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幼馴染に恋愛経験ないことを馬鹿にされたので、幼馴染の妹と付き合いだしたらギスギスし始めた件  作者: ヨルノソラ@「妹に婚約者を奪われ〜」電子書籍発売中!
二章

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何してんだろ私

 例えば、自己犠牲に富んだ人間かと聞かれたら私の答えは間違いなくノーだ。


 私が損をするのは嫌だし、自己のためなら他人を蹴落とす覚悟だってある。目的達成のためならどんな手段だって使いたいだし、やらないことで後悔をしたくない。


 けれども私は、初恋を実らせるというミッションにおいて大きなミス……ううん、暴走をしてしまった。私の行動の数々がなっくんに嫌われて仕方のないものだったと、今なら痛いほどわかる。しかし当時の私の視野は狭くて、何より自分のやっていることが正しいと思い込んでいたのだ。


 要するに何が言いたいかと言えば、今の私は自分の立場を理解している。身の程を弁えて、なっくんの幼馴染として出来ることをしていくつもりだ。


 酷い姉と思われるかもだけど、紬がなっくんに害を与えるのなら一刻も早く距離を取らせたいし、逆に紬といてなっくんが幸せなら応援したいと思う。


 じゃあ現状はどうなのかな。

 なっくんと紬がこのまま別れるのが、なっくんの幸せになるのかな。それなら、私は黙って見届けたい。けれど、そんなに単純な話には思えなくて……少なくとも、一度、冷静に話し合いの場を設けた方がいい気がしている。


 けれど、それを直接になっくんに言うことはできなくて……気が付けば私は、なっくんのことを尾行をしていた。


(あーもう、何してんだろ私……)


 これじゃストーカーと一緒だ。

 でも、なっくんを放っておくことはできないし……。


 てかなっくんと話してるのって、この前、私にしつこく言い寄ってきた男? 

 どうしてあんなヤツとなっくんが話してるわけ。あんな男と話すくらいなら私と話した方がよくない? 


「え、何してんのお姉ちゃん」


「アンタこそどうして……」


 声をかけてきたのは紬だった。

 紬は後ろ手にスマホを隠すと、視線をそっと逸らした。


「ウチはちょっと運動しようかなって思っただけだけど」


「ふーん、スマホで追跡したんだ。なっくんって抜けてるよね。位置情報の共有切ればいいのに」


「ち、違うから! 別にナツ先輩を追いかけてきたとか、そんなんじゃないもん!」


「はいはい。そういうとこ直さないと、なっくんと仲直りできないと思うよ」


「そ、そういうお姉ちゃんこそどうして? まさかナツ先輩を尾行してたの?」


 私は頬に冷や汗を垂らすと、紬から視線を逸らした。


「お姉ちゃんも人のこと言えないじゃん」


「うぐっ」


「てかあの子、誰?」


 奇抜な格好をした女の子が、なっくんの前に現れる。

 この前出会った、なっくんに興味があるとか言い出した厨二病の子だ。


「あ、紬は知らないのか。何故か、なっくんに好意があるっていう女の子。訳わかんないよね」


「何故か? いやナツ先輩を好きになる気持ちはメチャクチャ共感だけど。むしろ、ナツ先輩を好きにならない方がおかしくない?」


「いや、なっくんって別にモテるタイプではないでしょ」


「それはお姉ちゃんが牽制しまくってたからじゃん」


「牽制? そんなことしてないけど」


「はぁ、これだから無自覚はタチが悪いよね」


 呆れたように吐き捨てる紬。

 なっくんと幼馴染であることを言いふらしたり、不必要になっくんに近づく子には睨みを利かせたりしてたけど……あれは牽制にはならない、よね?


 と、物陰から様子を窺っていると、なっくんが女の子にチョコを食べさせ始める。

 何あれ羨ましい! じゃなくて!! 


「は? それはダメでしょ……ウチというものがありながら……!」


 拳を握り締め、メラメラと嫉妬心を滾らせる紬。

 私は必死に紬の腕を押さえて、彼女の暴走を引き止める。


「お、落ち着きなって! ね?」


「ナツ先輩、ウチと別れることに抵抗ないんだ……。もう新しい子作って……引きずってもくれないんだ……」


 今度はしゅんとテンションを落として、どんよりとテンションを下げている。

 ああもう、この妹ホント面倒臭い……! 


「大丈夫。なっくん、ああいう子はタイプじゃないから。多分」


「わかんないじゃん。厨二病丸出しのああいう子が好きなのかもしれないじゃん!」


 私は表情を顰めた。

 実際、なっくんがどういう子を好きなのかは知らない。


 もしかしたら厨二病全開の痛い子が好きだったりするのかな。


「こうなったらウチも厨二病になる!」


「なに馬鹿なこと言ってんの。厨二病ってなろうと思ってなるもんじゃないからね」


「でもナツ先輩のタイプがそうならウチはできるもん」


「へえ、じゃあやってみてよ」


「く……クックック、我が名はスターシャイニングエンジェル。左腕に宿し光の力で世界を侵食する者なり……みたいな?」


「恥ずかしくないの?」


「なんでそういうこと言うの⁉︎ 初めてやったんだから褒めてよ!」


 涙目になりながら、ポカポカと私の背中を叩いてくる紬。

 鬱陶しいな、と紬につい意識が向いてしまった時だった。


「なにしてんの」


「な、なっくん……」


 戸惑い気味に声をかけてくるなっくん。はしゃぎすぎたみたい……。


 ピンと張り詰めた空気。

 紬は私の背中に隠れて、素知らぬ顔であさってを見ている。


 私はダラダラと汗を流しながら、作り笑顔を浮かべるのが精一杯だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 牽制行動から美鶴を引き取れよなっくん!と思いたいけど、彼氏いるとか、なっくんを脳破壊してるから応援出来ないし同情出来ないのが美鶴
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