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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター5 2年生編 / 二学期
86/105

M75 聖夜パーティー



 朝。


 リビングに入るとマリがコタツに入っていた。コタツには既に朝食が並んでいる。




「お、おはよう。」


「おはよう。」


 ちょっとビックリしながらあたしが挨拶するとマリはニッコリと微笑んで挨拶を返してきた。




 いや、まだ朝の7時なんだけど。


 朝食がもう並んでるって、マリってば一体何時に起きたのよ。




「ホントに早いね。」


 あたしが言うとマリが頭を掻いた。


「うん。何か5時くらいに眼が覚めちゃった。」


「早ッ!?」


 あたしは驚く。




 せっかく用意してくれた朝食を美味しく頂くとあたしとマリはゴロンと横になった。


「・・・今日はみんな武術試験か。」


「そうだね。」


「見に行ってみようか?」


 あたしがニヤリと笑って言うとマリが苦笑いして言う。


「もう。からかいに行くつもりでしょ。ダメだよ、そんな事しちゃ。」


「へへへ。」


 あたしが笑うとマリもクスリと笑う。




 マリの瞳が少し潤んだように見えた。


「今日を過ぎればヒナちゃんも大人予備軍だね。」


「そっか。あたしだけが未だ子供なのか・・・。」


「そう。ちびっ子。」




 むー・・・ちびっ子言うなし。




「可愛い、可愛い。」


 マリが笑顔であたしの頭を撫でてくる。




 おのれマリ助。


「マリちゃん。子供扱いはやめてくれる?」


 あたしが言うとマリは首を傾げる。


「でも、ヒナちゃんは未だ正真正銘の子供でしょ?」


「むー!」


 あたしが唸り声で抗議の意思を表明するとマリは楽しそうに笑った。


 クッソ。笑顔が可愛ええのぉ!




 あたしがちょっとドキドキしながらマリに見惚れていると、マリが思い出した様にあたしに訊いてくる。


「そうだ。聖夜パーティーには何を着ていく?」




 ああ・・・そうだった。


 今年は当たり前だけど何も衣装を用意していない。


 うーん・・・どうすっかなぁ・・・。




「・・・去年の奴、着てみる?」


「え!?」


 マリがギョッとした様にあたしを見た。


「ム・・・ムリだよ。もう着れないよ。」




 だろうなぁ・・・マリは絶対ムリだろうなぁ・・・。


 ・・・よし。




「着てみよう。」


「いや、ちょ・・・ヒナちゃん!」


「マリも早く着替えといで。」


「ヒナちゃん!・・・もう!」


 真っ赤な顔のマリにあたしは和やかに手を振ると自室に帰った。




 うーん・・・キッツいなぁ・・・。特に胸回りが。


 成長している証だから嬉しいんだけど・・・。




 あたしは姿見を見ながらパッツンパッツンのサンタコスに絶句する。


 コレただの痴女じゃん。


 スカートなんか膝丈どころか腿のかなり上の部分に裾が来ている。コレじゃちょっと動いただけでパンツが見えちゃうじゃん。




 ・・・よし、マリを悩殺しよう。




 あたしがその格好のままリビングに出ると、マリはまだ自室から出て来てなかった。


 マリはあたし以上に悪戦苦闘している筈。どう誤魔化して来るか楽しみだ。


 予想では『やっぱりムリ』と泣きを入れて元の姿のまま出て来ると見た。




 洗い逸れていた食器を処理していると漸くマリの自室の扉が『ガチャリ』と開く音がした。




 あたしは食器を放り出してバタバタとマリを見に行く。




「マリ、どうだった? 着れた?」


 ニヤけ笑いでマリに話し掛けたあたしはマリの姿に言葉を失う。


「・・・。」


 マリは去年の衣装を着ていた。パッツンパッツンなんてレベルとは程遠い姿で。




 もうなんて言うか・・・痴女がソコに居た。


 上は上半身を全くカバー出来ておらず、腕もおへそも胸元も丸出し状態。肌色が目立つ目立つ。そして胸が「これでもか」ってくらいに強調されていて今にも服が弾け飛びそう。


 下はスカートの裾があたし以上に高いところに来ておりマジでヤバい。




「ヒナちゃん・・・。」


 半ベソのマリの声であたしはハッと我に返った。


 あたしが悩殺されてどうする。




「やっぱ・・・制服で参加しようか。」


「うん・・・。」


 マリが頷いたので、あたし達は着替える事にした。




 まあ、脱ぐのにも一苦労するハメになったんだけど。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 夕刻。




 セーラ達が部屋にやって来てあたしの15歳の誕生日を祝ってくれた。


 なんか今年はその辺りを諦めていたところも在ったから結構嬉しい。




 そして聖夜パーティーが始まった。




 今年は5人とも制服での参加だ。


『まあ・・・仕方無いよね。』


 セーラ達が苦笑しながら頷いてくれた結果だ。




「では皆さん、良い聖夜を! そして来年も元気に再会を果たしましょう!」


 スクライド様の張りのある声が大講堂に響き、学園生徒の皆の歓声がソレに続く。




 いやあ、久々の賑やかな雰囲気にあたしとマリの眼がキラッキラと輝く。


「ヒナもマリさんも、こういうの久しぶりでしょう?」


 アイナが尋ねてくるのであたし達は


「うん!」


 と笑顔で答える。


「じゃあ楽しまないとね。」


 セーラも笑顔で言ってくれるので


「うん!」


 と元気よく頷く。


「プ・・・アハハ。ヒナちゃんとマリ様、子供みたい。」


 フレアに笑われてあたし達は赤面する。




 色とりどりの料理皿を眺めながら、あたし達いつもの8人は何を食べるか「あーでもねー」「こーでもねー」と言いながら卓を賑やかした。




 大講堂の中央には大きな聖夜ツリーが飾られていて、皆がソレを見上げながら談笑している。




 うんうん、なんかツリーもだいぶこの世界に馴染んできたじゃない。




 そう言えば以前にお父様はハロウィンイベントと聖夜イベントを国に広めたいとか言ってたけどどうなったのかな? やったのかな?




 まあ、そのうち訊いてみるか。




「やあ、ハナコさん!」


 存在感増し増しの声があたしに降りかかる。


「ス・・・スクライド様。お久しぶりです。」


「うん、久しぶり!」


 相変わらずの元気一杯加減に若干引きながらあたしは生徒会長に挨拶をする。


「大変だったね、2人とも大丈夫かい?」


 セシル様が相変わらずのビューティーフェイスで尋ねてくれる。


「お久しぶりです、セシル様。はい、この通り元気です。」


 あたしが答えるとセシル様はニッコリ微笑んだ。


「うん。君達の笑顔が見られて一安心だよ。」




 うん、やっぱ綺麗だわ。男性にこの言葉を使うのも何だけど美人だよね。是非女装した姿を見てみたいわ。




「マリーベル嬢? どうかしましたか?」


「!・・・い、いえ。」


 セシル様の言葉にマリを振り返るとマリは顔を赤らめて慌てて俯いたところだった。


「?」


 首を傾げるあたしにセシル様が話し掛ける。


「そう言えばマリーベル嬢、ハナコさん。君達、ゼスマイヤー公爵の夜会に招かれたって本当かい?」


「「え?」」


 あたし達は首を傾げた。




 そんな話は聞いていないけど。




「あれ? 違うの?」


「はぁ・・・。あたし達は聞いていないですけど。」


「そっか・・・まぁ、確かにゼスマイヤー公爵が貴族当主ではなく令嬢を夜会に招くとも思えないし、ただの間違った噂かな?」


「そうだと思いますけど。」




 あたしとマリは互いを見る。うーん・・・何か嫌な予感がするなぁ。




 そしてあたしは意外な組み合わせを眼にする。


 セーラとリューダ様が2人で同じ皿を手にしながら笑い合っていたんだ。




 アイナとエリオット様。フレアとエオリア様。


 ・・・まさか第3の組み合わせが誕生?




 あたしとマリがセシル様達に絡まれている間に6人は2人ずつに分かれてパーティーに溶け込んでいた。いや、別にバラバラに行動してる訳じゃ無いけど3つの2人組は少しだけ間隔を空けて楽しんでいる。




 セーラにリューダ様か・・・。どちらもあたしが誇る友人2人だ。くっつくなら当然応援するつもりだけど、何て言うかホントに意外だ。


 特にセーラは婚約関連の感情に少しナーバスな一面を抱えているから、リューダ様ならその辺もきっとカバーしてくれると思う。何せ温かい人だから。




 聖夜の夜に2組の恋人と1組の恋人候補(あたしの独断)。


 良いじゃない。サイレントナイトにホーリーナイトじゃない。




「どうしたの?ヒナちゃん。」


 尋ねてくるマリにあたしは微笑んだ。


「あの6人、良い感じじゃない?」


「・・・そうだね。」


 あたしの顔をマジマジと見つめたマリが微笑む。


「サンタさんのクリスマスプレゼントかな。」


 そう言うとマリが囁いた。


「その考え方、素敵。」




 いやぁ、照れるじゃん。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 夜。




 部屋に戻ってくるとあたし達はコタツに飛び込んだ。


「聖夜パーティーも終わっちゃったね。」


「だね。」


 あたしが頷くとマリがちょっと訊き辛そうに尋ねてくる。


「あのね。」


「うん?」


「セーラさんとリューダ様、楽しそうだったね。」


「だね。」


「ヒナちゃん、寂しくない?」


「?」




 マリの言ってる意味が解らなくてあたしは首を傾げる。




「なんで?」


「だって・・・。」


 マリは少しあたしから視線をずらして言った。


「ヒナちゃん、セーラさんとリューダ様と仲良かったでしょ?」


「・・・ああ。」


 マリの言ってる意味が解った。


「そう意味か。だったらマリの心配は必要ないよ。」


「ホントに?」


「うん。」


「そっか。」


 マリが少しホッとしたように笑った。




 確かにセーラからは時々ヤバい雰囲気を伴って迫られた事も在ったけど、ソレもセーラの恋に焦る感情から出てたモノだって今なら解る。




 そしてリューダ様はある意味で一番濃い関係を築いた仲ではあるけど、やっぱり弟を励まし励まされた様な仲だったと思う。


 恋に発展するような関係じゃ無かったなと。


 ソレは多分リューダ様も同じで、あたしを見る眼は信頼に満ち溢れたモノでは在ったけど決して恋心が混ざったモノでは無かったと思う。単なる乙女の直感なんだけどね。




 だから思ったほど胸に来る様なモノは無かった。






「ふふふ。」


 あたしは笑ってマリの頭を撫でた。


「心配してくれて有り難うね、マリ。」


「!」


 マリの顔が赤くなる。




 お、照れてるな。可愛い可愛い。


 と、マリがあたしの腕を掴んで自分の胸にあたしの手を当てた。




「ねえ、ヒナちゃん。」


「は、はい。」


 突然のマリの挙動にあたしはドギマギしながら返事する。




 マリは凄い情熱をエメラルドグリーンの双眸に秘めて言った。


「私もヒナちゃんにプレゼントしたい。」


「え・・?」


 あたしは戸惑った。


「でも今年は用意出来なかったでしょ?」


「うん。物は用意できなかった。」


 マリの情熱が眼に見えるようだ。


「だから・・・。」




 あたしはゴクリと喉を鳴らした。




「今年のプレゼントは形に残らないけど受け取って。」




 マリはそう言うと微笑んだ。





次回の投稿は25日の18:00を予定しています。

宜しくお願いします。

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