M65 イベントを考えよう
さて。
学園祭が終われば直ぐにやってくるのは武術祭だ。昨年は色々在ってみんなには迷惑を掛けたけど、マリに惚れ直す良い機会でもあったな。
其れはさておき、武術祭は何だかんだ言ったって男の子の祭典。女の子は専ら応援に回って「ハイおしまい」って感じさ。
正直言ってやる事が無くて手持ち無沙汰になる。
だからと言って男子に混ざって参加なんか絶対にしたくないけどね。実は男子と剣を交えるのは未だ怖いんだ。去年受けた圧倒的な暴力の恐怖が心にこびり付いている。
絶対に怖い事をして来ないと解っているリューダ様達とやるなら平気なんだけどね。
だから今年も応援して終わりだ。
・・・なんて思っていた時期があたしにも在りました。
「ヒナさん、放課後に生徒会室に行って下さいね。」
マルグリット先生の言葉にあたしはこの世の終わりみたいな表情を向けた。
「・・・なんて顔をするの?」
あたしの顔を見て呆れるマルグリット先生に
「・・・行きたくないです・・・。」
あたしは答えた。
どうせ碌な事にならない。面倒事はノーサンキューだ。
「駄目よ。『是非に』って生徒会長からのお願いも在るんですから。」
だから行きたくないんだよ。
「・・・ふぁい・・・。」
あたしは渋々と返事をした。
「やあハナコさん。久しぶりだね。」
・・・3日前の後夜祭で会ったばかりだろうが。
相も変わらず元気一杯のスクライド様にあたしは心の中で悪態を吐く。
「いやですわ。3日前にお会いしたばかりじゃ無いですか。」
あたしは笑顔で答える。
「いやあ、そうだったね。」
会長の笑顔が煌びやか過ぎて目眩がしそうだ。チクショウ、本当に良い笑顔だな。
「度々呼び出してしまってゴメンね。」
セシル様が苦笑いであたしに謝って下さる。
ああ、クールビューティーにこんな態度を取られると顔が火照ってしまうわ。
「いえ、お気になさらないで下さい。」
此方には偽りない返事を返す。
「さて議題に移ろうと思う。」
さっきまでのニコニコ顔から一転、生徒会長の威厳に溢れた表情でスクライド様が会議を始める。
余りの落差にズッコケそうになるのを堪えながらあたしは用意されたお客様席にポツンと座る。また初等部から呼ばれたのはあたし1人だけかよ。
「みんなも知っての通り3週間後には武術祭が在る。我が学園では、開園当初から開催されている最も歴史の古いイベントで学園の力の入れようもかなりのモノだ。是れの成績如何で騎士への勧誘も行われたりする。このルートから騎士になった者は、騎士長、騎士団長、果ては将軍の地位も夢では無くなると言う程の、栄誉在るイベントなんだが・・・。」
スクライド様は一旦言葉を切って皆を見回した後、再び口を開く。
「女子生徒には余り縁の無いイベントと化してしまっている。無論、女子生徒の参加も学園側からは促されているが、是れは敢くまでも武術祭を盛り上げる為の華としてしか期待されていない。その割には女子生徒にとっては痛い思いをしたり、下手をしたら怪我をする恐れが在ったりと参加するメリットは皆無に等しい。」
まあ其れはその通りだ。だから誰も参加したがらない。
「ただ女性騎士を目指す令嬢が居る場合は参加してくれるし、そういった令嬢は男子顔負けの強さを誇ったりするので盛り上がるんだけどね。」
へー・・・そんな人も居るんだねぇ。フレアくらい強いのかな?或るいはもっと強かったり?
「女子が男子を打ち倒したりするのは盛り上がるから主催側としては大いに結構な事では在るんだ。実際、武術祭では無いけれど去年の初等部1年生の定期考査では女子が男子を剣術試験で打ち倒した、なんて事が在って大いに盛り上がったみたいだし。」
そう言ってスクライド様があたしを見る。
ん?・・・まさかあたしの事を言ってんのかよ!?いや、そもそも何で知ってんだ!?
「あ・・・あの、スクライド様・・・。」
あたしが慌てて言い訳しようとすると、スクライド様は笑顔であたしに手を向けて言葉を遮り話を進めた。
「でも、そういった度胸と技術を併せ持った令嬢は希で数年に1人居るか居ないかが現状だ。」
そしてスクライド様は目の前に置かれた紅茶を1口含んで口を湿らせる。
「そして僕はこの武術祭の現状に大いに不満を感じている。」
何というか声の迫力にゾクリとした。決して怒ってるわけじゃなくて、言いたい事を伝える為に発揮される声の威力とでも言えば良いのか。多分、カリスマって奴なのかも知れない。
「武術祭は学園の行事で在って男子の為だけの大会では無い。僕はこの学園行事に女子も大いに参加して貰って楽しんで欲しいと考えている。」
おお・・・。普段が普段だけにこう言うのを見せられるとポゥッと見惚れてしまう。
でも・・・言いたい事は解るけど・・・でも・・・。
そんな風に思っているとスクライド様はまるでみんなの考えている事を見透かしているかの様に頷いた。
「ただそうは言っても女子が武術祭に参加と言うのはハードルが高い。是れを前面に押し出しても去年までと同じ事になるだろう。」
だよね。
「だから、武術祭と同時に女子も参加しやすい別のイベントを開きたいんだ。」
・・・なるほど。
「と、言う訳でハナコさんは何かしてみたい事は無い?」
は!?いきなりあたしに訊く!?
普通は正規の役員さんから訊くモノでしょう!?
「結構前からみんなで話してたんだけど、中々『これだ!』って意見が出て来なくてね。」
ああ・・・もう既に話し合ってたのか。なるほど。って言われてもなぁ・・・うーん・・・。
「武術祭女子の部・・・みたいな事ですか?」
「無論、それでも良い。其れなら武舞台の数を増やすだけだし準備も楽だからね。」
あたしは天井を見上げる。
「うーん・・・でもなぁ・・・。多分、みんな出ないですよね。」
「何故だい?」
「だってみんな乙女ですよ?男子の観てる前で剣を振り回す・・・なんて、そんなやんちゃ小僧みたいな姿は見せたくないのではないしょうか?」
「・・・なるほど。」
男子役員の皆さんが感心したように頷いている。
お姉様方は肩を震わせて笑っていらっしゃる。なんかあたしの言い回しがツボに入ったみたいだ。
「すると他には・・・。」
「うーん・・・。」
みんなが参加し易くないと意味が無いし・・・そうすると御令嬢方が一般的に持っているスキルから考えるべき・・・?
料理・・・はしないよねぇ。刺繍はするけど、武術祭の対に持ってくるイベントとしては何か違うかなぁ・・・。身体を動かすイベントが良いよなぁ。うーん・・・。
・・・あ。
突如あたしの頭にある案が閃いた。スキルとか全然関係無いけどコレ面白いんじゃないかな?
「あの、競争とかでは無くなると思うんですけど・・・。」
毎度の如く生徒会の皆さんの主旨とはズレるかも知れないけど、まあ提案するだけならタダだしね。
「ああ構わないよ。何か思いついたなら言ってみて?」
スクライド様の眼がキラッキラに輝き出す。
いや・・・そんな期待の視線を向けられると元日本人としては気後れしちゃうなぁ。まあいいか。
「謎かけ・・・とか如何でしょう?」
「謎かけ?」
全員が首を傾げる。まあ可愛い。特にお姉様方とセシル様が。
「はい。武術祭に参加する殿方の応援をしたいと言う御令嬢方もいらっしゃるでしょうから・・・。」
アイナとかフレアとか。
「参加は有志で良いと思うんですけど、とにかく何かやりたいと言う御令嬢を募ってチーム分けをするんです。」
「うん。」
「それで最初は学園からスタートするんです。そして各チームに違ったお題を入れた箱から1つ引かせるんです。チームはそのお題に書かれた謎を解いてその場所に行き次のお題を手に入れる。」
「うんうん。」
「・・・お題も2問目からは王都の色んな場所に仕掛けられていて、3問目、4問目と解いていって最後に正しい物品を学園に持ち帰ったら目的達成みたいな。」
「・・・。」
おい、黙るなよ。何か反応をくれ。プリーズ。無反応が1番不安になるから。
「面白そう・・・。」
お姉様がポツリと呟いて慌てて口を閉じる。いやん可愛い。
「ふふ。まったく何処からそんな発想が出てくるのか大したモノだよ。」
・・・前世で観た動画だったかテレビだったか・・・です。
なんて言える訳無いのでお澄まし笑顔でやり過ごす。
まあ、取り敢えずお気に召した様だ。なら良し。
「1つ良いかな?」
お、早速セシル様。
「はい。」
「お題・・・とはどんな感じのお題なのかな?」
「そうですねぇ・・・。」
あたしは腕を組む。
「例えば・・・『白銀の雪被りし古き山。その中腹には肥えた狸が住まう。狸を讃えし像の右手に次の標在り。』・・・みたいな。」
「?」
またもや全員が首を傾げる。あら可愛い。特にお姉様方とセシル様が。
「難しいな。古い山?この辺りで雪を被る山と言えばクザス連峰だが・・・狸の生息地と言う話は聞いたことが無いな・・・。」
スクライド様が眉間に皺を寄せて考え込む。
「何かの例えでしょうか・・・?」
お、お姉様、鋭い。
「雪山・・・狸・・・讃える像・・・。」
ふふふ。考えてる。まあ、今はクイズの時間じゃ無いから答えを言ってしまおう。
「正解を言っても良いですか?」
「ああ、頼むよ。」
「お姉様方の仰る通りで、今のは『とある方』を表す比喩になってます。『白銀を被る』は天辺が白いって意味です。『古い山』は初老、『中腹の肥えた狸』はお腹が出ているって意味です。しかも讃えられています。学園内でこの条件に当て嵌まるのは1人だけ。学園長です。頭が白髪で、お腹が出ているし顔も体型も狸っぽいでしょ?」
「・・・ブハッ!」
お姉様方が吹き出して後ろを向いた。肩が壮絶な勢いで震えている。
「・・・!・・・!」
うん、お兄様方も笑いを堪えていらっしゃるわ。
ああ・・・笑いがとれて満足だぁ。
「つまり答えは『学園長の像の右手の中』になります。其処に次の行先が書かれた紙を仕込むという感じです。」
「面白い!」
スクライド様が満面の笑顔で叫んだ。
セシル様が近寄って来てあたしの両手をにぎりしめた。
「君は本当に凄いな。自由な発想をする人は尊敬するよ。」
フォーーー!?
美形のどアップーーー!!
あと手! 手!! 美形からのスキンシップに慣れてないんだ!あたしは!
クールビューティーのどアップに堪えられず、ユデダコで握り締められた両手をガン見してると
「あ、失礼。」
とセシル様は手をパッと離してくれた。
・・・ええと・・・何だっけ・・・?
衝撃がデカ過ぎて何を話してたか忘れてしまった。
「つまり簡単に言えばこの3週間で、今みたいな問題を作れるだけ作って学園と王都内に散蒔けば良いって事だね。」
ああ、そうそう。その話だった。
「簡単に言えば。」
「良く解ったよ。」
スクライド様が頷いた。
「会長、御令嬢達だけで王都内に出るのは少し危険なのでは?」
「そうだね、護衛を用意する必要が在るね。」
「其れとチーム編成の方法や追加予算なども早めに決めませんと。」
「うん。詳細を詰めよう。」
おお・・・やる気だ。マジかよ。ホントに良いのか?こんな簡単に決めて。
「じゃあハナコさん、もしこの案で進めるとなったら初等部の御令嬢方への説明は宜しくね。説明の場はマルグリット先生達と相談してちゃんと手配するから。」
スクライド様の一言があたしを驚天動地の心境に叩き込んでくれた。
ハァァァァァーーーーーッ!!??
何であたしが!?
「君しか上手に説明出来る人、居ないでしょ?」
「・・・」
おのれ!図ったな、スクライド卿!
「その・・・ゴメンね。スクライドがまた無茶を言って・・・。」
もはや恒例になってる様な気がする女子寮までの付き添いの途中、セシル様はそう言った。
「はぁ・・・もう良いです。セシル様に謝って頂くのは申し訳無いですし、確かに言い出しっぺのあたしが説明するのが一番良いと思うし。」
あたしが溜息を吐いて答えるとセシル様は苦笑した。
「有り難う。そう言って貰えると助かるよ。」
あたしも苦笑を返す。
「しかし君には毎度驚かされるよ。」
「いやぁ・・・そんな事は・・・。」
あたしは頭を掻く。
でも、気になってしまう。
「ホントに良いんでしょうか?あんな簡単に決めてしまって。」
あたしが訊くと
「ふふふ。」
セシル様が笑った。
「まあ、まだ『やる』と決まった訳では無いけどね。面白いと感じた事は真剣に検討するって言うのが今年の生徒会の方針なんだ。」
「はあ・・・。」
「やらない理由を探すのは僕もスクライドも嫌いだからね。出来る根拠を先ず探す。それで真剣に前向きに検討して『実行不可能』と結論が出たら、其処で初めて『やらない、出来ない』と結論付ける様にしてるんだ。」
え・・・かっこいい・・・。大人だ。大人が居るよ。此処に。
思わずポーッとなる。
「素敵ですね・・・。」
あたしが思わず零すとセシル様は微笑んだ。
「有り難う。だから、面白い提案が出来る君には出来れば来年の生徒会に入って貰いたい、とスクライドは思っているみたいなんだけどね。」
「え!?・・・いや、あたしは遠慮したいです。」
いきなり爆弾を放り投げられたのであたしは反射的に其れを右から左にスィっと躱した。
セシル様は苦笑する。
「まあ、生徒会と言う枠組みは、確かに君には窮屈かも知れないね。」
そう、ソレ。
お堅い組織と言うのは昔っからあたしと相性が悪い。流石はセシル様。良く解っていらっしゃる。
「だから・・・。」
「!」
セシル様があたしを覗き込む。だから顔が近いって!
「コレからも第三者の視点からアドバイザー的な提案を貰えたら嬉しいなと思うよ。」
はぅ・・・あの・・・はぅ・・・。
「は・・・はぅ。あ、いえ・・・はい。」
あたしは真っ赤になって頷いた。
くっ・・・このクールビューティーめ・・・マジで心臓に悪い。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
「おかえり、ヒナちゃん。」
煌めくようなマリの笑顔が出迎えてくれる。うーん、コッチもドキドキするなぁ。
「ただいま。」
あたしも笑顔で返して部屋に入るとセーラ達が来ていた。
「あら、いらっしゃい。」
「お邪魔してます。」
3人が返してくるけど・・・ん?・・・なんだ、その顔?
何か期待というか、プレッシャーみたいなモノを感じるんだけど。
「・・・何?」
「生徒会に呼ばれていたでしょ?」
「うん。」
「また何か面白そうな事を話してたんじゃ無いかと思って。」
ああ・・・それで待ってたのね。
「まあ1つ提案はして来たけど・・・決定じゃ無いから他の人には未だ話しちゃ駄目よ。」
「解ったわ。」
キャーッと3人が小さい歓声を上げる。
あたしは苦笑いしながら生徒会で話した事を4人に伝えた。
「・・・って感じよ。」
「凄いわヒナ!貴女、遊びの天才よ!」
星でも瞬いてんのかってくらいに瞳をキラッキラに輝かせたセーラが褒め称えてくれた。
『遊びの』って限定されたのが少し引っ掛かるけど、まあ誉めてくれたのよね?
「・・・。」
あれ? アイナさん? フレアさん?
何でそんな不満そうな顔をしてるの? プクッと膨れた顔がちょっと可愛いじゃないの。
「あの・・・アイナ? フレア?」
「なんで・・・」
え?
「なんでこのタイミングでそんな面白そうな提案をしてしまうの!?」
おおう・・・そんな理不尽な・・・。
「じゃ・・・じゃあ、アイナとフレアも参加する・・・?」
あたしは2人に怖っかな吃驚で訊いてみる。あたしとしてはソッチの方が楽しくなるし、嬉しいんだけど。
2人は瞳を揺らめかせてあたしを見つめている。すっごい考えてるな。そしてやがて・・・。
「エリオット様を・・・」
「エオリア様を・・・」
「・・・応援する。」
うん、だよね。この2人はソッチを選ぶと思ったよ。しかし、ガチ惚れしてるよなぁ。
「でも、ソッチも楽しそう・・・。」
そんな泣きそうな顔で言わないでよ。
「わかったわかった。じゃあ、別の機会に企画してみるから。」
「本当!?」
期待の籠もったキラキラの瞳で見つめられる。
「うん、本当。」
「やったあ!」
うーん・・・クソ可愛いな。お姉さんも嬉しいぜ。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
『今日は一緒に寝よう?』
マリーベル様の尊い美顔で首をあざとく傾げられてお願いされたら断れる筈も無く・・・。
「お邪魔します。」
あたしはそう言ってマリのベッドに侵入した。
前々日に一緒に寝たばかりだと言うのにマリがお願いしてくるなんて何か在ったかな?
って心配も実は在ったりする。
「マリ・・・何か在ったの?」
「なんで?」
マリが首を傾げる。
「いや、一昨日の夜に一緒に寝たばかりなのにまた言ってきたから・・・。」
「・・・。」
マリはジッとあたしを見つめる。
「わからない?」
「え・・・うん。」
アレ?・・・何か察しなきゃいけない処だった?
マリは少しだけ視線を逸らして言った。
「・・・足りないの。」
「?」
「ヒナちゃんが足りない。」
・・・ん? どう言う事?
今度はあたしが首を傾げるとマリがギュッと抱きついてきた。
「マ・・・マリ?」
あたしは驚きながらも為れるがままにする。
マリがあたしの胸に顔を埋めながらポソポソと口を開く。ふふ。マリの吐息がパジャマ越しに胸に掛かってちょっとくすぐったい。
「確かに・・・一昨日、一緒に寝たけど・・・直ぐに寝ちゃったし・・・次の日の朝も、ずっとベッドに居たのに何も無かったし・・・。」
あ、そう言う事・・・。
あっと言う間に鼓動がドキドキと早くなり始める。あたしも単純だ。求められてる、と判ってしまえばこの有り様さ。
「じゃあ・・・ちょっとだけ・・・。」
あたしはマリの腰を引き寄せる。
「うん。」
マリの声が嬉しそうに跳ねる。
「ふふ。」
その声が愛らしくて思わず笑ってしまうと、マリが恥ずかしそうに上目遣いであたしを睨んで見せてくる。
「なあに?」
「ううん。」
あたしが笑みを絶やさずに首を振ると茶化されたと思ったのかマリが
「もう!」
と怒って見せながらあたしに組み付いた。
そのまま彼女の可愛い八重歯があたしの首筋にチクりと立つ。
「あは。くすぐったいよ、マリ。」
あたしは思わず声を上げてしまう。
「・・・。」
マリはそのまま返事を返さずにペロペロと舐め始める。
「あはは。マリ、やめ・・・くすぐった・・・あん・・・。」
くすぐったい筈だったのに、どんどん気持ち良くなってきて思わず悩ましい声を上げてしまう。
マリが顔を上げて妖しく微笑んだ。
「あん、だって・・・。可愛い。」
「・・・!」
急に恥ずかしくなって思わずマリから目を逸らすと、マリは再びあたしの首筋に口を寄せて甘噛みをし始める。
「は・・・あ・・・。」
声が抑えられなくなる。
あたしもマリに触れたい。
「マリ・・・キスしよ。」
そう吐息と共に言葉を吐き出すと、マリの動きが止まって顔が上がった。
「うん。」
マリは真っ赤な顔で頷くと顔を寄せてくる。
『クチュ』
と水音が聞こえてマリの柔らかい唇があたしに落とされる。マリが動く度に白銀の髪が揺れて、あたしを幻想の世界に誘ってくれる。
「マリ・・・。」
囁いて唇で彼女の小さな唇を挟むと
「ふ・・・。」
と彼女から小さく吐息が漏れて肩がピクリと震えた。
そのまま、マリの唇に沿って舌を這わせると
「ふ・・・う・・・。」
マリの声が零れ始める。
「ヒ・・・ナ・・・噛んで・・・。」
マリが言った。
あたしはマリと上下を入れ替えると、彼女の真っ白な首筋に歯を軽く当てて甘噛みをする。そして時折、舌を這わせ口づける。
「あ・・・あ・・・。」
マリの小さく漏れる声が愛しくて、もっと聞きたいと思う。
あたしはマリの膨らみに手を置くと、そのままゆっくりと動かし始めた。
「!・・・ヒ・・・ナ・・・声出ちゃうよ・・・。」
「我慢して・・・。」
あたしは囁く。
そして彼女の桃色に染まった顔を見て微笑んだ。
「マリ・・・凄く可愛い。」
「ヒナ・・・。」
「貴女から言ってきたんだからね?まだまだ寝かせて上げないよ?」
そう言って笑いかけるとマリが期待を込めた視線でコクリと頷いた。
明日も授業あるけど・・・まあ、いっか。




