に私を庇って剣を構える第二王子。

(流石、王子様!)

「いやいやいや、落ち着いてくださいよ~。」

焦る魔獣。


ん?魔獣が喋ってる?

「殿下、魔獣って話せましたっけ?」

「話せるわけないだろう?剣で切った時『痛い!』とか言われたら、切りたくなくなるじゃないか。」

「でも、あれ、喋ってます。」

私があれと指さした先にいる魔獣はペコペコと7つの頭を下げて、こちらを見てきた。

「いや、私には聞こえないが?」

「え?さっきから喋ってますよ?」

「いやあ、お嬢さんが私たちの言葉を理解する加護持ちで助かりました~。このままじゃ、交渉前にそこの御前に切り捨てられるところでしたわ~。ほら、私、頭は7つありますが、全部の首が合流した所?そこ切られちゃえば終わりじゃないですかぁ?それに、喋れるのは真ん中の頭だけですし、あとはただの飾りみたいなもんっていうか…ね!面白いでしょう?」

「殿下、あの蛇、真ん中の頭以外は飾りらしいです。」

私が蛇の魔獣の言葉を訳して殿下に伝えれば、第二王子は納得したように呟いた。


「他の頭の飾りは…無駄じゃないか?」

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