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あの流れ星の名前はまだ誰も知らない

作者: 伊沼 玲

昔母が教えてくれた。

「流れ星が消えるまでに願い事を3回となえると,願い事がかなう」

今考えれば無理な話かもしれない。けどあの時、その瞬間本当に願いがかなったのかもしれない。これは誰も知らない、僕だけの話だ。


三年前

あるとき母さんが病気で倒れて入院した。

「ねえ、雪紀(ゆき)

「なに?」

「昔さ流れ星が消えるまでに願い事を3回となえると,願い事がかなうって言ったの覚えてる?」

そんなことあったけ。僕は昔から忘れっぽくて物事を覚えるのに時間がかかる。

「覚えてないや」

「それで願いが叶うなんてそんなことあるわけないよね…。」

それが最後の母さんとの会話だった。

葬式は家族だけの小さな葬式で終わった。

僕の家は母さんと僕の二人暮らしだったため僕は親戚に引きとられることになった。

引き取られた先の僕の誰かに作られた偽物の居場所幸せなとこではなかった。誰かとすぐ比べられ、引き取ったくせして厄介者扱い。僕はその家で異物と化した。誰にも必要とされず、誰にも助けを求められない。まさに一人の世界だった。

そして何年かしたうちに追い出されることを僕は知って、その家を出た。

なんのために。なにをするために。なにか必要?

そんなのどうでもよかった。

とにかくなんでもよかったのかもしれない。そう思っていてずっと歩いていたら、小さいころ母さんときた思い出の場所へ着いていた。

芝生に座り黒く染まった空を見る。

ふと、目を閉じる。

「ねえ雪紀、流れ星が消えるまでに願い事を3回となえると,願い事がかなうんだよ?」

そうか。母さんが言いたかったのは、僕が唯一母さんとの思い出がここだったことを覚えていてほしかったのか。僕はなんて最低なのだろう。そう思った瞬間僕の目に映る景色が滲みだした。

まんまるい月が滲んでいる。泣いているのか。なぜか涙が止まらない。

もう一度空を見上げると流れ星が一瞬見えた気がした。

そこで僕は願った。

「母さんが願ったことをかなえてほしい。」

そう、強く、強く、願った。何かが起きるはずがない。周りを見渡しても何もない。

あるのはこれから必死にもがこうとする僕の姿だった。

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