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過去話1(sideアル)

 昔から、やたらと困っている人に出会いがちだった。

 親の繰り返す転勤のせいで、友達の少なかった俺は一人でいることが多く、その分周りに目が行きやすかったからかもしれない。


 何度引っ越しても、旅行先でも、落とし物を探す人や、道がわからない人にやたら出くわすので、遠くからでも人の動きを見ると困っている内容がわかってしまうほどになった。

 一緒に旅行中でも出くわすのは俺ばかりで、両親は俺が動いてから気付くことが多かったし、俺の出くわす頻度に驚いていたので、多分普通はそんなに出会わないのだろう。


 そうして、自分で大学を選び一人暮らしをすることで、やっと落ち着いた生活が送れると安心し、友達ができるといいなぁ〜と考えていた。

 しかし、引っ越し初日に晩飯を作れるほど荷物が片付いておらず、買い出しに行った帰り道で、究極の困っている人に出会うことになる。


 財布を落としてお腹が空いている…さらに、家の帰り方がわからないというそのおじいさんに、ひとまず今買ったばかりのコンビニのおにぎりと、お湯を入れてきたインスタント味噌汁を渡し、公園のベンチで人心地ついたあとで交番へ送っていった。


 お巡りさんにおじいさんを引き渡し、必要なやり取りをしたあと「きっとすぐにお家に帰れますよ」と声をかけ、もしかしたら必要かもしれない、と手持ちのわずかなお金をこっそり渡して、交番を後にした。


 お腹が空いてきたし、手持ちのお金が無いのでコンビニにも寄れない。

 まあ、そんなことよりおじいさんお家に帰れるかな?家族はいるのかな?一人ぼっちは寂しいだろうな…などと、どうにもできない無力感を感じながらトボトボと帰宅していた。


 まだ、慣れない道をゆっくり確かめながら歩いていると、あと少しで新しい我が家に…という交差点で急にスピードを上げて横断歩道に突っ込んでいく車。

 その車の先には、酔っぱらいのおじさん。

 考えるより先に走っていた。

 おじさんを突き飛ばし、自分も車には当たらなかったはず。


 しかし、運悪く転がり込んだ先にゴツゴツした石があり、そこに頭をぶつけてしまったようだ。

 おじさん飛ばしちゃったけど、大丈夫だったかな…。かえって大事になってたらどうしよう…。と、思ったのが最後の記憶だった。




 気がつくと、真っ白い世界に俺はいた。

 そこには、優しく微笑みながらも目を真っ赤にした、キレイな顔の若い?人?と、その人を宥めるように背を撫でるいかつい顔のお年寄り?の人?がいた。


 やだ、これもしかしてテンプレ?と脳天気な俺は、不謹慎にもちょっとテンションが上がったのは内緒だ。

 顔を引き締めることに集中していた俺は、ハッとして目の前の人?神様?に声をかける。


「すみません!もしかして、お二人は神様ですか?」


 突然のストレートな質問に、真っ赤な目を優しく細めながら若い?神様?が答えてくれた。


「そうですね。人達からすると、神と呼ばれる存在で間違いないと思います。私達の名前は、人には発音が出来ない音なので、私のことはお兄さん、こちらの怖い顔の神はおじさんでいいですよ」


 と、自称お兄さんが微笑んでくれる。その横では、相変わらずお兄さん神様の背を撫でていたおじさん神様がこっちを向いた。

(怖っ)

 多分、口を大きく曲げたその顔は、笑ってみせてくれているのだろう。とても怖いけど。

 精いっぱい笑ってくれていると信じて、俺も恐る恐る笑い返す。


 おじさん神様の目が細く、更に口の端があがったので、多分更に笑みを深めてくれたんだろう。怖いけど。


 それはさておき、神様ならばわかるだろうと、聞いておかなくてはならないことをなるべく丁寧になるように、ゆっくり口にする。


「あの…多分俺…自分が死んでると思うのですが…。その、俺が最後に突き飛ばしてしまった男の人、大丈夫だったでしょうか?ケガをさせてしまっていたり…」


 もしかしたら、あの人に大きなケガや命を奪ってしまっていたら…。そのことで神様が悲しんでいるから、多分泣いていたであろう真っ赤な目をしているとしたら…。と嫌な考えがグルグルと回る。


 さらに、もしかしたらあの車の運転手も俺が飛び出したせいで、更に変な運転になり、どこかにぶつかってしまっているかもしれない…!と気付き、俺は更に慌ててしまう。


 もう既に自分が死んでしまっているので、俺の命を他の人に渡してもらうこともできない…!どうしよう…!


 と、そこまで考えていたら、お兄さん神様がまたポロポロと涙をこぼし始めていた。


 ああ、やっぱり俺がこの神様を困らせているのか…と絶望したところで、おじさん神様のものと思われる低く優しい声が聞こえてきた。


「ほら。泣くのを止めないか…。この子が困ってしまうだろう。泣かずに説明してやりなさい」


 顔に似合わず、とても優しく響くその声と口調に、絶望していた俺も思わず顔を上げる。

 お兄さん神様も涙を止めてこちらを見てくれた。

 その横には優しい声のおじさん。顔はやっぱり怖いけど。


「そうですね…。申し訳ありません。全て私が悪いのです」


 そう切り出したお兄さん神様の話はこうだ。

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