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4.乙女ゲーム『この恋をアナタと』①(マリア視点)

 

 あたしは前世、日本という国で普通のOLをしていたわ。それがいつの間にかこの国で男爵令嬢になっていた……って気がついたのは貴族が全員通う王立学園の入学式の日、校門前に立った時だった。

 そこで前世遊び倒した乙女ゲーム『この恋をアナタと』のヒロインだと自覚したの。

 ぶっちゃけ“恋アナ”はヌルゲーだった。攻略対象者も3人だけだし。(あ、コンプリートするとあと2人、攻略ルートが開くけど、それはあくまでもコンプリートした上で開くルートだから、やり直しの効かない現実世界では到底攻略不可能な人なのよね)


 ヌルゲーでゆるゲーだったけど、あたしは好きだった。特に攻略対象のジョン王子が大好きだった。


 彼は可哀想な生い立ちだ。王子として生まれたけど、母である王太子妃は彼を生んで早々に亡くなった。

 父である王太子は愛する妻そっくりの息子を顧みなかった。愛する妻の忘れ形見であると同時に、その彼女を奪った憎い相手だと認識していたから……。

 そして王太子は息子に冷たく当たりそうな自分をよく理解していたから、彼と関わらないという選択をした。

 結局ネグレクトなんだから冷たい対応には違いないと思うけど、暴力振るったりしないだけマシなのかな。


 そんな放置された残念王子の彼の何がいいって、ビジュアルが素晴らしいの! 柔らかそうなピンクブロンドと青い瞳。色気たっぷりの秀麗な美貌! 彼のスチルは絶品だった!


 性格は一口で言えば、その顔を裏切る粗野で俺様。マザコンでファザコン。生い立ちのせいで寂しがり屋というギャップ持ち。そこもあたしのツボにハマったのよねぇ。段々とヒロインに心を許していくと甘えて来るのよ、人に懐かない野良猫が懐く様とでも言えばいいかな、あのヒロインの肩に寄りかかって居眠りする放課後の教室のスチルは特にお気に入りだったわぁ……


 そんな訳で、あたしはジョン王子攻略にかかった。王子の婚約者の座を勝ち取れば、ゆくゆくは王妃に成れるしね! 逆ハールートなんて狙わないわよ。あたしは一途な女なんだから♪

 まぁ、どのキャラも皆好きだから、彼らのトラウマを解消する為のアドバイスとかはしたわね。でも程々の好感度で抑えておいた。好かれ過ぎるのも厄介だし、やっぱりジョン王子が1番好きだしね♪


 でも、変なのよね。悪役令嬢のグレース・フォーサイスがちっとも現れなかったの。

 学園内でのあたしに対する嫌がらせはあったから、悪役令嬢が人を使って虐める方法に変えたのかな。変なの。彼女の侍従がジョンの前に来た時はギョッとしちゃったわよ。

 まぁ、彼女を裏切ってあたし達に有益な情報をくれるお助けキャラになってたから二度ビックリよ。

 ん~、あの娘の性格だと自ら手を下しそうな気もしたんだけどなぁ……ま、どっちでも良いわ。

 ジョン王子は攻略出来たし、卒業記念パーティでちゃんとグレースの断罪も出来たしね!


 グレース、卒業パーティで初めてちゃんと実物を見たわ! やっぱり悪役令嬢だけあってスペックは良いのよね。輝く金髪と黄金の瞳。キラッキラだったわ。身体もボンキュッボンでゴージャス! 羨ましい! とても18の同じ歳とは思えない程妖艶な美女だった!


 一つ一つ罪を暴いて断罪したら絶望的な表情をしていたからスッキリした~♪

 でも、流石腐っても公爵令嬢ね。退場する最後の後ろ姿まで威厳たっぷりで堂々としてて、これぞラスボス!って感じ。うっかり綺麗……って思っちゃったもの。


 この後は地下牢で犯罪者達に輪姦(まわ)されるのかと思うとちょっとだけ可哀想かなって思ったけど、今まであたしの事虐めてたんだもの、因果応報って奴よね、仕方ないわ。


 そう思ってジョンと学生最後の夜を目一杯踊って楽しんだ。そして夜も更けてから王子宮に連れてこられて……満天の星空の下、ジョンがあたしにプロポーズしたわ。


『これから俺の一生をお前に捧げる。俺と共に生きてくれ。俺から……離れないでくれ』


 ラストスチルよ! 胸熱だったわ!

 勿論、返事はYES一択!

 初めての夜を2人で過ごして……物語は終了。めでたしめでたし!


 なのに。


 事態は思ってもいなかった方向に動き出した。






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