【子語り怪談】トンネル遊び
子にせがまれて、毎日語る怖い話の一つです。
最近、どこの公園へ行っても、砂場と言うものをとんと見かけません。もっぱら、不衛生との理由で撤去されているようですが、確かに私の子供時代でも、たまに野良猫の糞が砂の中に混じっていることもありましたから、何かと神経質な現代では、やはり排除の対象となってしまうのでしょう。
そんなわけで、これは大らかな時代の話です。
砂場での定番の遊びとして、山を作って横穴を掘り、トンネルを作ると言うものがあります。それは大抵、むかえ掘りの相方を必要とするから、子供界においてもリア充にのみ許された遊びでした。
私は生来のぼっちでしたので、自身は砂場の縁に大量の円錐形を作ることに専念し、トンネル遊びはコミュ力高めのカップルたちに任せておりました。
ところが、トンネルを掘っていた男女の様子が、何やらおかしいことに私は気付きます。二人は肩のあたりまで砂山に腕を突っ込んでいるのに、互いの手を見つけられずにいたのです。
私は、それぞれ全く違う方向を掘っているのではないかと指摘したのですが、トンネルを覗き込めば、確かに対面へ通じています。それなのに、どうして互いの手に触れ合えないのか。
騒いでいると、他の子供たちも何事かと集まって来ました。そうして、真っ先に指摘されたのは、トンネル遊びをしていた二人が、示し合わせて嘘をついているのではないか、と言う疑念でした。
嘘つき呼ばわりされ、女の子の方は半べそをかき、男の子の方は「だったら、お前らもやっみろ!」と応じます。
一人が、さっそくトンネルに手を突っ込みました。反対側から覗き込むと、ひらひら動く手の平が見えます。
嘘だと断言した子が、ニヤニヤしながら、同じように手を突っ込みます。ところが肘の辺りまで入ったところで、顔から笑みが消えました。
二人の子供は、トンネルの中に肩まで腕を突っ込みますが、それでも互いの手に触れることは出来ませんでした。
こうなると、なぜこのような現象が起こるのか。それに対する考察が始まりました。結果、なぜか私が作った、円錐の砂山が原因だと言うことになったのです。
砂場の縁に作られた円錐は次々と破壊され、再び検証が行われました。そして、トンネルの中で二人の手は繋がれ、全ての元凶は私と言うことになったのです。
もう、二度と円錐の砂山は作るなと言われ、私は了承せざるを得ませんでした。まったく、理不尽な話です。