目が覚める。神主になる。
目を覚ます。
辺りを見回すと広大な森林とそこにポツンとたたずむ一社の神社。
厳格な雰囲気なんてこれっぽっちも漂ってなくて、風が吹けば今にも崩れ落ちてしまいそうな、そんなボロ神社。
その中から一人の女の子が姿を表す。なんとなく神々しい雰囲気をまとったその少女は俺に近づき、言葉を発した。
「ようこそ、異世界へ。」
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「いや〜、上手くいって良かったです。あなたの転送。」
状況を全く飲み込めてない僕を神社に案内しながら、少女はそう言う。質問したいことは山ほどあるのだが、口がうまく動かない。そんな僕の様子を見て何故か不満気な少女。
「というか、なんです。さっきから一言も喋らないで。私、神様ですよ?ほら、あなたの好きな神様なんですよ?」
「神様?」
ずかずかと人様のかも知らないで入り込んでくる情報が頭の中でパンクして、とうとう僕の口は開いた。
「そう、神様。好きなんだったらもっと私を敬ってくださいよ。」
…目の前の少女が自分のことを神様だとかよく分からないことを言い出した。何故僕が神様という存在を好きだということを知っているのかという疑問が頭に浮かぶが、そんなことが正直どうでも良くなるくらいのもっと大きい疑問がある。
「ここ…どこ?」
「どこって…異世界ですよ。ヴァルハラ。」
どこだよ。ヴァルハラ。僕がそう質問しかけたことを予め把握しているのかのように少女は畳み掛けるように言葉を発する。
「私が華麗に解説してあげるから、あなたは少し黙っていてください。」
「ここはヴァルハラと言って、あなたたちの世界ではありえないことでしょうが、当たり前のように神が存在しています。ここまでは理解できましたか?」
「はい。」
本当は理解できないことが殆ど、というか何も分かっていないのだが、少女の気迫に圧倒されてはそう言うしかない。
「続けます。今神が当たり前に存在していると言いましたが、神達の中にも上は一つの世界を滅ぼし得る能力を持ったものから、下は自身の存在の維持すら危ういものまで様々な神が存在します。」
「では、その神達の力はどのようにして決まっているのか…当然気になりますよね?」
「ええ…まあ、程々には…」
こちらが同意すると彼女は更に熱を込めて話し出す。
…どうやら話好きのようだ。
「神達の力を決める要因は自身に向けられている信仰の度合いです。信仰者が神を信仰すればするほど、神の力は増していきます。」
「そしてここからが、ここはあなたを呼んだ理由なのですが、神が自身の信仰を集めるために、基本的には別世界から信仰者になりうる人をこちらの世界に連れてきます。」