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幼馴染に恋愛経験ないことを馬鹿にされたので、幼馴染の妹と付き合いだしたらギスギスし始めた件  作者: ヨルノソラ@「妹に婚約者を奪われ〜」電子書籍発売中!
一章

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12/27

過去 後編

 夏祭り会場を離れ、私はトボトボと河川敷を歩いていた。


「あぁもう何してんだろ私」


 頭の中はなっくんでいっぱいだった。

 一緒にいた女の子が誰なのか、付き合っているのか付き合っていないのか、どうして私に何も教えてくれなかったのか。訊きたいことでいっぱい。


 私がこんなに独占欲に塗れた人間だとは思ってなかった。


「もしあの子がなっくんのカノジョなら、身の振り方考えなきゃな」


 今後はなっくんとの接し方を改めないといけない。


 もう一緒に帰ったり、ゲームしたり、遊びに行ったりできなくなる。

 ヤだな。こんなことなら私がなっくんのカノジョになれば……。


「って、何考えてんの私は!」


 なっくんと付き合うとか意味わかんないし。

 そもそも私はなっくんの幼馴染なわけで、恋愛とかできる間柄じゃない。


 愚かな思考を掻き消すように、私は首を大きく横に振る。


 と、ぽつりと冷たいものが頬を伝った。


「え? ちょ、うそ……」


 ぽつぽつと、徐々に強まってくる。


 すぐに視覚できるほどの雨に変わっていった。

 私は頭を両手で覆いながら、橋の下へと退避した。


「うわ、これしばらく止まないやつだ……」


 空を見上げて、私はどんよりと項垂れる。

 その場でしゃがみ込むと、近くに落ちていた花を手に取った。


 私は花びらを一枚ずつ取りながら。


「付き合ってる……付き合ってない……付き合ってる……付き合ってない」


 昔よくやった花びら占いを始める。

 こんなことしてもしょうがないのにな。何やってんだろ私。


「──てる……付き合ってない……付き合って」


 一人呟きながら、だんだんと気持ちが沈んでいく。

 と、人影が差し込み、私は首だけで振り返った。


「こんなとこで何してんのお前」


「なっくん……」


 なっくんが傘を差しながら、呆れたように私を見下ろす。


 私は咄嗟に花を後ろ手に隠すと、勢いよく立ち上がった。


「み、見たらわかるでしょ。雨宿りしてるの。そっちは?」


「俺は……なんていうか、まぁいいだろ」


 歯切れ悪く誤魔化すなっくん。


「ふーん。てか、こんなとこに居ていいわけ?」


「どういうこと?」


「カノジョさんを一人にしちゃダメでしょ。ちゃ、ちゃんとしなよね。なっくんと付き合ってくれる子とか絶対大事にしないといけないんだから」


「は? いや何言ってるの?」


 投げやりに言う私。

 なっくんは眉間に皺を寄せて、疑問符を浮かべている。しらばっくれる気なんだ。ちょっとムカつく。


「し、知ってるんだからね。なっくんが女の子と一緒に夏祭りに来てるのみたし」


「なんか誤解してないか」


「誤魔化さないで。水色の浴衣着た丸メガネの女の子と一緒にいたじゃん!」


「誰のこと言って……ああ、あの子か」


 私がジト目を向ける中、なっくんは呆れたように続けた。


「落とし物してたから、俺が拾って声かけただけだよ。付き合ってないし名前すら知らない」


「え? そう、なの? じゃあ、なっくんにカノジョできたわけじゃないの⁉︎」


「できてない。てか、近いって! 落ち着け!」


「あ、ごめん」


 私はつい興奮して前のめりになってしまう。

 なっくんは頬に朱を差し込むと、こめかみの辺りを指で掻いた。


 なんだよかった。私の勘違いだったみたい。


 ……よかった? 

 いやいや、よかったはおかしいよね? 


「しばらく雨止みそうにないし、さっさと帰るよ。ほら」


「うん。……? でもじゃあ、どうしてなっくんは夏祭りに来てたの?」


「吉岡さんから連絡あったんだ。今日の予定なくなったんだろ? それで、美鶴一人でいるのかなって」


「もしかして私のことを探してくれてたの……?」


 私はパァッと目に光を灯す。


 なっくんは気恥ずかしそうにあさってに目を向けた。


「ふぅん? そっか、へぇ? なっくんって私のこと大好きだよね」


「は、はぁ?」


「照れなくたっていいじゃん」


「だから、近い。もう少し離れろって」


「離れたら雨に濡れちゃうんですけど?」


「もう一本傘持ってくるんだったな……」


 肩が触れ合うくらい身体を近づける。


 鼓動が私の知らない速度で鳴っている。

 なっくんの隣にいるのはいつものことなのに、今は不思議なくらい充実感があった。


(これが好きってことなのかな……)


 私は、覗き込むようになっくんを見つめる。


「ん? どうかした?」


「う、ううん。なんでもない!」


 この日、この瞬間。

 私はなっくんのことを、ただの幼馴染としては見られなったのだった。

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