M66 説明会と打ち合わせ
久しぶりにマリとイチャついた日から4日後。
あたしは午後の大講堂にて、初等部の御令嬢方が集まった先の舞台に立っていた。
・・・何でこんな事に・・・。
と、思った処で意味は無い。チャッチャと終わらせてしまおう。
「じゃあヒナさん、宜しくね。」
マルグリット先生が笑顔であたしに囁くと、御令嬢方に手を翳して皆の注目を集めた。
「えと、皆様、お忙しい最中にお集まり頂きまして有り難う御座います。」
ガチガチに緊張しながらあたしは話し出す。
「今回、皆様には1つのご提案を致したく、お集まり頂きました。」
なんと言うか・・・みんなの眼がキラッキラしてる気がする。ひょっとしてもう話が漏れているのかしら?
「凡そ2週間ほど経てば、武術祭が始まりますね。」
「「「そうですね。」」」
「!?」
一斉に声を揃えて返答してくる御令嬢方にあたしはビクっとなった。
何だ!?
い、いや落ち着け。
「ただ、武術祭は女子が余り活躍出来なくてイマイチですよね。」
「「「そうですね。」」」
「!?」
おい、何事だ!?
前世で結構前に終わってしまった某国民的番組の入りの部分みたいじゃないか。
「そ・・・其処で生徒会から皆様へ1つの提案が出されました。」
「「「何ですか?」」」
クッ・・・。思わず笑いそうになるのを押し殺しながらあたしは話し続ける。
「武術祭が行われている時間で、御令嬢にも1つのイベントに参加して頂きたい、と。」
「・・・。」
ああ、其処は無反応なんだ。
「其のイベントとは『謎かけゲーム』です。」
「「「キャー!」」」
あたしが発表した途端に歓声が上がる。
あ、やっぱりこの子達、知ってるんだ。となれば誰が漏らしたのかは察しが付く。
あたしがセーラを見ると、マリ達は苦笑いをして居りセーラが視線を逸らす。
もう、言っちゃダメって言ったのに。・・・まあ、いっか。
あたしは盛り上がっている御令嬢方に四苦八苦しながらルールの説明をしていく。そして最後に
「勿論、武術祭の応援を為さりたい方は応援して頂いて結構です。あと武術祭に参加したい方も大いに結構だそうです。」
応援OKの言葉で安堵の溜息がそこかしこから聞こえ、参加OKの言葉で全体から「ええ・・・」と嫌そうな声が漏れてくる。
ははは・・・ホント御令嬢には人気無いよな、武術祭。斯く言うあたしもイマイチなんだけど。
「チーム分けはどうなるんですか?」
レイナー様が声を上げる。お、レイナーちゃん、出る気満々か?
「其れはまだ決まっておりません。後日、生徒会の方々からご連絡が有るかと思われます。ですので、皆様は応援に行くか謎かけに参加するかだけ決めて置いて頂ければ結構です。」
「「「はーい。」」」
良し。説明会終わり!
あたしの出番も終了だ!
「ヒナ、お疲れ様。」
「有り難う。」
セーラの出迎えにあたしは笑顔で返して言った。
「貴女、喋ったでしょう?」
「・・・。」
セーラがソッポを向く。
「もう、喋っちゃダメって言ったのに。」
両頬を両手で挟んでプニッとする。
「だ・・・だって・・・」
セーラが顔を真っ赤にして言い訳する。
「楽しみだったんだもん。」
おいおい、可愛いじゃねーか。
あたしは苦笑する。
「もう、しょうがないんだから。」
「と・・・ところで!」
マリが勢い良く間に入り込んでくる。
お・・・おおぅ。どうした、マリちゃん。
「チーム分けってどうするんだろ。一緒になれるかなぁ!?」
そ、そうだね。そんなにリキまんでも聞こえるって。
「まあ、其ればっかりは生徒会の方々がどうするかに依るからねぇ・・・。」
「そっか・・・。」
ん?
あたしはアイナとフレアの不満そうな顔に気が付いた。あ、やべ。
「・・・いいな。」
フレアさんがそう述べられ
「楽しそうだ事。」
アイナさんが仰られた。
「だから後日また企画するって。」
あたしが言うと2人は
「きっとよ?」
と縋るような視線を向けて来る。
・・・2人のこんな表情は中々見られないから眼福っちゃあ眼福よね。ちょっと意地悪してみたくなっちゃう気持ちが無きにしも非ず。いや、しないけどさ。
それから気になっていた事をあたしはマリに小声で尋ねた。
「ねえマリ。さっきのみんなの『そうですね』って反応。アレ、マリが先導したでしょ?」
マリがピクリと反応して恥ずかしそうに俯いた。
「うん。」
「やっぱり。」
「だってヒナちゃんが『緊張する~』って言ってたから場を和ませようと思って・・・。・・・何で解ったの?」
マリが不思議そうに首を傾げる。
あたしは呆れた。
「解るよ。あの反応、どう見ても前世の某番組の出だしと同じじゃない。アレが提案出来るのってあたしが知る中ではマリしか居ないもん。・・・にしてもマリってば良く知ってたね。マリからしたら結構小さい頃の番組でしょ?」
「学校休んでた時に良く見てたから。一体感があって好きだったの。」
マリが顔を赤くしながら頭を掻く。
ちょ・・・なにその反応。メッチャかわいいんですけど!?
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
『次の休みに1度顔を出して欲しい。』
との手紙が週初めにお父様から来ていたので土日を掛けて実家に帰る事になった。まあこの書き方だと遊びに帰って来いとかじゃ無くて、なんかお仕事絡みの話だと思う。
『え、ヒナちゃんの実家?行ってみたい!』
フレアの一言が引き金になってセーラとアイナも食い付いた。
『私も!』
『私も行きたい!』
遊びに帰るんじゃ無いんだよ・・・と言おうとして、確かにマリ以外の3人はウチに来た事が無かったなぁ、と思い直し3人も連れて行く事にした。
『何人でも連れて来ると良い。20人くらい迄なら、直ぐに部屋を用意出来るから。』
とのお返事。
いやいや、そんなに連れて行かないから。
「やあ、皆さん。いらっしゃい。」
「お待ちしておりましたわ。」
お父様とお母様があたし達を出迎えてくれた。
今日ばかりはライラさんも流石に飛び掛かっては来ない。素敵な笑顔で出迎えてくれた。
そんであたしの部屋にて。
「美男美女ねぇ・・・。」
セーラがホゥッと溜息を吐きながら呟く。
「セーラ、目上の方に失礼よ。」
窘めるアイナにセーラが反論する。
「あら、でもアイナもそう思ったでしょ?」
「ま、まあ・・・。」
ふっふっふ。両親を誉められるのは何か嬉しいぞ。
「さすがヒナちゃんの御両親だね。ヒナちゃんが美人なのも頷けるよ。」
・・・いやフレアさん、そう言われると流石に恥ずかしい。
そしてマリ、ニコニコし過ぎ。
暫く歓談しているとあたし達はお父様に呼ばれた。
「私達までお邪魔して良いのかしら?」
と戸惑うセーラ達にも、お父様は和やか笑顔で席を勧めてくれる。
お父様が呼んだ理由は秋のイベントについての事だった。
「以前から裁縫ギルドのセルマ嬢より提案を受けていてね。秋の豊穣を祝う服とイベントについてなんだが。」
ああ、ハロウィンの事ね。
そう言えばセルマさん、去年、そんな事を言ってた様な・・・言わなかった様な?
「去年、ヤマダが着たという豊穣の服は見せて貰ったよ。コンセプトも訊いた。イベントを作り出すモチベーションとしては充分だと思える。街中にも『豊穣祭』と銘打って宣伝は済ませてあるし、王都の民もお祭り事と聞いて乗り気になっている。秋の実りを主軸とした露店なども大量に並ぶし、旅の一座や芸人も張り切っていて経済効果は充分に期待出来そうだ。」
「まあ、それは宜しゅう御座いますね。」
あたしの口調にセーラとアイナが「誰だコイツは?」って顔をしやがった。
「うむ。其れでだ。此処はもう1つ何か目玉になる様なモノでも在れば良いと考えていてな。」
・・・なるほど、流石はお父様。今のままではインパクトがイマイチだとお考えなのですね。
よござんす。あたしが取っておきのアイデアを出してご覧に入れるザマス。
「そうですね。ではお父様、お披露目会の様なモノを企画されては如何ですか?」
「お披露目会?」
「はい。多分、お父様がご覧になった服はあたしが去年着た服のレプリカだと思うのですが、別にあの様なドレスでは無くても良いと思うのです。特徴は『黒』と『オレンジ』の色を使うだけなのですから別に男性のスーツをあの色合いにしても楽しいでしょうし、なんならもっと奇抜な・・・お化けの格好とかでも宜しいと思うのです。」
よし!去年あたしが物足り無いと感じていたお化け要素をごく自然(?)にぶち込んでやったぜ!
「其れを皆さんが会場などで披露し合うんです。」
あたしがそう言うと何か気配が盛り上がった。
そして。
「素敵!」
セーラが叫ぶ。
「ならもうお披露目会とは別に、参加する王都民の方々も其れに合わせて衣装を作ればいいんだわ!」
「楽しそう!お互いに見せ合いっことかするのね!」
アイナが眼を輝かせる。
「じゃあお披露目会は裁縫店の人達のプロ同士の競争で、其れとは別に一般の人も参加するって形の方が面白いかも!」
お、フレアの案は良いんじゃない?
「ふふふ。では仮装大会とでも銘打てば体裁も整いそうですね。」
マリが纏めてくれる。
娘5人、かしましくキャーキャーと喋る中、お父様はニコニコ顔で話しを聴いている。リジオンさんが傍で時々何かをメモってる。なるほど情報収集か。今時の娘が何を好ましく思うかの参考にしてるのね。
暫く喋ってるとお父様が次の話題を振ってきた。
「ヤマダが去年創った聖夜ツリー関連のイベントな。アレの準備に掛かっているんだが。」
ああ、クリスマスね。
そう言えばお父様、去年、そんな事を言ってた様な・・・言わなかった様な?
「ツリーを飾り付ける事で聖夜のモニュメントとしたのは驚くべき発想だったと思う。」
「へへへ。」
あたしは頭を掻いて照れる。
「計画としては農林ギルドと裁縫ギルドの協力を仰いで、街中にこの聖夜ツリーを飾ろうと思っているんだ。」
「!・・・素敵です!お父様!」
想像したら幻想的過ぎて思わず声を上げてしまう。
「うむ、有り難う。」
お父様は笑顔で賛辞を受け止める。イチイチかっこいいな。
「此方はまだ時間もあるし其れほど急ぐ必要も無いのだが、もし何か考えでも在れば訊いて置きたいと思ってね。」
「はぁ・・・。」
何か考えかぁ・・・。そうだなぁ・・・。
「・・・プレゼント交換なんて如何でしょう?」
「プレゼント? どういった意味で?」
「例えば、家族同士、友達同士、恋人同士。聖なる夜に大切な人の幸せを願って贈り物をすると言うのはとても優しい事かな・・・と思いまして。」
前世を思い返しながらあたしはそう言った。
「・・・。」
お父様は背もたれに身を預ける。
「大切な人の幸せを願ってか・・・うん、良い。」
呟いた後、お父様は優しい笑顔を向けてくれる。
「取り入れよう。」
「・・・。」
余りのイケメンスマイルにあたし達は見惚れる。
「いや、中々に有意義な時間だった。みんな有り難う。」
お父様はご機嫌であたし達に礼を述べてくれた。
「お役に立てて良かったです。」
あたしが代表して笑顔で応えた。
「ヒナって、お父様の前では良い子になるのね。」
あ!?その感想はあんまりにもあんまりじゃない!?
セーラとアイナの酷い感想にあたしが仰天する事になったのは帰りの馬車の中での事だった。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
「え、出られるの?」
翌週、あたしはアイナとフレアから『その事』を聴いて驚いた。
「うん。だから私達も謎かけに参加するわ。」
2人は笑顔であたしに宣言した。
エリオット様とエオリア様が2人に言ったらしいんだ。
『新しいイベントにヒナ嬢達と参加してくると良い。』
って。
2人が驚いて「何でそんな事を言うのか」と尋ねたら
『僕と君はこれからずっと一緒に居られる。だから今回は友人との思い出作りをして欲しい。』
と異口同音に言われたそうだ。
おい。イケメン過ぎるぞ。君らホントに只の14~5才の少年なのか?ホント格好いいな。
リューダ様もだけど、マジで君ら3人が間違い無く乙女ゲーのヒーローに相応しいよ。あ、あとアルフレッド様もアリだな。
「そっか。良かったね。」
「うん。」
3人でニッコリ微笑むとセーラが横から冗談っぽく言った。
「これでみんな違うチームになっちゃったら目も当てられないわね。」
「・・・。」
セーラ!!
あんたはまた余計なフラグを立てて!!




